授業探検隊[〜先生の承認力と授業中の"歩数"がカギ!?なぜか生徒の自己肯定感が上がる"情報"の授業」
学校紹介
今回取材したのは山手線のとある駅から徒歩5分という好立地の学校。コロナが落ち着いてきたといえどもまあまあ混雑した山手線に乗り込んで1時限目の授業を目指す。到着してみると周辺は駅から徒歩5分とは思えないほどの閑静な住宅街だ。最近は思考力入試や、探究活動でもメディアで取り上げられることが多い。アテンドしてくれた児浦先生との取材の数週間前の打合せ時点でとても盛り上がったことが印象に残っている。
今回お邪魔したのは、、、
帰国子女で英語堪能かつ情報分野にも長けている藤本先生の"中学一年生"の"情報"の授業である。"中学一年生"の部分にすでに特色が表れており、世の中の学校では"情報"の授業といえば高校生からであるのに対しこの学校では"中学一年生"の入学間もなくから情報の授業が組み込まれているのである。文科省の指定科目に情報科目はない、すなわち完全学校オリジナルのプログラムだ。したがって定型テキストなし、年間カリキュラムは学校の専門チームで一から作りこまれているという。また藤本先生は教職員研修会も担当されていてICTのスキルセットワークショップなどを学校内で開催しているという。リンクはこちら。さらに学校内の成績管理システムのプログラムをコーディングしたということで専門スキルは十分にありそうだ。
時間細分表
今回の筆者計測の当日の時間細分表は以下の通りであった
(もちろん取材時の実測値のため授業日によって異なることがあることとご理解いただきたい)
※この日は短縮授業40分の日であった
[この授業に関する学校環境と機材]
授業では藤本先生に加えてITサポート事務の先生が1名。2:30ほどの比率で授業をしている。空いている机はなかったのでこの日は全員が出席していたようだ。中学一年生の生徒の端末は統一されていてiPadを机の上に出している。ちなみにICT専用ルームなどに移動して授業を受けるのではなく、普段の教室で生徒が持っているiPadで授業は進行していく。ここ2年間で生徒の端末をiPadに統一したので中学1,2年生は同じ端末を持っているが、中学3年生以上は端末の機種は問わずに用意できる機器を各自が用意しているという。ソフトとしてはGoogleツール全般、Googleフォーム、JAMボード、keynote、といったものを利用しており、実際の授業でも先生と生徒の会話で自然とツール名が出ていたし、生徒の端末にはその画面が出ていることが確認できた。
[本日のテーマは「好き」を伝えるプレゼンテーションを作ろう]
夏休みまで2か月を切ったので夏休みの自由研究に備えて、このテーマを設定している。自由研究に向けて一つでも多くの表現の武器を身に着けておくのが狙いなのだ。この時点で公立の中学校とは違いが生まれているのだろう。何回かに分けて学習計画が組まれており、本日はスモールゴールとして"好きを伝えるキャッチコピー"を作ることだった。
授業内容のゴール設定自体はそんなに驚くべきことでもない。ただ授業3分で強烈に心に留まるのは、藤本先生のテンポのよさ、空白沈黙時間がないこと、生徒への問いかけと返答力だ。授業のゴールイメージやワーク指示は的確かつ端的に済ませ、それ以外の時間は生徒に挙手させ、問いかけて発話を引き出していた。生徒の発話に対しての承認は、まさに名捕手のような仕事ぶりだ。生徒が「○○です。」と答えるとすかさず「いいね~」「そうだね~」「それ気になるね~」と感想と承認を先生から返している。その結果"僕も先生に伝えたい""僕も授業に参加したい"という正の連鎖がほかの生徒に広がっているのを目の当たりにした。30人の生徒全体に問いかける時も承認していたし、授業後半の各自作業時にもひとりひとりに声をかけては承認していた。
失礼ながら情報の授業の取材が決まったときに、1専門的な言葉が飛び交う 2タブレット端末で何かを作る 3先生はきっとぼそぼそ話す そういったイメージを持っていたが、3について大きくイメージが外れた。それほど先生の滑舌は素晴らしく、ボディランゲージも多用していた。藤本先生が英語の専門家でもあるのが大きく影響しているのだろう。読者の皆さんは、テンポよく話す教育系Youtuberが教壇に立っているようなイメージを持っていただけるといいかもしれない。
授業の4割ほどが終わったところで、フェーズは先生からの説明から生徒各自の作業時間へと移行していった。そこからが2人の先生の本領発揮といったところで、教室を縦横無尽に歩いて歩いて生徒と会話しては次の生徒の質問に答えるといったスタイル。20分強の各自作業時間にて、先生が生徒に声をかけていたのは15回x2名=30回ほど。つまり全生徒にほぼ声をかけていたことになる。
各自作業時間中のクラス内の様子は、それぞれだった。もくもくとタブレット端末と向き合う生徒。画面を見せ合って相談をしあう生徒。先生を呼んでは内容や表現方法を相談する生徒。共通していたのは"先生が巡回しているから"、"取材が入っているから"ということではなく"授業に没頭している"姿であった。
(ストップモーション)
※ストップモーションとは授業の実況中に感じたライターの所感である。
筆者の中学時代は技術の授業で木箱を作っていた記憶がある。それが令和の今はタブレット端末でプレゼンテーションを作っている。何かを作り上げるという構造は同じであるが、社会から求められていることが違うということだろうか。
今回取材した学校についてより詳しく知りたい場合はこちらをクリック
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