羊羹の多彩な世界
羊羹は、日本全国で愛される代表的な和菓子です。
伝統的な小豆のシンプルな羊羹から、様々な食材がを加えた革新的な羊羹まで、その多様性は広大です。
羊羹の魅力とその多様性に迫ってみましょう。
秋の味覚を凝縮した「栗羊羹」
栗羊羹とは、栗の甘露煮(甘く煮詰めたもの)が入った羊羹のことです。
全国的に製造・販売されており、特に栗の名産地などで多く見かけます。
煉(練)羊羹や蒸羊羹、どちらのタイプも存在し、栗の食感が強いものとやや弱めのタイプがあり、様々な食感が楽しめます。
本来、菓子のルーツが季節の果物や木の実であることを考えれば、ある意味、この羊羹は正統派の一品といえます。
素朴な甘さの「芋羊羹」
芋羊羹は、サツマイモ(甘藷)を主原料として作られる羊羹で、サツマイモを蒸し、裏ごしして砂糖を加えて弱火にかけ練り混ぜ、型に入れて固めて製造される蒸羊羹です(その他一部に、寒天を用いて固める製法もあり)。
東京・浅草に本店がある『舟和』では、原材料のサツマイモ(甘藷)を手作業で皮を剥いて、着色料や保存料、香料等は一切使用せずに、砂糖と少量の食塩を加えるだけで製造しているそうで、甘さ控えめで素材の風味を活かした素朴な味わいが特徴となっています。
和の心を呼び覚ます「抹茶羊羹」
抹茶を加えた抹茶羊羹は、その独特の香りと滑らかな口当たりが特徴的で、和の心を呼び覚ます一本です。
今や、その深い緑色をした羊羹は、定番中の定番煉(練)羊羹として親しまれています。
葉緑素とビタミンB群などが含まれていることから、1957年、昭和32年に厚生労働省に特殊栄養食品として認可された、虎屋の新緑という抹茶羊羹もありました。
多くは茶処の名産であることが多い様に見受けますが、比較的どの地域でも販売されている羊羹の種類となっています。
絶妙な塩加減の「塩羊羹」
昨今では全国で製造販売されていますが、塩羊羹の元祖としては長野県諏訪町の『新鶴本店』の塩羊羹が有名です。
厳選された北海道の十勝小豆と諏訪天の名で知られる茅野の寒天を使い、楢薪を炊いてとろ火で煉り上げながら、塩加減をしていくという昔ながらの製法を守り続けており、その色合いは(あく抜きの為に小豆の表皮を全部取り去ることから)透明感を帯びた淡い薄墨色で、ほんのりとした塩気と甘みが合わさった深みが特徴となっています。
ただし、『新鶴本店』のものを含めて何れの塩羊羹も長期保存が出来ないので、ご注意ください。
甘じょっぱさの新境地「醤油羊羹」
醤油を練り込んだ醤油羊羹は、独特の風味を持つ羊羹です。
全体的には甘じょっぱい醤油の味が特徴的で、醤油の名産地近辺で製造されていることが多く、ご当地醤油を使用して特色を競っています。
関東地方では、千葉県野田市近郊にある“御菓子司 喜久屋”の『醤油羊羹 御用蔵』が有名です。
醤油メーカーの“キッコーマン”が宮内庁に納めている『御用蔵醤油』を使用しているそうです。
一般的な羊羹よりもその色味は赤茶色に近く、仄かに醤油の香りがして、餡の甘さの中にわずかにしょっぱい醤油の味が混じり合う、渋めのお茶に最適な羊羹です。
意外性のある味覚「味噌羊羹」
味噌羊羹は、当然ながら味噌を練り込んだ羊羹ですが、最近では全国各地で製造販売されています。
その味は意外性が高く、誰しも最初は多少抵抗感がある様ですが、実際に食べてみると餡と味噌のコラボが癖になる人が続出しているとのことです。
当然、味噌の種類で味も変わると云うこの羊羹は、羊羹界の近年の隠れたヒット作です。
「羊羹」の奥深さ
現在では、様々な食材が練り込まれた羊羹が土産品やお茶受けとして親しまれています。
使用される餡(小豆)に関しても、製法の違いから、粒餡やつぶし餡に漉餡・小倉餡、小豆の種類の違いから小豆餡・赤餡・白餡・うぐいす餡・ずんだ餡などがあります。
粒餡は、小豆を煮て粒の残る状態で味付けして仕上げるものですが、対して小倉餡は、味付けした漉餡に小豆をふっくら炊いたものを混ぜて作るものです。
豆以外の材料でも芋羊羹の様にサツマイモが使われる羊羹もあり、紹介した味以外に、胡麻、黒砂糖、コーヒーや、日本酒、梅酒・ワイン等、数多くの材料が使用されます。
また、栗以外にも蜜柑、柿、柚子、苺といった果物や、胡桃やナッツ類といった木の実が混ぜられたりと、季節や産地の特徴を活かしたバリエーション豊かな羊羹が製造されています。
菓子店によっては、変わり種品や果物などを加える場合に期間限定とすることもありますので、定番商品以外にも、その時々にしか味わえない羊羹を探してみてはいかがでしょうか。
記事は以上となります。
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