【営業虎の巻】 〜野村證券で10年以上読まれてきた営業ノウハウレポート〜
こんにちは。FinTech企業(株)お金のデザイン並びに(株)400Fで代表をしています中村仁です。
普段はTwitterとかで営業や経営についての発信をしています。今日は、僕が野村證券3年目で転勤するときに社内向けへ書いた営業虎の巻(?)的なレポートを紹介します。
内容は2008年に僕が水戸支店から野村資本市場研究所ニューヨーク事務所に転勤になるときに書いたものですが、それから10年以上野村證券の中で受け継がれてきており、"伝説のレポート"とも呼ばれているみたいです...
当時はまだKPIマネジメントやSaaS営業などという言葉はそれほど認知されていない中ではありましたが、当時考えていたことは現代のSaaS企業等における科学的営業モデルに似通った部分があるのではないかと少し思っています。(野村證券なので、もちろんそれにパッションが加わりますが
営業の考え方については証券営業だけではなく、いろんな会社の方にお役に立つと思いますので、長文(A4で8枚...)なのですが、お時間あるときにぜひご覧くださいませ!
なお、2008年から10年以上経過しておりベースの部分は不変だなと思っているのですが、一部考え方のアップデートなどもあるためそこには補足説明を入れていきます。
1. はじめに
金融という浮世の世界において絶対という価値観はない。自分が目指すべき道・将来像を日々追求しながら業務に邁進する。
しかし、基礎力が入社当初はない。そのため、「守・破・離」という考え方が大切だ。まずは「守」:徹底的に型を覚える(1〜2年目)。そして「破」:その型の殻を破ってさまざまなことにチャレンジする(3年目)。最後に「離」:自己流の形成を追求する(仕事をやめるまで追求し続ける)。
では、1〜2年目には何をするべきなのか?私の考えでは2年間に徹底的に苦労をして過ごせば残りはそのままの流れに乗っていける。そのため、本レポートではこの時期に一番焦点を当てて書いてある。
この期間営業の世界で求められているものの中心は①新規開拓件数②資金導入と考える。もちろん収益は大切であるが、できる限り開拓してそのすべてのお客様から資金導入とともに買付をしてもらえば自然に収益はできる。また、一度上客となったお客様はそのあとは初期段階よりも苦労せずに収益をあげることができる場合が多い。
ここで心がけるのは、人間がむしゃらな頑張りただけでは限界が生まれるしくじけてしまう。そこで、自分の行動を習慣化するために将来像を現在価値に直して行動パターンを形成する。
2. 営業目標と営業手法
前提目標(必達として必ず業務遂行しなければならない目標)
一年目:開拓件数200件/資金導入10億円
2年目:大口対象先開拓60件/資産純増30億円
まず、開拓件数の成就のために何をするべきなのか。
そのためには開拓のための営業手法を検討しよう。細かい創意工夫はあるものの、開拓で行う行動は①訪問外交、②電話外交、③手紙、④DM送付、⑤DHM、⑥紹介だ。
以下では各手法の効果をそれぞれ予想される開拓確率を元に検討する。
①訪問外交の場合
だいたい訪問時の開拓率は1%ぐらいであると仮定する。外交は6月から3月までの10ヶ月間。営業日数は1ヶ月を20営業日あると仮定する。そうすると、200件開拓するためには200÷1%で20,000件を1年かけて訪問する必要がある。
年間営業日数は10ヶ月×20営業日=200営業日。訪問件数を1日単位に直すと20,000件÷200営業日=100件/日となる。
つまり、開拓率1%だと仮定すると毎日100件は最低訪問外交をする必要がある。
②電話外交の場合
電話外交は直接約定にいたることがほとんどない。そのため、アポイントをとるための手法である。私の経験値では、アポイントを取れる可能性は1%。ただし、アポイントをもらった後の面談というものは、先方も興味・関心がある場合が多く、約定確率も高い。そのため、約定可能性を50%とする。そうすると、200件開拓のためには、200件÷50%=400件のアポイントを必要とする。そのアポイントをとるためには400件÷1%で40,000件を1年でかける必要がある。そうすると、40,000件÷200営業日=200件/日の電話外交が必要になる。
