【アジャイル】DevLOVEイベント:右手に「正しいものを正しくつくる」、左手に「組織を芯からアジャイルにする」(左手編)
DevLOVEの市谷さんのイベントに参加しました。
右手編からの続き
市谷さんの代表的な書籍「正しいものを正しくつくる」と「組織を芯からアジャイルにする」を扱ったイベントで、2月に行われたのが「正しいものを正しくつくる」の右手編でした。
前回はプロダクト開発や仮説検証、価値創造の観点が強かったですが、今回は左手にあたる「組織を芯からアジャイルにする」の名の通り、組織やチームの観点になります。
全体の印象としては、右手編と繋がる内容やキーワード(芯をつくる、整合を取る、など)があるため、右手編を聴講していると入りやすかったように感じます。
芯(共通の意図)をつくる
イベントで市谷さんが話された内容で、印象的なもの(まあ、ほぼ全部なんですけど・笑)を書き出していきます。
組織構造を踏まえる。組織構造は「意図」「方針」「実行」
フィードバックと適応による循環が大事
右手編でもあった「整合を取る」「整合の循環」
組織を身体に例える。その身体を整合の循環から動けるようにする
意図は心、方針は頭、実行は動かす手足。動ける身体になっているか?
右手編でも出ていた「知行合一」を目指す
組織は社会環境と整合を取る。不整合していると売れない
小さな組織は循環が速い。大きくなると決定や伝達は遅くなる
意図・方針・実行が整合してないのは組織上のバグ
とにかく頑張れ、屏風の虎、意図方針のさびつき
新しい組織でも、3〜5年やっているとなりえる
最適化により、組織に意図がなくなっていく
組織が大きくなると意思疎通がうまくいかなくなり不整合を起こす
方針を標準化しそれが大きくなり、方針が無くなってしまう
固定化された方針により意図もなくなる。実行組織のサイロ化
むしろ最適化して効率化している。意図無き分散組織
意図無き組織は社会環境と不整合を起こす。とりまく環境の方が大きく変わっていく
社会環境と整合し直すために芯が必要。われわれはなぜここにいるのか
共通の意図、WHY
現代の社会はドーナツのような芯のない組織。芯がないところに芯を求めてもないものはない。マネジャーも経営ももっていない
会社全体で合意形成はほぼ不可能。大企業になると時間もかかる、まともにやってもできない
みんなが一致できるものは浅く薄くなる。他社の理念を持ってきても着こなせない
変えるのは一人ひとりの認識と常識。文書を書き換えても認識は変わらない
芯がないなら、自分たちで探しに行く
探索、適応、最適化。組織が果たすべき価値の模索、探索と適応の繰り返し、勝ち筋を決めて最適化。最適化はむきなおりで定期的に見直す
探索+適応=アジャイル。どう組織に宿すか?
プロダクト作りに手がかりがある(右手編とのつながり)
プロダクト作りを通して、自分たちが何で貢献するか学び直す(仮説検証型アジャイル)
ユーザの声を聞き(仮説検証)、学び直して(むきなおり)、新しい方向性に向けて具体化(アジャイル)
顧客との対話、インタビューでフィードバックをシビアに受け止める
どう受け止めるか?組織のスタンス。
ロバスト(変わらないようにする)、レジリエンス(変化に対応、受け止めるが従来通りに戻る)、アンチフラジャイル(変化に適応、組織を変える)
プロジェクトチームに必要なのはアンチフラジャイル。お客様との対話、お客様の力を借りて学び直す
自分たちのやるべきことに仮説を立てる。プロダクト作りを通じて芯を食う
チームで仕事をする、机上ではなく実経験、仮説検証とアジャイル
どんなプロダクトにするのか?自分たちを映し出すもの。既存の顧客が存在する領域か、新規でも既存顧客と接続できる領域
顧客もパートナーもみんな芯を探している。共創。相手と自分の回転の整合
プロダクト作りが組織を変える足場になる
チームとプロダクトの存在が組織にとってのリファレンス。あのチームがこれをつくっている、は分かりやすい
アジャイルは目に見えないが、プロダクトは目に見える
求心(芯)力、遠心(芯)力。プロダクト作りが人や技術、期待と希望を集める。プロダクト作りの発信が組織内の関心を集める
プロダクト作りをしている間は「前線」がある。経営もマネジャーも、前線にどれだけ身を置いているか?これがないとまともな判断はできない
現場でできることは、前線に導く道を舗装すること(正しいものを正しくつくるへの道)
理解したこと、価値創造の熱量。それを伝える場が必要
