ほかげ
鑑賞:2024年1月@ユーロスペース
迫真。
訴えかける人の様にえぐられます。数少ない場所や人で、この時間を見せつけられます。見逃してはならない圧が素晴らしい。
戦争で貧しく、哀しく、寂しく、力無く。身も心もボロボロになった人々の生き様です。見ていてシンドイところも多いです。でも、見なければと思わされるお話と芝居に引き込まれます。
朽ちかけた建物や服が鮮明で、そこに映える青空や人の肌が生々しい。目を離したくなるほどの鮮烈。これが塚本晋也監督の見せ方。
決してわかりやすい表現をしない登場人物たち。だからこそカメラの切り返しが刺さります。所作のひとつひとつが、確実に訴えてきます。
教科書や一升瓶、銃。小道具も効いてきます。音も、例えば生唾を飲む音の驚きといったら。目を見張る、耳を見張る。圧巻です。
どの役者さんも素晴らしい。この世界の中の人にしか見えない。趣里さんの佇まい、喋り方。うなってしまいます。
遠足に行く余興、泣きそうになりました。必見の1作。
▲塚本晋也監督「野火」。こちらも。