電話外交のアポ獲得は単に電話をすれば良いというわけではないです。単に電話をするだけだと断られることが多い。そのため電話営業のコツについてはstand.fmで話をしているので気になる方は聞いてみてください。
注意:以下の営業手法は核となる手法ではないので以下の方法のみで200件開拓できるということはありえない。それを大前提として考えて欲しい。
③手紙によるアポイント
直筆による手紙はあくまでも相手先への印象付けにしかならない。しかし、他金融機関・販売業者が行っている訪問・電話外交よりも圧倒的なインパクトがある。そのため、手紙を書いた後に電話外交を行い、訪問をすると約定確度が高くなる。ただし、巻紙を書くことは体力・時間的な制約が存在する。私の経験では慣れてくると一通書くのに15〜20分ほど必要とする。そのため1日5通書くと必要時間は1時間30分ほどということだ。
帰社後行うことは、夕刊読破、新聞切り抜き、指標ノートの作成、一日1レポート読破、そして巻紙だ。巻紙以外の行動習慣のかかる時間はだいたい1時間30分くらいだろう。そうすると、巻紙と合計で3時間必要になる。平均的な帰社時間を9時だとすると、12時まで時間が必要となるので、睡眠時間を考慮すると5通というのがギリギリの枚数になる。
さて、ではこの巻紙の効果はどのくらいなのだろうか。200営業日で5通なので年間1,000通書いていることになる。その中で、外交確度を高めてくれるのは「丁寧に書いた」一部、だいたい3%くらいがアポイントをとれて約定に結びつくのではないだろうか。
つまり、1,000通×3%=30件の上乗せ開拓ができることになる。開拓件数の数字だけでは少なく見えるが、コストに対しての開拓率では非常に高いものがある。そのため、時間と体力があるならば巻紙枚数は増やすべきだろう。
④DM(ダイレクトメール)の効果
DMの役割は ⅰ 自分が回っているエリアに送付して、後日送付先全てを訪問して事前の接触を試みる ⅱ 自分がなかなか行くことができないエリアに送付をして返信を期待する、ことだ。
では、その効果を検証したい。ⅰについては自分の外交接触件数を増やす期待効果があり、ⅱは返信による直接的な期待効果がある。
ⅰについては、単純に訪問外交と同じ効果を期待していることとなる。ただし、直接的な接触ではないので、効果は現状すると仮定して0.3%の約定可能性となる。また、スタッフさんの協力が必要不可欠なので1週間に可能な定期的DMは100通ほどである。そうすると営業週は40週ある。つまり、40週×100通で4,000通。開拓率は4,000通×0.3%で12件となる。
ⅱについては、IPO-POなどの募集商品の案内時に期待する場合が多い。そのため、商品の魅力も重なり約定可能性は0.5%と高まる。また、募集商品は月に1回ほどしかないとする。そこで、月一度300通DMを配布すると、300通×10ヶ月=3,000通。開拓件数は3,000通×0.5%で15件とする。合計でだいたい27件の効果がある。
⑤DHM(ダイレクトホームメール)の効果
DHMは普段の外交時に付属で行うものである。例えば、1日100件訪問外交をしても会える先や面談できる先は少ない。また、帰社時には何件も素振りして戻ってくることが多い。その時に一件でも多く自分をアピールするために接触を試みなくてもDMをポスティングはするべきである。
これはあくまでも補完業務であるので開拓率は0.1%ほどだとする。例えば、1日100件訪問して会えるのは10件とする。すると、残りの90件はDHMに使う。また、帰社途中に20件DHMをすると1日110件DHMできる。すると110件×200営業日×0.1%=22件となり、年間22件の補完業務となる。
⑥紹介の効果
