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研究しようとすればさきだつものが… 大手の理解と中小の悲哀


はじめに

 研究パートで常勤スタッフの方々をサポートしている。最新の論文や報告などを目にすると、あらたな研究のアイデアがあれこれうかぶ。あれとこれ、そしてこの試薬があればとまわりをみわたして算段する。たりないものの価格をのこり予算にてらしあわせてみる。たいていたりない。

いいアイデアなんだけどなあ。たいていそこでボツになる。着手できるのは予算内で算段がつきそうなものにかぎられる。同時にてをこまねいていないでスポンサーさがしをはじめる。

なんと年度はじめから予算がたりなくてこうしたことをやっている。なんかおかしい。

いつもおなじ

 常勤のスタッフの方々の手のとどかない部分のお仕事を手伝っている。わたし自身にアイデアがあれば自由に既存のものをつかって研究していい立場。多少たりないものは研究室の予算からあてがってもらえている。

おもいついた一部をこなして、うまくいきそうだと確認の分析や分取などにすすんでいくと、追加の費用が必要になる場合がある。想定外のおもしろい結果が出た場合などはたいていたりないのでその場であきらめる。

そうなる段階でつかえるお金はつきてしまう。次年度にまわそうかとするうちに、ごくごくちいさなテーマやなにかの修理が飛び込み、虎の子の残余をつかいはたす。「棚においたまま」でほんとうは充てたいテーマをふやしてしまった。

成果をだしても…

 なんとかお金をかけないくふうでしのげ、学会報告、特許取得、論文作成とすすんでもいばらの道がまちかまえている。それらにも大きな費用のかべが…。

とくに特許は法律上、数か月でものにならなくなる。こうして成果の手前の段階で山積みになる。いつになったら世に出せるのやら。たなざらしにしておくわけにはいかない。

ひとむかしまえの大手企業からの依頼。社内でたちゆかないテーマについて相談をうける。関連学会がきっかけになりやすい。出会ったのちに訪ねてこられる。交渉や契約を経て大枠の研究費用を出していただいたうえで、こちらで着手して解決、いっしょに特許をとる。そのうち毎年のように研究費をだしていただけて、ときおり課題をいただく。

たまたま成果を出せて、連名の特許につながる。そうした良好な関係を5,6年つづけられ、たいへんお世話になった。このようにおたがいにプラスとなる関係をたもつには、つなげていける関係を努力して築くのがたいせつとかんじた。

最大手になると、「主題テーマの範囲内で事後の年次報告書さえだしていただければご自由に研究なさっていただいてけっこうです。」というところも3,4社あった。その分野の振興を図るのが目的とのこと。視野が広く余裕をかんじるし、研究者にとってもっともよい成果がでやすい状況をつくれる。

スポンサーさがしをつづけて

 おてつだいしているのは民間の研究所ではなく、公的な研究機関。あまりに特定の企業の利益になることは避けたい。どなたが見ても疑念のない研究や報告がもとめられる。

地方の研究機関。スポンサーのなっていただける企業は大手のみならず地場の中小企業もある。規模はおのずと限界がある。もちろん共同研究などの契約をむすぶ機会がある。こちらの立場をご理解いただけて、どれだけ研究の自由度をあたえてもらえるかがカギとなる。

ところが地場の企業の方のなかには、研究費を出す際にこまごま条件やなにかのしばりを設けようとされてしまう方もいる。これでは契約に至れない場合もある。失礼な言いかたになってはいけないし、なるべくご希望にそえるようなくふうをしようとするのだが、ときおり研究機関のお墨つきをもとめているのかなと思ってしまう。

科学のとらえかた

 なかには会社の製品や対象に思いいれが強い方々に出会うことも。相談におとずれる方々は熱い。ところがネガティブな結果がでるとあっさり縁がきれてしまいかねない。

科学である以上、こちらは出てきたデータに忠実。予想をくつがえされてもいたしかたない。期待にそえない場面も多い。こちらはあくまでも一貫して客観的に出てきた結果に冷静にむきあう。

こうした経験を経て、研究にありがちな面にご理解をいただけ、スポンサーになっていただける企業や財団をさがす。たいていそれ相応の条件がつく。成果と利益の出る部分を渡してもじぶんたちの研究にメリットがある場合には話をすすめる。以降も研究に協力してもらえるようにべつの成果をだしつづけなければならない。

おわりに

 予算を確保すること。これは営利をもとめていない研究機関でなかなか超えにくい。諸外国ではもっと熾烈な申請状況と聞く。体力や気力がいる。民間予算、競争的予算をべつに確保して成果をあげていかねばスタッフのみなさんの業績になっていかない。

スタッフのみなさんと日ごろ接して思うのは、研究の能力をもちながらその機会をあたえてもらえていないとつねづねかんじる。自由にさせてもらえる時間をあてがってほしいということ。

何にもわずらわされないで奔放に思惟させてもらえる。その時間の確保のために必要な最低限の費用を確保する点に尽きると思う。これこそ研究者にとってよい成果をだすもっともよい方策だと考えるのだが。

研究で貢献せよ。だが予算はじぶんたちでなんとかせよのところはすでにじゅうぶんやっているスタッフが多い。にもかかわらずこうした提案をしないとならないとは。

気づいたところに先まわりしつつ下ざさえする。予算どりの申請を活発におこないつつ、わたしは研究者の方々をさまざまサポートしていきたい。


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