柵なしでおこなう 畑の作物を守るためとうがらしの刺激で動物を近づけない作戦
はじめに
昨年まで中山間地に畑を耕作していました。現在も動物害がつづいていると近所の方々から聞いています。ネットをはっても天井まで覆わない限り被害が生じています。
いっそのことネットなしで対策できないだろうか。浅はかな考えで動物害をすこしでも食い止められないかという、昨年までおこなっていた文字どおり涙ぐましいまでの体験記をここへ残します。
動物害が…
うちの畑は周囲の野生動物たちの楽園でした。ここへ来ればおいしいものが動きまわらずとも手に入ります。どこかの温泉センターのような快楽の園。イノシシ、アナグマ、タヌキ、ノウサギ、イタチなどでしょう。
8年前に畑しごとを始め、5年前から販売をやりはじめた当初からいたちごっこはつづき、なんとかしないとなあと試行錯誤。
手をこまねいているうちに、昨年は植え付けた里芋の種芋200個あまりは、9月を待たずして子芋が育った段階(里芋で数百キロ相当、逃げた魚は大きい)で全滅。わたしは5年来ではじめてスーパーで里芋を買って食べる始末。
ここ数年間は戦略を変更。ここは怖いぞ、いやな目に遭うぞと野山の動物たちにおぼえてもらう作戦をとりはじめました。
動物たちはこの刺激を感じられるのか
わたしの作戦のひとつが激辛唐辛子と匂いのけっこう特徴的なハーブを畑の周囲にこれでもかと植えまくること。ゆず胡椒に使うとんでもなく辛い唐辛子の種子を知り合いからいただき、畑でふやせました。おかげで種子をふんだんにまくことができ、総勢400本ほどの苗を植えつけました。
これは思いつきではなく「現代農業」に、「独特のにおいをもつハーブを畑の周囲に植えつけ動物を寄せつけない。」との記事からヒントをもらいました。この方法で畑のなかにはろくなものはないと動物に思わせる作戦です。
実践している方がわりとうまくいっているとの記事内容でした。
唐辛子の辛みとは
さて、今年のノーベル医学・生理学賞は「温度と触覚の受容体の発見」に関してでした。皮膚の熱いなどの感覚はどうやって感じられるのだろうかというしくみの解明に関してです。
唐辛子の辛み成分はカプサイシン。以下のような化学構造をもちます。脂溶性(油に溶けやすい)のバニロイド化合物。
カプサイシンが、あるレセプターを活性化するとチャネルが開放。カルシウムイオン、ナトリウムイオンが神経細胞内に入り込み、脳にインパルスが送られます。
このレセプターは、カプサイシンのようなバニロイド系の香辛料のみならず、高温によっても活性化されるそうです。やけどの熱による痛さと激辛を痛いと感じる機構はじつは同じしくみのようです。
これが動物も同じならば電気柵の代わりにならないかと考えたわけです。
ほんとに、カライ…。激辛の唐辛子は熟れてくると黄色に。いかにも辛そうです。
さっそく失敗しました。この作業中に暑さでなにげなく顔の汗をぬぐった後、目に猛烈な痛みを感じて涙がしばらくとまりません。「ああ、やってしまった。」唐辛子の収穫を素手でしてしまい悔やみました。
さすがに辛みが半端ではなく痛みです。収穫物で危険を感じたのはおおげさでもなくはじめてのこと。それ以来しっかり手袋をして、果実を直接ハサミで容器に収穫して触らないようにしています。
料理に使うにも1㎜角の分量でうどんにじゅうぶん唐辛子の辛味が利いてるなと感じられるほど。苗に触れただけで物質が移りそうです。
これが400本ある畑。その中にもハーブ(下の写真左奥はバジル)やねぎ、たまねぎなどを植えて文字どおり動物たちにとってはなんの魅力も感じられない辛味や匂いにあふれる畑にしました。そして栗をむいたあとのイガをまいておきました。このとげは武器になります。
おわりに
こうしてこの年は、この畑にはイノシシなどの足あとは目立ちませんでした。
比較のため唐辛子を植えつけなかったごく近くの畑は、上述のようにほぼ全滅の被害がみられました。おとなりの畑も含めて里芋、さつまいも、かぼちゃが全滅。
まだ科学になりえていません。何年かつづけてみるべきですし、イノシシの好む野菜を畑に植えつけ、そのまわりを唐辛子で囲ったうえで効果を確かめてみる必要がありそうです。
残念ながら昨今の状況下で農業をつづけられないでいます。上述した実験もつづけられないままです。