この行動は一番効率的かつ開拓可能性が高い。自分のお客様に紹介してもらえることはよほど信頼してもらっていることの証明なので紹介してもらえばほとんどの確率で開拓できる。つまり、例えば100件開拓した時点で紹介をお願いしたとする。その中でだいたい20件くらいは引き受けてくれる可能性がある。そうすると、20件は開拓できるのだ。そのため、仲良くなったお客様にはタイミングを見て必ず紹介をお願いすることが大切だ。
以上の方法を使い、年間200件開拓を必達目標とすることが大切だ。どのように開拓するかは、IPOやPOの活用、自分の得意商品の販売など様々である。その中でどのようなセールストークをするかは、自分で考えるべきだと思う。マニュアルで覚えた提案では言葉の力が生まれない。自分で悩んで考えた話の方が迫力と言葉から伝わる魅力が生まれる。
また、どれか一つに偏った営業を行っても効果は上がらない。それぞれの有効性をしっかり認識して、日々それぞれを組み合わせた外交を行うことが大切である。そして、人間は辛い時には必ず足が止まるので、それはインストラクターが日々の行動をしっかり見守り関することと、新入社員自身で行動管理できるように外交シートを毎日記入させて律させるようにする。外交シートの作成に当たっての参考指標は、外交出発時間、帰社時間、出発前の仕事リスト、企業訪問件数、名刺枚数、DHM枚数、出発前電話件数、外交時電話件数、巻紙枚数、面談件数、本日資金導入、本日新規開拓などを記入して、結果のみで評価判断するのではなく、日々の行動からの問題点を検討させる。
今振り返ると上記のまとめは機械的に動くことにフォーカスが当たっています。これを単純にやり切るだけでも素晴らしい結果は出ると思いますが、それぞれの営業手法に対してはユーザーの課題が何かということを考える仮説思考や、そのアイディアを営業ツールに落とし込むこと、そして外交シートについては僕が好きな「最高の結果を出すKPIマネジメント」に書いている手法も取り入れることでより大きな成果に繋がると思います。
3. 資金導入について
次に資金導入について検討したい。
10億円を200件で達成させるには、10億円÷200件=500万/件の資金導入が必要であることを前提に考える。
つまり、開拓するたびに全てのお客様から500万円約定を取り付ければ達成は可能なのだ。そのために、基本姿勢としては必ずお客様に提案する時には500万円以上の約定を取るつもりの心構えでなければならない。
しかし、万人が自分の提案に納得をしてくれるわけではないし、また絶大な信頼を置いてもらえることもある。例えば、10億円を一件で達成する音もあるし、5億円を二件、1億円を十件やればこの数字は容易に達成できるのだ。
さらに2年目においては30億円÷60件=5000万円となる。つまり、毎月5000万円以上の大口約定を5件開拓して最低5000万円以上のビジネスを行わなければならない。
これらのことを踏まえた上で資金導入時の心構えは①全ての開拓先から500万円以上の約定を取り付けるための外交を行う、②それ以下だったとしても一円でも多くのお金を野村證券に入れてもらう、③大口の太陽先を開拓して大きな金額を導入する。
第一に全ての人から500万以上導入する方法を考える。我々が提案できる商品は株式・債券・投資信託のどれかである。
①については、一年を通して自分がいいと思える商品をオファーし続ける。そのためには、徹底した情報収集と商品の勉強が必要である。その商品のメリット・デメリットを究極に追求してその商品のことなら少なくとも支店の中で(野村證券全体で見てしまうとインサイダー情報を持っている人物もいてどうしても情報格差が生まれるので支店ベースでの比較にする)一番知っていると断言できるほど勉強しなければならない。
そうすると、お客様からどんな質問がきても焦ったり、どもったりすることなく自信を持って勧めることができてお客様も安心してまとまった資金を入れてくれる。
また情報収集では、世の中は刻々と変化しており不変であるものはない。そのため昨日良いと思っていたものが今日はダメということが多々ある。さらに、世の中の動向に照らし合わせて自分の保有商品の強みを知ることもできる。そのため、日々圧倒的な情報量を収集してどんなマーケット環境も把握できるようにしなければならない。
