語彙と感受性

想像力が豊かな人は墨絵の中に無限の色彩を見る。
想像力が足りないと白か黒かのゼロ百思考になってしまう。
だから、譲歩や留保つきの肯定がわからない。
簡潔な言葉遣いにも、その単語の元がやまとことばか漢語か、ギリシャ/ラテンなのかゲルマン系なのかなど、想像をかき立てる余地はあるだろう。

「人は見た目が9割」という本があった。これは決して「美男美女であれ」と説いている本ではなくて、身振りや態度などの第一印象が発話の内容より影響するという主題であった。

見た目ならぬ「聞いた耳も9割」というべきかもしれない。
話に使われている単語の印象を強く左右するのは、むしろ抑揚や間の取り方であろう。
そうした第一印象で、見た目同様の好き嫌いが発生するが、それを以って即、善悪の価値判断に置き換えるのは誤りの元と言えよう。