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病院組織におけるモチベーション向上の鍵



知識労働者のモチベーションとは

病院経営を取り巻く環境が一段と厳しさを増し、経営の逼迫が職員の気力低下を招く悪循環が生じるケースが増えています。先日、ある病院の院長から「疲弊するスタッフのモチベーションをどう維持すればよいか?」という相談を受けました。

モチベーションの鍵は何か? 組織によって状況は異なり、一筋縄ではいかないテーマです。しかし、ピーター・ドラッカーは、病院のように多様な専門職が集まる職場こそ、知識労働者の生産性向上が重要だと説いています。

知識労働者は、給与や賞与といった金銭的報酬だけではなく、「自分の知識やスキルを高めたい・活かしたい」という内発的な欲求が大きく影響するとされています。ドラッカーは、知識労働者の生産性を高める条件として、いくつかの要素を挙げており、その中でも「自律性」や「継続的な学習」が重要な要素の一つとされています。

また、アドラー心理学の「内発的動機づけ」によれば、モチベーションには「所属感」や「関係性の欲求」が満たされることが重要とされています。人は自分が組織の一員として受け入れられていると感じることで、仕事に対する意欲が高まる傾向にあります。特に病院のように多職種が連携する現場では、専門性の違いが協力を生む一方で、コミュニケーションの課題も生じやすいです。そのため、互いに尊敬し合い、協力できる関係性が構築されることが、仕事のモチベーションを左右する要因の一つとなると考えられます。

モチベーション向上のための3つの要素

病院組織でモチベーションを高めるには、「自律性」「継続的な学習」「関係性」の3つが鍵となる可能性があります。

実際、私が支援しているある病院では、経営課題を4つに絞り、それに取り組む多職種チームを選抜・結成し、月に数回ディスカッションを行う「チーム学習」の仕組みを導入しました。

各チームは、中間・最終発表を経営幹部に行い、提案を組織として取り入れる流れを作っています。当初は「多忙な現場で負担が増えるのでは?」と懸念の声もありましたが、継続することで職種を超えた協力関係が生まれ、若手職員の成長機会も増え、経営課題への当事者意識が高まるなど、ポジティブな変化が生まれました。

実際に、これまで仕事へのモチベーションが低かった職員がチーム学習の導入を契機に積極的に関与するようになったとの声も聞かれます。これらの成果は、「自律性」「継続的な学習」「関係性」を意識した取り組みの結果といえます。

学習を組織に循環させる仕組みの重要性

私自身、チーム学習は個人の学習を組織へ循環させる重要なプロセスだと考えています。各メンバーが持つ専門性や経験を共有し、高め合うことで、新しいアイデアが生まれ、組織全体の成果へとつながります。

しかし、これらは自然発生を期待するだけでは十分ではありません。意図的に学習の機会を設け、組織としての仕組みを整えることが求められます。

変化の激しい病院経営において、モチベーションを持続させるためには、チーム学習の仕組みが重要な役割を果たします。個人の学びをチーム全体で共有し、対話を通じて新たな視点を生み出すことが、組織の成長につながる可能性があります。こうしたプロセスを意図的に設計することで、病院全体の知識と経験を活かし、より柔軟な経営へとつなげていくことが求められるのではないでしょうか。

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