セミナーレポート「マネジメントの新潮流 「観察」から始めるこれからのチームづくり(基本編)」
『部下との対話が上手なマネジャーは観察から始める』出版記念セミナー「マネジメントの新潮流 「観察」から始める
これからのチームづくり(基本編)」を2024年4月19日に開催し、
著者の白井剛司氏にご登壇いただきました。
白井氏は博報堂に入社後に約10年間営業に従事した後、人材開発戦略局にて社内の人材育成に携わり、現在は株式会社ロッカン(ROKKAN)代表として人材育成、組織支援、マインドフルネス、農業やDIY、アウトドアワークなどの心身を扱うプログラムをご家族とともに提供しています。
感情と身体感覚を融合させたチームづくりの具体的な効果とその実践方法について語られたイベントの様子を、一部ですがお伝えします。
忙しいマネジャーには「観察」が必要
会社員の働く環境は一昔前に比べて、ますます複雑になっています。与えられている時間よりもやることが圧倒的に多く、マネジャーが対応しなくてはならないイシューは増える一方です。部下の指導に時間を使うこともままならないほど時間に追われるなかで意思決定し、行動を続けなければなりません。だからこそ、「自分と他者の心身を『観察』する必要があるのです」と白井氏は冒頭に語りました。
「自分を観察すると、自分の言動のパターンが見えてくることがあります。たとえば、不安な気持ちから出てくる言動・行動を自覚して、自分を大事にできていないことに気づくことができたりするのです」(白井氏)
そして、「自分を置き去りにしている時」と「自分を大切にしている時」の相手に対する気遣いの質は異なり、自分を大事にすると、相手のことも大事にしたくなってくると白井氏。自分の状態を観察し、自分を大切にする癖がつくことで、相手の抱えている疲れや不安などにも気がつき、ケアがしやすくなるのです。
赤・青・緑のモードで自分を「観察」する
この「観察」とは、具体的には何をどう行うことなのでしょうか。白井氏は自律神経系の学説「ポリヴェーガル理論」を参照し、主観的に身体と心を観察することをおすすめしています。
ポリヴェーガル理論では、自律神経の「交感神経」の働きを「アクセル」、「副交感神経」の働きを「急ブレーキ(防衛反応を抑制する)」と「緩やかなブレーキ(社会的な関わりを築き維持する)」という3つがあると整理します。そして自分や他者の身体や心が3つの状態のうち、どの状態にあるかを観察し、その状態を、否定や評価をせずに受け入れます。
さらに、本書では「アクセル」を赤のモード、「急ブレーキ」を青のモード、「ゆるやかなブレーキ」を緑のモードと呼んでいます。
「アクセル」の赤のモードに入ると、人は何か脅威を前に「闘う」または「逃げる」態勢になります。「急ブレーキ」の青のモードは脅威に対して「固まる」「動けなくなる」状態に陥ります。「ゆるやかなブレーキ」である緑のモードは「安心する」「つながる」状態で、くつろぎやリラックスといった状態を表します。
「この3つの状態はグラデーションであり、仕事をしているときは多くの人が赤のモードになっています。しかし、どれが良い、悪いということではありません」(白井氏)
「緑のモード」が一見、よいモードに思えます。確かに目指せれば、常に落ち着いた行動を選択できるようになりますが、赤のモードも青のモードも、何かに困っているとき、何かを守りたいときに入るモードです。必要性があるモードなのです。
どんな状態でも、自分や他者の身体や心のモードに気づけるようになると、カッと感情的になったり、逆におびえたりすることなしに、望ましい行動が選択できるようになっていくと白井氏は言います。
Resourcing体験
本セミナーでは、「自分の大切なイメージとつながる」【Resourcing】の体験も行いました。これはマインドフルネスの一種で、マインドフルネスは、「観察力」を高める訓練によいからだそうです。
「Resourcing」では、過去に経験した、楽しさ・遊び・没頭した体験・好きな場所についてイメージしながら、当時の気持ちや身体の感覚を思い出し、リラックスしている状態にしていきます。赤・青のモードになったときに、緑のモードに調整をしていくワークです。身体がゆっくりとほどけていくように感じられます。
白井氏の著書には、この他にも観察力や、受け入れ力を高めるさまざまなエクササイズがあります。より詳しい情報やご自分に合った方法を知ることができます。
イベントの最後には質疑応答コーナーも。
なかでも印象的だったのは「白井さん自身はどのようにしてこの考え方や方法を社内で広めていったのでしょうか?」という質問です。白井さんご自身も苦労しながら、セルフマネジメントの手法として丁寧にアプローチを続けてきたというエピソードが語られました。
3月・4月と200名以上の方にご参加いただいた本セミナー。注目度の高さが伺えました。自律神経の反応をマネジメントに活かすという本書のアプローチは、マネジメントをテーマとする書籍の中では珍しいものです。マネジメントに役立つ新しいヒントを本書で学んでみませんか?
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