こけの森と砂の宇宙
はじめて買った ちいさなルーペ
生まれてはじめて そっと こけを のぞいてみる
肉眼では 茶色と緑の しずかな世界に
躍動する たくさんのいのち
たくさんの こけの木が憩う こけの森を
ゆっくり ルーペで あるいていく
ちいさな虫が こけの木に よじのぼり
のっそり いさましく あるいていく
金と銀の 半透明の こけの葉っぱが
ひかりのなかで きらりと ゆれる
ちいさくて うつくしい その世界に
ほぅと ため息をつきながら
そっと わたしは その森をあとにする
そのまま ゆっくり 川岸へ
ひとすくいの 砂たちを
手のひらにのせ ルーペで そっと のぞいてみる
ひとつぶ ひとつぶ ちいさな砂は
ひとつぶ ひとつぶ ちがっていて
ひとつぶ ひとつぶが きらめく惑星
きみどり、青、白、透明、
金、銀、黄色、紺色、、、
たくさんの色で みちていて
ひと手のひらの 砂の宇宙は
あまりにも 広大で
わたしたち にんげんも
宇宙のルーペで のぞいたら
やっとみえるくらい
きっと ちいさな はかない ひとつぶ
ちいさくて かわいい いとおしい ひとつぶ