読む、 #ウェンホリ No.06-04「日本には広場もストリートもないけど、銭湯がある」
<No.06-03から続く>
場所じゃなくて、居場所がもっと増えたら
荻上:でも、この生活のなかでたぶん、心地良い休日を過ごしたいとか、健やかな時間を過ごしたいっていう方々がいらっしゃって。「どうすれば過ごせるんですか?」って問われることもあると思うんですよ。でもそれも「なにが得意で、なにが不得意ですか?」とか、「なんの時間が好きで、なんの時間が嫌いですか?」とか、その人によっても違うじゃないですか。で、身近で友人同士でそういったことを話せる人がいなかったとしても、こういったその、たとえば配信とかで誰かと誰かがそういった趣味についてとか、生活についての言葉を交わしているっていう、その言葉の共有の場面を見ることで、それぞれが社会学習して。「そうかそうか。概念さんとチキさんはこう言ってたけど、自分はどうだった」みたいなことを持ち帰るみたいなことってあると思うんですよね。
星野:そうですね。
荻上:で、今までテレビとか放送とかでバンバン、することを延々ともたらしてて。で、それは結論して「買いましょう」とか「やりましょう」なんですけど。ゆったりとした時間を過ごせるというのもある意味、ウェブ時代の配信カルチャーのなかで一旦、「疲れた」っていう方々が「下りる」っていうものを別のコミュニティやチャンネルでつくり出して。そうしたようなその配信とかに人々が集まるようになってきたっていう。だからその「しないのは下手かもしれないけど、一緒にしないでゆっくり学ぼう」みたいな、そういうようなチャンネルが今、できつつあるし、今、私たちがやってるのもそういうことなのかなっていうのは思いましたね。
星野:そうですね。なんか僕、それこそ一緒に本を出していたいとうせいこうさんと本屋さんのイベントで、なんか目的なく集まるみたいな。一応、本屋さんのイベントなんで目的は、大目的はそれなんですけど。なんのトークか、だんだん続けてるうちにわかんなくなって。悩み相談に対して、90分かけてウダウダ、みんなで思うことを言ったりだとか。「なんだ、この場は?」みたくなっていた時期があったんですよ。そのトークイベントが。で、なんか僕、それでも思ってたんですけど。なんか今、その「する」とか、「ここは○○の場所です」とかが規定されてる場所ばっかりかなと思うんですね。特にまあ、僕は東京に住んでるんで。東京ではそうだなと思って。
荻上:東京、そうですよね。
星野:でもなんか、よくわからない寄り合い所みたいな。「なんとなくあそこに行ってみたら、誰かしらいるだろう」みたいな場所とかがあると、少しなんか、それこそボーッとできたりとか。ボーッとできるけど、ちょっといつも見る同年代のやつがあそこにいるなとか。そう思ったりだとかして過ごせる場所みたいな。そういう時間の使い方みたいなことができる場所が全然ないよなと思って。で、そうすると、もうどんどんどんどん心をすり減らすというか、走り続けるみたいな生活になっちゃって。ちょっとその休憩所というか。「あそこに行ってちょっとゴロゴロしてみよう」とか。
そこに本とかがあれば、「なんかちょっとあそこで漫画とか読んでみるか」みたいな感じで。で、そこで知り合いになった人とちょっと飲みに行ったり、みたいな。そういう謎の寄り合い所みたいなところがあるといいなと思っていて。それが実はそのメンタルヘルス的な予防にも繋がるんじゃないか、ぐらいに思ってるんですよね。なんか、そういうスーパー銭湯とかつくりたいなとか思っていて。メンタルヘルススーパー銭湯って勝手に呼んで、プロジェクト化してるんですけど。自分の中で。
荻上:「すべてのリラックスがここにある」みたいな(笑)。
星野:そうなんですよ。で、その休憩室がめちゃくちゃ広くて。ちっちゃい相談所があって。相談したい人が自由にこれるみたいな。絵本とか文化的なものも置いてあって、みたいな場所ができたりとかするといいし。それがこういう配信の場で、目的があるようでないようであるような、みたいな話をしてるのを聞くことで、なんかひとつの居やすい場になったりとか。こういう配信もそういう意味があるなと思いますし。リアルの場でもそういうところがあるといいなと思いますね。
荻上:そうですね。この前、東欧に行ったときにその広場やストリートが本当に広くて。かつ、ベンチが排除型じゃなくてちゃんと寝そべれるベンチだったんですね。日本には広場とストリートがないなと。しかも人が休もうとしたら、金払うしかないんですよね。喫茶店に行くとか、漫画喫茶に行くとか。そういうような場所でないなにか居場所みたいなものがもっと、自覚されつつ、自分の心地良いところを探るっていう。そうしたようなことがもっとあってもいいのかなというふうには思いましたね。
のびのびできる時間をもっとつくろう
荻上:今日はいろいろ話をしていて、様々な心地良さをリスナーのみなさんにも共に考えてもらう、そんな配信になったと思いますけれども。最後に、自分なりに心地良く働いて暮らしていくためのコンパスになるような、そういった考え方があったら教えてください。
星野:まあ、いろいろあるんですけど。より、のびのびできる時間が少しでも増えていけばいいのかなっていうのを指針にするのはどうかなって今日、話していて思いました。うん。のびのびできないと、窮屈ですからね。当たり前なんですけど。
荻上:そうですね。
星野:まあ、でもこれも難しいし。話したらきりがないんですけど。「じゃあ、のびのびするってどういうこと?」みたいな話になってくるんですけど。のびのび、みんながしていてほしいなってなんか、ちょっと思いますね。
荻上:そうですね。友達とかと時間を過ごす時も、「○○しない?」でこう、することに誘うじゃないですか。「のびのびしない?」ってなかなか言いづらいですけど。何ならそれが自分に成立するのか? っていうふうに考えるヒントにはなりますね。
星野:そうですね。「のびのびしようよ」っつって。「じゃあ、どうしようか?」みたいな。そこから入るっていうのは1個、いいかもしれないですね。
荻上:まあメジャーなのは日本の場合だと、広場とストリートはないけど、温泉があるから。「温泉にでも行こう」っつって休むっていうのはあるでしょうね。
星野:やっぱり僕、スーパー銭湯をつくるって言っていたのは……(笑)。
荻上:温泉が正解だったっていう(笑)。みなさんもゆっくり湯に浸かりながら……中にはね、湯の中で聞いてるっていう方もいるかもしれないですね。
星野:そうですね。そうなるといいですね。
荻上:はい。今回もあっという間の時間となりました。「仕事疲れをどうにかしたい」というテーマで、星野概念さんとお話をしてきました。リスナーのみなさんがこれから、心地良く働き、暮らすための小さなヒントになればと思います。最後に概念さん、何かお知らせはありますか?
星野:お知らせは特にないんですけれども。これから僕も、よりのびのびですねできるように暮らしていきたいなって思いました。
荻上:はい。みんなののびのびリストみたいなものをTwitterとかで公開したりとかね。なんか「私はこれでのびのびしてますが」みたいな。そうしたものの共有って、いいですよね。
星野:そうですね。本当に。
<書き起こし終わり>
文:みやーんZZ
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