同質化戦略とスタートアップの勝ち筋
同質化戦略とは、競争地位の高いリーダ企業が用いる戦略の一つで、チャレンジャ企業等が打ち出した差別化商品に対して、資本力を武器にそれと同じような商品・サービスを展開することで、チャレンジャ企業の差別化戦略を無力化する戦略のことである。
つまり、大手のような、大きい規模やシェアを持つ企業は比較的有利になりやすい。では中小やスタートアップはどのようにして大手を欺けば良いのか。
一時のアサヒとキリンの話をしよう。
キリンがビール業界トップのころ、50%以上という、圧倒的なシェアを持っていた。キリンの売りはラガービールで世間ではビールといえばキリンのラガービールというイメージがあった。それに比べ、アサヒは9%のシェアしか持っておらず、明日潰れてもおかしくなかった。
そこでアサヒはこの状況を変える方法を考えました。アサヒが目をつけたのはラガービールで勝負をすることではなく、生ビールを出すことによって差別化を図ることです。
ただし、これは先ほどの同質化戦略でも述べたようにキリンが生ビールを出してしまえばアサヒは勝てません。しかしキリンにはそれができなかったのです。先ほど述べたようにキリンはラガービールでシェア50%以上を持っており、他の種類のビールは売っていませんでした。社内では「生は邪道だ」という考えさえありました。アサヒはその弱みに漬け込み、生ビールを売るとともに、本物のビール愛好家は「生」を好むという考えを広めていきました。
これに対し、キリンは今抱えるラガービール好きにラガービールを売ることしかできませんでした。このようにしてどんどんとアサヒとキリンの関係が逆転し始めます。
キリンはその後、「ラガービールだけではダメだ」といろいろな種類のビールを出しはじめますが一極的に攻めるアサヒには対抗できず、むしろ強みを失っていきました。
つまり、キリンのようなシェアをもつ企業に対してはその企業のもつ、偏見や仕組みをうまく利用することによって逆転することができるのです。
トヨタに対するテスラも仕組みや偏見をうまく利用した事例と言えるだろう。
近年では企業でもアンコンシャスバイアスという言葉が注目されている。
アンコンシャスバイアス
無意識の偏見、無意識の思い込み」を指す。
自分ではそういうつもりがなかったとしても、実際にはものや人などに対しての見方や考え方が偏っている状態。
例. 親が単身赴任している。
→大抵の人が父親を想像するなど。
アサヒやテスラはその企業の仕組みやアンコンシャスバイアスをうまく戦略に落とし込むことによってシェアを拡大したいい例と言える。
このようにスタートアップは企業のアンコンシャスバイアスに着目することが大切だろう。大手だからこそ、できないことや、その企業だからできないという事柄や思想をうまく利用することがスタートアップが生き残っていく戦略の一つである。