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【教育虐待】子どもに無理やり中学受験を強要したら精神崩壊、家庭も崩壊。学歴厨が生む悲惨すぎる結末【中村淳彦の名前のないコラム】

もうすぐ春ですね。進路について考える時期、子どもをすこしでも良い学校に通わせたいと親ならば誰もが思うでしょう。しかしお受験熱が過剰に上がりすぎると、子どもにとっても親にとってもいい結果にはなりません。無理強いしてでも掴ませたいその学歴は、本当に必要なものでしょうか?

団塊世代の「学歴厨」を受け継いだ現在の親たち

 ノンフィクションライターの中村淳彦です。
 僕は女性の貧困とかを軸にして取材をしています。女性の貧困は、おおよそ、社会でうまく生きられなかった人が全般的に広がっているから、いろんな人の話を聞くわけです。今日は中学受験が大流行ってことで教育虐待について話そうと思います。
 教育虐待受けた人の話はたくさん聞きました。ドラマ化した『東京貧困女子。』の単行本に出てきた教育虐待の例を話します。中学受験でヒステリックな母親に大変な目に遭って、今は生活保護という25歳の女性が出てきます。

ドラマも大ヒット!
『東京貧困女子。」原作はこちらから

 まず、中学入試するのはいいけど、大丈夫ですか? 子どもに無理やり勉強させたり、睡眠時間を削ったり、暴力ふるったり暴言吐いたりしてないですか? 後々、大変なことになりますよ。子どものためだと思って「勉強しなさい」、「それがあなたのため」とか言っていてもですね、10年後、娘と縁切られてもう恨み辛みが山積して、「あいつ死ね」なんて言われる結末は十分ありえます。本当に中学入試は気をつけてやってくださいね。
 少なくとも、子どもに勉強したい姿勢がなかったら、公立中学校行った方がいいです。子どもが拒否しているのに無理やり勉強させると、受験させたい母親側がイライラするから暴言を吐いたり、お母さんの性格によっては暴力ふるったりする。子どものためだと思ってやっているのに、まったく逆な結末になる。娘の人生はガタガタになった上に家族崩壊、家族の人生もなにもかもなくなってしまうっていう壮絶な結果なったりします。家族崩壊だから、母親も娘も、お父さんも、全員が本当にかわいそうな取りかえしのつかない結果となるわけです。

 もう一つ、教育熱心なお母さんは心に留めておいて欲しいけど、あなた「学歴厨」は大丈夫ですか?ってことです。学歴厨とは早稲田とか慶應とか県立なんとか、地域とか全国的なブランド校に子どもを進学させて、自分の見栄のために子どもを強引に勉強させて、子どもをブランド校に進学させようみたいな人が一定数どころじゃなくいますよね。そういう人めちゃめちゃいると思うけど、子どもが行きたいとやっていますか? それよりもあなたの見栄でいい学校に子どもを進学させようしていますか? この違いで結末が大きく変わってきます。
 見栄のためにやっていると子どものことはまったく見ていないから、子どもがSOSを出していても、やれやれどんどんやれって暴言吐いて暴力ふるう。冷静に判断できなくなって、そこまでして無理やりやらせる。「子どものため」って信じ込んでいるだろうけど、冷静に分解していけば、子どもが無理やり勉強させられている原因は、あなたが単なる学歴厨ってことがある。そういう親子、めちゃめちゃいるでしょう。

 団塊の世代の連中は学歴厨が多い。あの子は何々高校のなんとか、あの子は早稲田のなんとかみたいな感じで、その人を話すときに必ずブランド学校名とかブランド職場の形容詞を付けたがる。一流系の職場の形容を付けて、なんとか物産の何々みたいな感じ。あそこの息子は何々、早稲田の何々みたいな。そんな学歴厨が団塊の世代の連中を起点として全国津々浦々に浸透しているわけですね。
 で、その子どもたち、団塊ジュニアか氷河期世代の勝ち組が今の受験生の親だと思うけど、そういう団塊ジュニアが親の学歴厨をそのまんま受け継いで、まあ同じようなことを言っているのが現在です。東京中心に中学受験が過熱しているのは、人として悪質な学歴厨が増殖しているということでしょう。

 確かにいい学校行って成功する人はめちゃめちゃ成功するから、すべてが間違っているわけではないけど、中学受験で好転するのは無理やりやらなくてもできるエリートの才能がある子どもだけでしょう。だから中学受験は才能があればいいわけです。子どもに潜在的に勉強の才能があって、まずオール5。あっても、4が2つくらい。なにもしなくてもそのぐらい頭がいい子だったら塾に行って、1年間ぐらいバシバシやればトップ校に受かるかもしれない。
 オール4とか、その程度だったら才能ないでしょう。公立中学のほうがいいです。3があるような普通の子では話になりません。無理です。
 オール4とか、その程度の凡人を小学校2年くらいから塾通いさせて偏差値65以上行きなさいみたいなことやったら、死ぬほど勉強しても、おそらく受かないでしょう。元々素養がないのだから当たり前だし、だいたい親の頭脳が遺伝しているんだから、親のあなたはエリートなんですか、ということが問われるわけです。そういう能力の低い学歴厨が子どもに無理やり勉強させて、家族崩壊みたいなことになりがちです。

