逃げきれた夢
鑑賞:2023年6月@新宿武蔵野館
光石研作品。
おおよそ「光石研ひとり芝居」です。少ないキャストが、その味をさらに照らし返します。
ストーリーは、長年教師として勤めた教頭先生が、定年間際で記憶力に自信がなくなることをきっかけに、日頃のキャラと違う行動に出るというもの。哀愁。
二ノ宮監督の作品は少ししか拝見していないのですが、時間的「間」がとても多い。今回も、そうでした。そういった作風の中では信頼おける好きな作り手です。意図的に見せたくて作っているのがよく伝わってきます。前半では、テンポ良くシーン運びが進みます。持ち味をなるべく温存して、観客を導入していきます。ここがなかったら、ちとツラいかもでした。半ばぐらいから、持ち味が出てきます。
訴えたいことは伝わってきますし、光石研さんの怒涛のひとり芝居が余計に哀愁を加速させます。面白いとは何か、では無い作品と感じました。雰囲気作品ということでも無いです。訴えるものは明確にあるのです。これが芸術ということなのでしょうか。観てよかったものの、面白さも楽しさも膨らますタイプではなく、見る人の境遇で変わる作品のようです。
キャストの中でも味がありまくる松重豊さん。全編をとりまく訛りセリフ。えも言えぬ良さがそこにありました。
▲二ノ宮隆太郎監督作。