1秒先の彼
鑑賞:2023年7月@TOHOシネマズ二条
好きな嘘です。
山下敦弘監督と宮藤官九郎脚本という組み合わせ。
いやでも期待が高まります。そこに時間いじりSFです。ユルいSFの作りに可愛らしさを感じます。この嘘を嘘だと見せるのは視聴者を共犯者に仕立ててくれていて、乗っかれれば至福の時間に浸れます。
ニクイのが、京都いじり。
市内の中心部だけが京都(洛中)なんだと。亀岡、宇治、天橋立、伊根。配達バイクで行く距離じゃないとか、花火のために宇治にするとか、京都近郊の人しか判らなくても良いんだという、京都人向けの味付けです。
そんな味付けになったストーリーの本線。
岡田将生さん演じる郵便局員と、清原果耶さん演じる大学生の運命的な関わり、そして不思議な時間SFです。因果の張り巡らせ方が、出来すぎなんですが、ここが好きだとのめり込めます。カメラの使い方や、まとまったお金の見せ方、ラジオ番組とスマホの絡め方など、小気味いいです。真骨頂は「郵便局員と私書箱」「カメラ部員と写真」。ここを軸にしながら、肉付けの仕掛けが良いトーンです。小銭とか、パピコとか、花火とか、気持ちよく挟んでくれます。
役者さんも見ていて心地いいです。
岡田将生さんは独り言ブツブツ言ってても成立するのがスゴい。変わり者もハマります。清原果耶さんは、ちょっと奥手なキャラで似合うんですけど、表情をずっと見ていたくなるのが素敵です。荒川良々さんが卑怯ですね。おいしい。ちょっと言葉に詰まるのが笑福亭笑瓶さん。ラジオトークや写真店のオヤジと、結構良い役柄で出演されています。これは言葉にならないです。やたらヨーロッパ企画が出てくるのは京都ぽくてニコニコさせてくれました。
どんなカメラで撮影されているのでしょうか。
フォーカス具合が好きでした。
キャラクターと配役、嘘のつき方が爽やかで、すこしシットリなところもあります。時間止まってるシーンをユルい人力ストップモーションにしているのが、作風を左右しています。おおらかな気持ちで見ると、優しさを感じられる、温かさのある作品でした。
都合のいい展開が受け入れられるならオススメの1作です。
▲この作品の原作にあたる台湾の映画です。(すいません、まだ見ていません)