名門国立中学に合格も、25歳で生活保護に

 取材した女性は25歳だったけど、生活保護でした。生活保護で母親に教育虐待を受けた母親への恨みとか、母親への恐怖で震え上がっていて、精神疾患で働けるような状態じゃなかった。定期的にまったく起き上がれなくなるから、普通に働くことはできないってことで、まあ生活保護になったわけです。

 その女性は東京の超有名な国立中学校出身で、高校の偏差値は75ぐらい。みんな知っている国立の学校です。
 その女性の話によると、その国立中学と高校の子どもは、基本的に全員が教育虐待に近いことを受けている。在校生がみんながみんなおかしくて、精神病が蔓延しているというのです。中学2年あたりから、クラスの女子を中心にどんどんどんどんリストカットとかするようになって、学校がリストカットしている生徒の名簿を作っていたと言っていました。
「うちのクラスは半分がもう病んでしまって、リストカットしてるような状態で、私もそれに入っていました。エクセルかなんかに先生がチェックして打ち込んで、リストカットなんとかリストを作っていました」そんなことを言っていました。教育虐待による精神病まみれ、ということです。全体的に壊れているわけです。

 その女性自身は小学校3年からSAPIXか日能研に入れられて、もう狂ったように母親にスパルタ勉強をさせられて、小学校3年から勉強勉強勉強勉強で、しかもできないと殴る蹴るされたそうです。暴言は毎日で、とにかくあの恐怖の中で勉強をさせられて、その勉強する根拠は「あなたのためだ」って言っているけど、おおよそね、母親の見栄だろうって女性は言っていました。
 家庭がそうなると、子どもはもう精神をおかしくしてしまう。その女性は猛勉強の末にその東京のめちゃめちゃ有名な、みんな入れたがる国立中学校入れたけど、いざ入ってみたらですね、まあクラスの半分以上はかなり深刻に病んでいる状態。そんな精神病だらけの環境なのでイジメもすごいらしく、その子はイジメのターゲットにもされて母親の「勉強しなさい、今度は東大行きなさい、東大行きなさい」みたいなのが入学してから始まって、イジメとのダブル責めで、中学入試まではなんとか頑張れたけど、最終的に壊れちゃったわけですね。

 高校2年からとても学校に行けない状態となって、うつ病みたいな症状が出ると朝起きて、ちゃんと学校に行くってことができなくなる。学校に行けなくなって、高校3年生のときは焦った上に、母親がうつ病の理解なくて「いや行きなさい、行きなさい」みたいな感じで通学させて、それで完全に狂ってしまった。
 高校3年生のときは自殺未遂が止まらなくなって、もう何度も何度も自殺未遂して、精神病院に長期入院ということになってしまった。
 壊れてしまっても、やっぱり勉強しまくった経験があるから基礎学力は本当にあって、高校2年生でそうやってうつ病になってコケてても、めちゃめちゃ偏差値高い大学は難しかったけど、地方の国立大学に進学した。大学進学で母親から離れて、回復するかと思ったら、打ち込まれたうつ病がもう全然ダメで母親と離れても精神病が治ることはなかった。それが大学時代社会人時代と延々続いて、もう25歳で社会生活を送れなくて生活保護という流れです。おおまかにそういう話でした。

 ドラマ『東京貧困女子。』見ていただいた方はなんとなく雰囲気わかると思うけど、僕のライター役と編集者役は脚色が入ってるにしても、貧困女性役、インタビューに答える女性はあれまるまるあんな感じ。そのままです。その国立中学高校卒の女性は全然治ってない状態で、かなり深刻な状態で取材に現れて、本当にドラマみたいな感じの状態だった。
 よく覚えているけど、担当編集者の高部さんが彼女に余計なこと言った。余計なこと言って、その子が泣き崩れてしまった。僕がなんとかフォローして最後まで話聞き切ることできたけど、かなりナイーブな状態だった。うわーきついなっていう取材だった覚えがありますね。
 それぐらい教育虐待のダメージって大きい。その女性も高部さんの簡単な一言であんな泣き崩れるとなると、普通じゃない。今も治ってない可能性が高いから、教育虐待で母親が自分の見栄で酷いことすると、生涯そんなことになってしまうわけです。

 せっかく産んだ子どもをね、そんな傷つけてまで中学入試やる価値あるんですか? と問いたいわけです。こうやって普通に問われれば、それはそうだよなってわかると思うけど、親の見栄とか家庭の見栄とか、団塊世代の知人とかババアの学歴厨みたいなのが遺伝して、ネガティブが重なって重なって、子どもに無理をさせるみたいな風潮がある。長い人生を考えれば、私立中学行こうが公立中学行こうが大して変わらない。
 結局、私立中学のいいとこ行っても、本当に輝かしい人生を送るのは英才教育受けたトップの一部だけ。凡人とか普通に日本で生きてきた子どもじゃそういう特別な存在になかなかなれないし、特別な存在になる子どもは自分でやりたくて勉強やっているわけです。

 言いたいことを簡潔にいえば、親の身の程を無視した今の中学受験ブームは危険に見えるということです。みなさんの家庭が崩壊しないことを願っています。

ニコニコチャンネル+「中村淳彦の40歳から婚活ちゃんねる」
次回は3/7(木)21時〜生放送!
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<著者プロフィール>
中村淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』、『悪魔の傾聴』などヒット作多数。花房観音との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』(大洋図書)が絶賛発売中。Voicy「名前のない女たちの話」ほぼ毎日放送中。ニコニコチャンネルプラス「中村淳彦の40歳からの婚活ちゃんねる」が2月より配信スタート。