元郎駅
香港の逃亡犯条例とそれに関わるデモについては以前から気になっていた。
ドイツにくるまで中国、台湾、香港のお客さんを担当していたこともあり、多い時は2ヶ月に1度香港に行っていたので、あの平和な街が一瞬で変わってしまい、知っている人たちも怖い思いをしていると思うと辛かった。
当時のお客さんにも連絡をとって無事を確認したが
「もう香港はだめかもしれない。行政長官が現在の親中派のキャリーラム氏になってから色んな法律などが少しずつ中国向けに変わってきていた。いつかはこんなことが起こるかもしれないと思っていた。私たちは既に香港を出る準備をしている。ここはもう安全ではない。」
と深刻な様子で語っていた。
そんな中、昨日、マスクをした白いシャツの集団が元郎駅の一般人を襲撃した。
45人もの人がケガをし、それ以上に居合わせた人たちやその家族、友人、あの駅を利用したことがある人は心に深い傷を負っているだろう。
元郎駅は、九龍や尖沙咀からかなり離れた新界の中程にあり、住宅やお店や倉庫などがあるエリアで、観光目的なら絶対に降りない。
車で少し行くと中国とのボーダーがあり、中国の港が開放される前は香港から中国本土へコンテナを運ぶ通り道になっていたこともあると聞いた。
デモが行われた場所からもはるか遠く、まさしく生活のための駅である。
私はお客さんのお家に訪問させて頂く時によくその駅を使っていたので、今回の件は当事者のようにひどく心が痛い。
あれは明確に香港市民を狙った暴力であり、絶対に許されない行為だ。デモの参加者でもない一般人を対象にした無差別テロとして扱われるべきである。
香港の駅には無数のカメラがあり、鈍器を持った異様な集団がいれば駅員や警察などが取り押さえるはずである。
しかし、実際にはそうならなかった。
ネットには警察は何もせずに立ち去ったなどという話や雇われたマフィアの仕業などという動画が上がっているが、真偽不明であるためにここでは深く追求しない。
しかし、法治国家として運営されてきた香港らしくこの事件を起こした集団をきちんと探し出し、真相を究明し、処罰をしてほしい。
こんな当たり前のことが当たり前でなくなってしまった香港をとても残念に思う。
私が大好きだった、あの香港をどうか返してほしい。香港を愛する人たちがこれ以上傷つけられる姿はみたくない。
私たちに、いったい何ができるだろう。
権力を前に、私たちはあまりに無力だ。
全てが理想的ではなくても、少しずついい方向に向かっていくことを誰もが祈っているはずなのに、実際に人は古代から現代に至るまで争ってばかりいる。
繰り返す歴史にうんざりするが、一人でも多くの人がこの事件や出来事から学び、暴力と争いの連鎖を止めなければならない。
近い将来、また香港の屋台で地域の人と一緒に美味しい海老ワンタン麺を食べられる日がくることを心から願っている。