②については、①でたとえ完璧なセールストークと情報量を取得していたとしても、万人に受け入れられるということはありえない。そのため、もし自分が完璧な外交ができたと思っても断られたらそれは不可抗力でありどうしようもないとまずは割り切る。そして、「ではこの顧客が絶対に満足する提案はなんなのか」ということを追求する。そのためには、お客様の情報を聞ける限界まで聞く。それは、家族構成から趣味など直接的にはビジネスに関係しないと思える事象であってもヒアリングする。なぜなら、家族構成から行動を把握してその人の考え方を知ることができたりするのだ。そこからその人が気に入っている商品を考える。その時には、なぜこの商品がこの人に合うのかということを何度も反復して考える。同時に再度断られることも想定して、その時断られる理由は何でどのようなことがネックになっているのかも考える。そして、そこからその次は何を提案するべきなのかを再検討する。その作業を繰り返し行い、次回面談時にお客様が断る理由を次々に潰し逃げられないようにすることと同時に、「それなら納得できる」と思っていただけるような提案を行う。
4. 大口対象先への外交
では、一番ダイナミックかつやりがいのある大口対象先はどのように開拓するのだろうか。これに関しては特に特別なことはない。そもそも開拓するための手法は上記に記したもの以外ではほとんどないのだ。そこにプラスアルファで大口資金を導入してもらるための外交工夫と情報管理をするのだ。
そのことを考えて5000万円以上の対象先へ外交時の大切なことを述べたい。今回大切なのは①外交情報管理の徹底、②野村のインフラのフル活用、③商品外交以外からのアプローチ、④そもそも5000万円以上の商品の提案をする、が挙げられる。
まず①については、ただ単なる接触履歴だけでは細かい情報管理は足りない。何月何日にどのような方法で接触をして、どのような提案をしてどのような反応を示したのか。そして、その際得た新たな個人情報は何で、過去何回外交していて同じ商品を今回で何度目の提案になっているのか。さらに、地域ごとに区分けすることで今度効率的なアプローチができるようにもしておくなど、細かく管理する。そのようにすることで、ペンディング先との進展状況が詳しくわかり次回訪問時に漏れのない提案をするようになれる。
上記の情報管理については若い世代がまずは心がけることだと思う。テクニックに走ると法人情報などを使って専門的な提案をするようになる。しかし、営業とはお客様との関係を築き上げることであり、過去のやりとりやその際の情報をしっかり覚えていないと小手先のテクニックだけでは大きな成果は望めない。
次に②については、大口の外交というのは自分の力だけでは困難なことが多い。究極に考えていたとしても、経験や知識レベルで上司に及ばないことは多々ある。そのため、自分だけではどうしようもない先や、さらにもう一歩具体的な提案をしたいときは本社同伴・上司の同伴を積極的に活用する。そのことで、お客様にとっても最良の提案ができるし、名刺の力で開拓ができることもある。このように、様々な人を巻き込んで外交ができるようにするためにも、人脈形成のための社内外交や他人に「こいつのためならなんでもしてやる」と思われるために気配りや付き合いを心がける。そうすることで、自分の力だけでは及ばない部分であっても簡単に約定に結びつけることができる。
③であるが、銀行・保険会社を含め我々には同業他社が数多く存在する。また、税理士や会計士、FPなども我々のライバルであると認識する必要がある。その時に、一般的な商品案内外交をしても何の特徴もなく、例えそれで開拓できてもうわべだけの信頼関係であり深掘りには至らないことが多い。その時に必要なのが、例えば個人税金の話、法人税の話、決算対策、自社株対策など別角度からのアプローチを行う。そうすると、「こいつは使える営業だ」「こいつは普通の営業とは違う」という認識を勝手に持ってもらい、より大口の資金導入に繋がるケースがある。その知識向上のための努力はNBA(野村證券の自己研鑽プログラム)の参加や、自分から営業企画@HOME(野村證券の営業ノウハウなどが蓄積されているイントラネット)などを積極活用して情報収集するのが良い。
