「みんなでよってたかって、今の日本にしちゃった」。(とっておきの一書・一節⑤)
いやいや、誇張でなく。
ほんとにこんな調子で語ってるんです、文中で。
いな、実際は、もっと過激です。笑
それが、今回紹介する本書。
「虫眼とアニ眼」(宮崎駿・養老孟司 共著)徳間書店
以前も私の投稿では、2度ほど紹介しましたけど。
今回は、本書そのものにスポットを当てて、しっかり紹介。
正直、これはいまだに、愛読書ですね。
飽きない、飽きない。
折あるごとに読んでます。
前に新書版も文庫版も持ってたんだけど、捨て活で一度処分して。
未練が湧き、もう一度、買い直した。
もう一度久々に開いて、「やっぱこれだよね!」って気分。
まあ、前に持ってたのは、メモやラインでボロボロだったから。
買い直しても、ムダって気分にはならない。
私は、自分のメモ帳がわりにメモやラインを書き込むのがクセなのだが。
本書については、以前どこにラインを引っ張ってたか、覚えてるくらいだ。
だからこそ。今回はあえてラインは引かない。
今まで読み落としていたところまで、先入観抜きで、読みこみたいんだ。
見どころは、まず、巻頭のカラー口絵。
宮崎さんのスケッチに、ワクワクします。
荒川修作氏と協力しながら、保育施設や住宅、街づくり構想を、スケッチに表してあるんですよ。
なので、絵をより大きく見たいのなら、新書版の方が、おすすめですかね。
文庫版と新書版、両方出版されてますけどね。
もちろん文庫版にも、口絵はありますよ。
ちなみにこの口絵にある、保育園構想。
実は保育園そのものは、ずいぶん前に、実現してるんですよね。
それが、「三匹の熊の家」って保育園。
ジブリの社員さん向けの保育施設らしいです。
スケッチの構想どおり、どこまで実現できたかまでは知らないのですが。
さて、本文の対談について。
アニメの話題は出てくるものの、それは、とば口程度。
だから宮崎作品そのものについて掘り下げたい人にとっては、期待はずれかも。
むしろ、「トトロは1年に1回以上、みるな!」と言ってるくらい。
てな感じで、
話題はどうしてもこどもとか未来のことになってくるから。
必然的に、やはり教育問題については、かなり鋭く、切り込んでますね。
だから、今の日本の教育に、袋小路感というかモヤモヤを覚える方。
また、保育や自然教育などに、関心をお持ちの方。
そういった方々はきっと、共感するものが、多々あるかと。
内容は、とにかく、養老氏と宮崎氏の舌鋒さえわたるというか。
まあ要するに、言いたい放題。笑。
このお二方、いつもそうなんですけど、顔を合わせたら会話が止まらない。
話題が尽きない。
頭のいい人同士、コトバを受け合い、投げ合い、インテグレートし合っていく。
だから、聞く側もけっこうアタマを使う。
だけど痛快。
聞いてるうちに「もっと聞きたい、もっと」ってなっちゃう。
それだけに、言ってる内容は、相当、手厳しいです。
そこまで言っちゃうか、ってくらい。
でも言ってることは、的確。それでいて、愛がある。
しかも、さりげなくだが、ちゃんと代案を示してる。
ここ、大事なところなんだ。
ただの批判や非難、ないものねだりや揚げ足取りに、とどまってない。
いつもつくづく感じるのは。
頭のいい人って、モノの本質や核心をスパーンと的確に射抜ける。
簡潔な言葉で。
そういう洞察力と、言葉のセンスがある。
それが、この本だと、ありありとわかるんですよね。
ただねえ。
「こりゃあ、敵を作るわ」と。笑。
ある界隈の人たちにとっちゃ、面白くないでしょうね。
こんだけズバズバと、理に適った言葉で、図星を突かれれば。
逆恨みを買うというか、嫌われるよね、ある人たちに。
誰とは言わないけど。
まあこんな調子なので、どこを抜粋しても、面白いんですけど。
あんまり過激なのも、ナンなので、一節だけ紹介。
「要するに、(学校社会というのが、即、)先生方の社会なんだ。
子どもは完全に置いてけぼりなんだけど、それにすら、一切気づいていない。
いかにこの社会に子どもを適応させるかって、
せいぜい善意で考えているわけです。」
・・・あえて私から、余計なことはつけたしません。
ただ一言、「なるほど!」と。
それにしてもですよ。もう30年近く前の対談なのに。
いま読んでも「なるほど」ってうなずけるのは、いったい、今ま・・・おっと。
まあそれ以上は言わないけど。
そう思わざるを得ないですね、ホント。
いや、実はですね。
これでも、まだまだマイルドなほうです。
本文では、もっと過激な言い方で切り込んでます。
ホントはそっちを紹介したかったんですけどね。
うーん、ちょっと考えて、そっちは引っ込めました。
断片的な言葉だけで、誤解ばかりミスリードしても無意味なので。
ちなみに。
建築家・荒川修作さんも、ところどころで、関わってきます。
荒川さんという方をちょっと知るのにも、本書は有効かもしれません。
いわば「第3の対談者」とも言えるかも。
宮崎駿さんとは、どうやらいろいろと親交があるようで。
ちなみに、本書でも触れられている「養老天命反転地」。
数年前ですが、私も一度、行ってみました。
(詳しくは、下記のリンクで。)
本書についての、主な紹介は、以上です。
もしご興味があれば、ぜひご一読を。
以下、余談になります。
2024.11.18
では、今回の余談。
宮崎駿さんという人について、ちょっと踏み込んで触れておきましょう。
前回が富野監督だったので、アニメ繋がりで、今回は宮崎監督と。
タイプはまるで異なりますが、お二方とも面白い。
お二方に共通しているのは、こどもや若者への愛情がそのベースにあること。
さすが、アニメという若年層向けのカテゴリーで活躍されてきた方ですね。
常に、こどもの未来について、深く考えている。
ところで宮崎さんといえば、アニメ監督の印象が強いですが。
実は、エッセイとか、対談が、けっこう面白い。
私個人は、ナウシカとかアニメの作品より、そっちの方が好きなくらいです。
興味深い本を、数点紹介。詳しくはリンク先で。
「本へのとびら」は、阿川佐和子さんの対談エピソードも入ってたかなぁ?
実はこの本、今現在、私の手元にないんですよね。ごめんなさい。
お二方の対話の様子については、下記タイトルを。
(絶版です。ブルーレイとDVD版、両方あったと思います。マケプレの出品者扱いになりますので、ご注意ください。)
他にも、おすすめの著作はありますけどね。
きりがなくなっちゃうので、まずはこの辺で。
宮崎さんは、結構手厳しい言動が、メディアの動画などで見受けられますが。
基本、心の優しい方だと思います。
嘘がつけないというのでしょうかね。
そこもある意味、富野由悠季さんに似てますね。
もちろん、タイプはまるで全然異なりますが。
ご参考になれば幸いです。
2024.11.18