本書では、量子科学の最新理論を基に「死後の世界」や「意識」の本質を探っていきます。著者からは科学と宗教の深い溝に橋を架け、両者の融合を目指すといった大きなビジョンが示されています。
1.「科学」と「宗教」の間にある深い谷間に、「新たな橋」を架ける
著者は、序話で本書の目的として、「「科学」と「宗教」の間にある深い谷間に、「新たな橋」を架けること。」(P37)としています。著者はこの橋が新たな理論、「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」に基づいて構築されるべきだと主張します。
2.「死後の世界」を信じるか
多くの現代人が「死後の世界」や「神仏の存在」を信じたいが、現代の科学がそれを否定しているために半信半疑になっている現状を論じます。現代の科学が「最大の宗教」となっている状況が、信仰と科学の間の矛盾を生み出していると指摘します。
3.現代の科学が直面している限界
第二話では、現代の科学が直面する「三つの限界」について述べています。その一つとして、「意識」の本質を説明できないことが挙げられます。著者は、光子の「粒子と波動の二重性」に象徴される量子科学のパラドックスを紹介します。
著者はさらに、「唯物論的科学」が持つ限界についても言及します。
4.なぜ、人生で「不思議な出来事」が起こるのか
第五話では、「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を詳細に説明し、このフィールドが宇宙のすべての情報を記録していることを論じています。
また、宗教的な概念との類似性にも触れ、仏教の「阿頼耶識」や古代インド哲学の「アーカーシャ」との共通点を示します。
そして、私たちの生きるこの世界には、「部分の中に、全体が宿る」という不思議な構造があるとし、これも、昔から、古い宗教的叡智や詩人の神秘的直観が、その本質を洞察しているとの指摘をしています。その例として、「例えば、仏教の経典『華厳経』においては、「一即多 多即一」の思想が語られており、英国の神秘詩人、ウィリアム・ブレイクは、「一粒の砂の中に、世界を見る」という言葉を語っている。」(P133)という一致点を紹介しています。
さらに、科学と宗教の一致点を紹介します。
5.フィールド仮説によれば「死後」に何が起こるのか
第八話では、「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」が死後の意識の変化について新たな視点を提供します。著者は、肉体が死滅した後もゼロ・ポイント・フィールドに記録された我々の意識の情報が変化し続けると述べます。
さらに、この仮説が示すところによれば、我々の意識は「深層世界」と呼ばれるフィールド内で永続的に存在し続け、変化し続けるとのことです。
6.最後に
終話では著者は「科学」と「宗教」の融合を二一世紀の目標とし、人類全体の意識の変容と価値観の転換が求められていると説きます。さらに、科学者と宗教家が手を取り合い、新たな文明の創造に向けて努力することの重要性を強調しています。
そして科学技術者であり、また思想家でもある立場から、「科学者の方々には、かつて、『沈黙の春』の著者、レイチェル・カールソンが語った「センス・オブ・ワンダー」(不思議さを感じる力)を大切にして頂きたい。」(P340)とも述べ、科学が未解明の不思議な現象に対する好奇心を持ち続けることの重要性を示しています。
以上、本書では、著者のビジョンである科学と宗教の調和、未来の新たな文明創造の道筋とするための道標となるものが示されました。本書を通じて、私たちは「死」という概念や「意識」の本質に関する新たな考察の機会を得ることができるでしょう。