宗谷岬に鴨さんがやってきた
気がつけば8月。もう今年も(とっくに)後半に入ってしまいましたが、昨年末から密かに抱いていた今年の抱負がありました。
2019年の暮れ、書棚を眺めながら、今年は作家さんのサインを直に頂いて嬉しかったなぁ、会いに行ける作家さんって素敵だなぁと、ゆるり思い出していました。
その作家さんに会えたきっかけはツイッター。ツイッター自体は2年くらい前からチラチラ覗いていたのですが、日常的に使うようになったのはこの年からでした。
ある日、ふとしたきっかけで浅生鴨さんという作家さんが稚内にひとりで本を売りに来るとの話題を目にしたのです。
よく知らない人だけど、ずいぶん変わったことをするなぁ、などと思いながらも基本的に根がミーハーな私。どんな人か、とりあえず著書を読んでみようと手にしたのが『伴走者』。
なにこれ、大名作!!
正直に言いますと、書店で平積みされていたのを見かけたことはありました。障害者が主人公のお涙ちょうだい話だろうと想像して食わず嫌いしていました、ひたすらごめんなさいごめんなさい。
スゴイ、しか言えない。最初、糸井重里さんの帯コメントが何を言っているかよくわからなかったけど、読後には実によくわかる。
すごい人が来るんじゃないの!!!
うずうずしながらも、職業柄どうしても仕事を離れられない時期。困ったなぁと横を見たら、ほぼ日読者の相方が浅生鴨さんの件に興味をもった様子。で、ひとり車で行ってくれることに! これ幸いと、もはや神々しく見える『伴走者』を委ねました。
さて当日、相方は早朝から稚内へ。私は出勤。
休憩時間に入ってツイッターを覗くと、鴨さんは朝から宗谷岬で店開きのご様子。
さあ、やるぞ。着いたぞ。
おお、始まってるよ、鴨さんやる気だよ。ワクワク。
風も激しくなってきた。いま僕は北の大地にためされている。
訪れる人はまばらなようだ。
めっちゃ雨降ってる…つらたん…
うわぁ雨! しかも結構強い降りのよう。
飽きてきた。
おい。
もう来ないよね?誰も来ないよね?雨で心が折れたから帰りたい。
いやいや、もうちょっと待って! いま相方が向かってまーす!ってなことをリプライしたら、暖かく(暖かいところで)待っていてくださいました。
※あとで知ったのですがこの日訪れた方の中でウチがいちばん移動距離が短かったらしい。それでも車で片道5時間でしたが!
もちろん『雑文御免』『うっかり失敬』を買わせていただき(妻が)、直筆のサインもいただきました。嬉しー!
あ、「裕」に点がひとつ足りない。
ころもへんの点が抜けてしめすへんになることって結構あるんですよね。「祐」なんて似た漢字もあるし。
まあこれも面白い! いつになるかわからないけど今度お会いする機会があれば、点を加えて完成してもらおう!と新たなモチベーションをいだきました。
そうしたら、ひと月しないうちに、今度は帯広へ来られるとのこと!
し・か・も!ネパール行ったメンズがそろって!
これは大事件!!
仕事を休んでも行かなくては!!!と、張り切って伺いました。
イベントは夢のような時間。トークショーの後は本の即売とサイン会があり、稚内のサインに補筆してもらいました。
それがこちら、
ん、、、オイ、チョットマテ、、、、イマ、キヅイタヨ
点がひとつ多いやんけ! !
、、、、すみません、取り乱しました。
どうして!?「ひろのぶ」だから!?
次こそちゃんとしたサインをもらう!!!
新しいモチベーションが生まれた。今年の抱負とする。
というところまでが、昨年末に書いた下書きでした。いいネタくださってありがとうございます😊
さて、その後、5月の文学フリマ東京にお邪魔してサイン物語完結だ!なーんてとらぬ狸の皮算用していましたが、こればかりはしょーがない。
宗谷岬からちょうど一年後、左右社の「仕事本」出版記念イベントZoom配信を聴講しました。
印象に残ったのが、佐藤文香さんが語っていた(本の中でも書いていた)この言葉、
広めの近所とオンラインの組み合わせが、次の時代の人との結びつきのあり方のひとつになる
実際に、今も日々の移動は地域限定的となっています。一方、オンラインでは距離に関係ない結びつきがもてるのも確かにそう。都市と地方の情報や文化の格差が縮まる機会になっていくのではないかという気もしています。知らんけど。
もうひとつ、鴨さんの言葉、
会いたい人とちょっとだけ会いたい
この言葉は、すごく同感でした(同じ感覚で捉えられているかはわからないけど)。
「仕事本」は、様々な職業の方の「あのとき」のリアルな言葉が詰まっていて、貴重な記録です。素晴らしい企画だと思いました。その時々の出来事と感情を記録しておくということは、大事なことなのだろうな。
ともかく、しばらくはこういう状況。
それでも、このイベントで、鴨さんはしきりに「旅に出たい」とおっしゃっていました。
噂では、次回はトレーラーツアーとのこと(!?)。気長にお待ちしています(どこで?)。
『雑文御免』『うっつり失敬』どちらも大好きな本です。振り幅の大きな、優しく強く面白い、素敵な文章が詰まっています。
※浅生鴨さんの本どれも素晴らしいです。私のつたない紹介でよろしければご覧下さい。