④については、対象先に必ず5000万円以上の提案しかしなければ、決まる時には必ず5000万円以上の約定に結びつく。また、アプローチのやり方として5000万円以上を提案して1000万円や3000万円の約定に結びつくことはあるが、1000万円の提案をして5000万円の約定に結びつくことはほとんどない。すなわち、より多くの資金導入をするためにも最初にまとまった資金での提案をしていき、そこから掘り下げて行って提案することが大切である。例えば、自分が本当は投資信託や株を大口で購入してもらいたかっとしよう。その時に、単に投信の魅力を熱く語ったとしてももし信頼関係がそこまで出来上がっていなければ「じゃあ付き合ってやるよ」的な金額(1000万円くらいだろうか)になる場合が多い。この上限金額を上げるためにもまずは5000万円以上の商品提案を代替商品としてお客様に提案する。そして、そのメリット・デメリットを話す。その時にそのまま約定に結びつけばそれは結果良しだ。しかし、お客様が金額面での抵抗や、流動性懸念などを持った時には自分が勧めたかった投信や株を考えられうる範囲で完璧なセールストークで提案する。すると、お客様は大きな金額での提案に最初意識が行っているので気に入って貰えば大口での約定に結びつく可能性が非常に高い。
その後自分の相場観が世の中の相場と合致すれば以後はますます多くの資金を導入してくれるだろう。ただし、気をつけなければならないことが一つある。例え相場観が当たっとしてもそれを自分の力と錯覚しないことだ。それはたまたま自分の考えがそうばの方向性とあっていただけで、今後も努力してお客様が満足いただける提案をできるように鋭意努力するべきだ。なぜなら、相場観をひけらかすだけでは必ず自分の相場と違った展開が訪れる。その時に今まで調子のいいことを言っていただけに相場が崩れるとそういう付き合いをしていたお客様は一気に引いていく。
以上のような、外交を行い一件につき一円でも多く大口の開拓を一件でも多く行うことで10億円以上の資金導入が可能となる。
5. 自らを鑑みる
付け加えて、数字上の世界だけでは上記の行動を習慣化すれば目標は達成可能に思える。しかし、ビジネスとは人対人である。そのため、自分以外周りの人といかに付き合うかが非常に重要となる。
例えば、相手から思いやりのない行動をされて喜ぶ人間がいるだろうか?指導しても何の反応も示さずまた反発ばっかりする人間に積極的に指導をしたいと思うだろうか?
つまり人が「こいつのためなら」や「こいつといると気分がいい」と思われるような人物にならなければならない。それは、公私関係なく行う。
仕事上では、お客様への礼儀はもちろんのこと、上司・同期・後輩への気配りを怠ってもいけない。またプライベートな場合においても飲み会等の時でも周りへの配慮を一切欠かしてはいけない。
なぜこのようなことを申すかというと、仕事上ではお客様から気に入ってもらえなければどんなに素晴らしい提案でも拒否される。会社内では周りに気配りできない人間は支援される孤立する。どんなに優れた人間でも一人でビジネスを全て完結することは難しい。そこは理屈ではなく人の心理に対して訴えていかなければならない要素なので、自分の才能・努力で及ばないことが多く理不尽に思うこともあるだろうが、その状況を楽しんでいくぐらいの気構えが必要だ。
また、普段の心が目ができていないのにいざという時に行動できる人間はいないのである。一流のビジネスパーソンとはプロである。一流のプロは普段から周りを意識して過ごしている。それと同じように、普段の行動から気配り等を行えないようでは、一流にはなれない。それは、人が一番油断する飲み会の時などに一番顕著に現れる。その場で悪ノリする人間はビジネスの世界でも浮ついた行動をしている人間であり仕事の迫力はない。