どこから狼煙を上げるか?主力事業から行きたくても強大。あえて遠いところからいく
成長を期待する事業。重力が働かなくて、小さく回せるところ(辺境)から。これまでの意図と方針と整合を取らなくてもよいところ
どこから始めるか?一人からはじめる。その後、パイロットプロジェクト、プロダクトチーム…と積み上げて行く
探索と適応の回転数が重要。だからこそ一人から始める
既存の組織でできないことに振り切る。振り切るからこそ価値があることをやっていると認識してもらえる。組織の初の試みが学びとなる
アジャイルの広げ方。アジャイルハウス
1Fはチーム、2Fは探索と適応、3Fは組織の進化
地下はメンタリティ。B1が協働、B2が越境、B3が変化
1F-B1はチームで動くためのアジャイルと協働。動ける身体
ふりかえり、むきなおり、見える化(かさねあわせ)
2F-B2は探索と適応のためのアジャイルと越境。正しいものを正しくつくる
越境するから得られる新たな視野、異なる視座
3F-B3は進化し続けるためのアジャイルと変化
社会環境との間で整合を取り、適応できる組織構造をつくる
同胞たちよ、「芯」臓を捧げよ
組織が一人の人間ならば、組織は心臓にあたり、よくあろうと思うところ(組織)に現れる。「芯」組織
芯組織が送り出す血液は関心・熱量、それを押し出す鼓動がスプリント。
スプリントの数だけ血液を送り出す(学びを載せる)。血液が巡れば体温が増し、他の組織に(社会環境や組織内相互の)関心を取り戻せる
関心は過去と未来と現在の繋がりに芽生える。FromからToへ
どこに血を通わせると組織は身体を取り戻せるのか?
マーケティングや営業は感覚器官。外部インタフェース。お客様との接点であり、ここの感覚が必要
事業部門は運動器官。既存事業に宿せば探索適応が普通になるがハードルが高い。直接的なブリゲードが必要
バックオフィスは内臓。血の入替が必要。辞めてもらうわけではなく、芯組織のやっていることを見てもらう、一時参加してもらって学ぶ
経営は神経器官。変化を伝えていく
組織変革こそ不確実性の極み。組織変革にプロダクト作りの経験が活かせる
組織を芯からアジャイルにする時代に「仮説検証」が必要
最初から意図は合わない。回転を回す中で、むきなおりで合わせて行く
芯臓を動かし続ける。鼓動を止めない限りいつか勝てる。傾きをゼロにしない
「組織をシンからアジャイルにする」とは?
組織をシン(正しいものを正しくつくる)でアジャイルにする
芯臓から始めて、やがて組織がアジャイルにすることであり、「組織を芯からアジャイルにする」である (これで右手と左手が繋がった!)
より良くあることと整合を取ろうとする場所全てが芯になりえる
一燈照隅、萬燈遍照。一人ひとりが自分の身近を照らすだけでは小さい明かりだが、自分の隅を照らす人が増えればいずれ全体を照らせる
組織の中に光源を作り残す、光源が足りなければ外から
光源を組織問わず集めること、それがコミュニティ
参加してみての感想
個人的に感じたのは、書籍の「組織を芯からアジャイルにする」の要素はあるものの、大幅アップデートな印象で、増強版や続編の本が出せるレベルに感じました。
日本企業の奥底にある組織の問題は根深く、そしてなかなか表層に現れてこないですし、気づいてもなかなか中の人が口に出せないという閉塞感がある中で、市谷さんが丁寧に経営陣やマネジャー、現場と対話をして言語化に辿り着いたものなのだろうと思います。
右手編でもありましたが、プロダクト作りが組織変革に活かせるというのは私の中ではかなりしっくり来ています。丁度半年前にこんな記事を書いていました。
比喩として書いていますが、プロダクトも組織も持っている役割は大きく括ってみれば変わらないものであり、プロダクト作りで行ってきた探索と適応、仮説検証、アジャイルな動き方は、組織にも適用可能なのだなと改めて確信しました。
市谷さんの今回の両手の講演でさらに気づけたのは、プロダクト作りという分かりやすいところで本質的なアジャイルの価値や動き方を実経験すれば、それを組織に置き換えれば入りやすいということ。もちろん、経営や組織となるともっとカオスで複雑な話も多く一筋縄ではいかないですが、何も準備ができてない、取っ掛かりが全くないよりかは取り組みやすくなります。
今回のお話は、停滞して閉塞感がある組織、何か変わらなければいけないが何をしてよいか分からない人にとって期待と希望になるのではないでしょうか。
私も自分で実践し、また様々なところで伝えて行ければと思います。