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カスタマージャーニーからエンプロイージャーニーへ~EX従業員エクスペリエンス

こんにちは、noteコーディネーターの玉岡です。
本日紹介する書籍はこちら!



「EX」とは「Employee Experience」の略称で、本書では「社員が仕事を通して得られるすべての体験」とEXを定義しています。DXで組織の「枠」が革新される現在、「EX」は組織の「内面」を見直すための鍵となる概念と言えそうです。
本書の目次はこちら。


第1章 従業員エクスペリエンスとは何か
第2章 EX 向上 を成功させる6つの領域
第3章 EXをデザインする
第4章 EXにおけるテクノロジー活用
第5章 EX向上のための会社と上司の役割
第6章 先進企業4社の事例


第1章 従業員エクスペリエンスとは何か

第1章では、特にEX(Employee Experience)の重要性と、CX(Customer Experience)との関連を説明しています。

本書ではEXを、「個々の体験をポジティブにすることで、会社や仕事への求心力が高まるため、充実したEXは、イノベーションや成長の推進力となり、企業価値向上につながる。つまり、EXを高めることは重要な経営課題の一つである」と解説しています。

CXとEXの関連については、「CXは顧客の体験価値を重視する概念であり、商品やサービスの物質的価値だけでなく、感覚的な価値(CX)も重要である。CXの担い手は従業員であり、その対応がCXを左右する」と解説します。
従業員の体験(EX)が充実することで、顧客への対応(CX)も向上する。そのためには現場の従業員に権限を委譲し、柔軟な対応を可能にすることが重要だとしています。

質の高いCXのためには、質の高いEXが不可欠なんですね。

第2章 EX 向上 を成功させる6つの領域

では、どうすればEXが向上するのか。第2章ではそれを6つの領域で解説します。図表2-1がその各領域です。

この中で、特に行動心理学等の領域でも注目されているのが「ウェルビーイング」でしょう。ウェルビーイングとは「従業員が精神面、身体的、社会的に満ち足りた状態を目指す概念」と定義されています。
そこには「フィジカル(身体面)」「メンタル(精神面)」「フィナンシャル(経済面)」「ソーシャル(チームや同僚、仕事そのもの)」の4つの領域があり、EXの重要な要素でもあります。ウェルビーイングは従来の健康経営よりも広範囲かつ総合的なアプローチとして、今、多くの企業で注目されています。

第3章 EXをデザインする

第3章では、カスタマージャーニーにおけるペルソナ設定と同じアプローチで、「エンプロイージャーニー」におけるペルソナ設定を解説します。ポイントは「可視化」とターゲティング」であり、エンプロイージャーニーとペルソナを通じて、従業員の体験を可視化することが重要だと本書は説きます。しかし従業員は多様であり、漠然とした施策では効果が出にくいもの。そこでペルソナを設定して、従業員の誰をターゲットにし、どの体験を充実させるかを明確にする必要があります。
また第3章では、「EVP」(Employee Value Proposition(従業員への価値提案))という指標に触れます。
総括的に言うとペルソナ作成には、従業員が何に価値を認め、何に不満を抱いているかを理解する方法であり、EVP分析は従業員に対する理解を深めるために有効な手法です。その詳細はぜひ本章を読み進めて確認していってください。

第4章 EXにおけるテクノロジー活用

第4章では、「HRテック」として隆盛しているさまざまなデータ分析ツールを紐解きながらEXへの利活用を解説していきます。
面白いのは従業員の入社~育成~退社の各ステージにおけるツールを紹介している点です。
特に、最近フォーカスされている「アルムナイ」(退職者)に関しては「オフボーディング支援ツールとして、退職手続きを円滑にするためのツールやSNSの活用例などを取り上げています。

第5章 EX向上のための会社と上司の役割

第5章では、会社や上司が留意すべきEX向上のためのポイントを次の6つの視点で解説しています。

① リクルーティング/オンボーディング
──選ばれる企業になる・組織への適応を支援する
② キャリア・スキルディベロップメント
──成長への手厚い投資
③ リワード/リコグニション
──公平・公正な処遇と承認
④ ネットワーキング
──社員同士の交流による組織適応・アイデア創出
⑤ ワークスタイル/ワークプレイス(働き方・場所)
──柔軟で選択可能な働き方
⑥ ウェルビーイング
──心身の健康を超えた“よく生きる”ことの追求

詳細の解説は本書にゆだねるものとして、ここでも最後のポイントに「ウェルビーイング」が登場します。
ウェルビーイングが損なわれた状態の適例として「燃え尽き症候群」があります。本書ではその症例を次のように解説します。

①情緒的消耗感:精神的疲労度が増加した状態(心身ともに疲れ果てて何もしたくないという感情や気分)
②脱人格化:顧客や同僚に対して配慮や思いやりがなくなった状態
③個人的達成感の低下:仕事に喜びを感じることができず、自らの職務の重要性を低く見積もる状態

188ページ

ウェルビーイングが保たれ、上記のようなバーンアウトを防ぐことができている組織はどのようなものか?その取り組みは?
そうした「EX化された企業の成功例」が、最終章となる第6章で語られます。

プロダクト開発におけるペルソナ設定に始まり、ユーザーエクスペリエンス、カスタマージャーニーといった顧客側の分析手法は広く社会に浸透しています。そのアプローチを自社に向け、従業員自身の満足度、育成度を「開発」するためのEXという方法論は、今後ますます盛んになっていくのではないでしょうか。人事担当者、事業部門のマネージャー、経営企画層の方などにぜひご一読をおすすめします。


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