営業とは理屈だけでは成就しないことが多い仕事だ。上記の行動を習慣化すればある程度の営業土台はできて、できる営業パーソンになることはできるだろう。しかし、その時のマーケット環境や取り巻く人物の環境によって力が発揮できないと思うこともあるかもしれない。そんな時でも「絶対に諦めない!」と強烈に思うことが大切である。我々の仕事ではやればやるほど結果が出て認められ自分の理想の仕事を行うことができるようになる。これからの仕事人生は今までの人生より長い。その時間を楽しめなければ、つまらなく苦しい人生を送ることとなる。そうならないためにも、常に自分の信念や理想像を思い描いてビジネスを行う。すると、自分の行動一つ一つに意味を見出すことができて楽しく過ごすことができる。
6. 最後に
最後に3年目からの行動において必要なことを簡素に述べたい。
私の考えでは1〜2年目に上記の行動を行えばある程度の土台はできる。その後は営業技術や、商品知識、経済知識、財務知識などの向上により基礎ができている人間はそのままいい結果を残せるくらいに成長できる。
その中で、3年目は数字のことも言われるだろうが、一番大切なのは「自分なりの"ビジネス"スタイルを見つける」ことだ。なぜビジネスと強調したかというと、仕事はボランティアでもなく趣味でもない。我々は営利集団であり、またサラリーパーソンである。会社に利益をもたらせない者や自分の行動を収益化できない人間は企業にとって必要ない。
つまり、自分の思考・行動が会社にとってのビジネスに繋がるようにさせなければならない。その方法は1〜2年目で行ってきたことをベースに自分なりに築いていけばいいのだ。株が好きなら株のスペシャリストになり、投信なら投信、債券なら債券、そして企業財務等から攻めたいのならそれで良い。ただし、それが直結して会社の利益となるようにしなければ意味がない。資本の理屈では我々はコストである。自分の価値を認識して利益を出せるような人間でなければ必要ない。それが嫌なら会社を辞めて独立すれば良い。ただし、外部に出ることでいかに我々が「野村證券」の看板で価値が嵩上げされていたか気づくだろう。世の中は広い。井の中の蛙にならないように日々自分の市場価値をしっかり認識しよう。
そして、その「破」の部分を徹底的に追求することにより「離」が起こる。この段階では一流の金融パーソンとしての道を歩んでいく必要がある。それは、専門分野のスペシャリストでもいいし、究極のゼネラリストでも良い。ただし、共通するのは飽くなき追求心を持って日々自分の市場価値を高めるための努力を一日たちとも怠ってはならないのである。
世の中には思い通りにいかないことが多い。しかし、そんな中でもこのレポートが読んだ方々への行動指針に少しでも役立てば幸いである。
7. あとがき
12年経過して読んでみると、そもそもの文章を訂正したいと感じたり、営業手法についてはアップデートしたいな、と思う箇所が多々あります。でも、生え抜き社員として3年間必死に営業をしていた当時の自分の心の声なんだと思うので誤字脱字以外は原文のまま記載しています。
また、当時の状況を冷静に分析した営業手法についてはこちらのnoteもぜひご覧ください。より体系的にまとまっていると思います。
この虎の巻については社会人3年目までの方の営業に関する基礎体力的な話が多く、テクニック論は含まれておりません。営業についてはステージが上がるごとに必要となる知識・ノウハウは増えていきます。しかし、知識・ノウハウは学習すれば習得できるものですが、それだけでは不思議と圧倒的な成果は出ません。やはり基礎体力あってこそのスキルになります。
僕は現在FinTech企業の経営者として日々マネジメントに取り組んでいますが、野村證券で営業を経験したことは非常に大きな糧になっております。今、営業で苦しんでいる、次のステージにいきたい、さらに成果を出したいなど色々と考えている方はいると思います。
そういった方に対しても声を大にして言いたい。
営業は素晴らしいものです。今精一杯取り組んだら、その先に素晴らしい未来が待っています
非常に長文でしたが、最後までご覧いただき本当にありがとうございます。ぜひ僕のツイッターやnoteもフォローしてくださったら嬉しいです。今後もいろいろな情報発信を行ってまいります。