2021夢日記 最後の山菜 ji-jyo 3月9日
僕は今年に入ってから毎日、夢日記を書いている。過去のものは最後にご紹介しておきます。
昨日の夢は不思議でなんとなく切ないものだった。
始まりは何時代のものなのか、藁葺き屋根の古い家の一室からだった。
大きな広間の真ん中に、一枚だけ敷かれた布団の上、もう長くはないのだろうと感じる一人のご老人が横になっていた。
『あなたの希望はなんですか?』
ご老人の横で僕は静かにそう問いかけた。
『ワ、ワラビ』
今にも消え入りそうな声で、微かに聞き取れた山菜の名前を確認して僕は家を出た。
背中に大きな籠を背負い、家の裏に広がる山を登り始めた。
登り始めたときに見上げた山は、さほど大きくは見えなかったものの、いざ入山するとなかなか上りごたえのある感じがした。
どれくらい上ったのか。もう足がパンパンになり始めたころ少し開けた場所に出た。
そこにはありとあらゆる山菜が芽吹いていた。季節は問わず希望するものは何でも摘み取ることができるようだった。
僕はさっきのご老人の希望通り、ワラビを摘み取り早々に下山した。
藁葺き屋根の家に戻ると割烹着を着た女将さんのような人が出迎えてくれ、僕は急いで取ってきたワラビを渡した。
僕が着替えを済ませ横になっているご老人がいる部屋に戻ると、さっき渡したばかりのワラビはもう天ぷらになり布団の横に置かれていた。
『どうぞ。ワラビの天ぷらです。』
僕は横になっていたご老人の体を支えながら、小さく切ったワラビの天ぷらを口に運んであげた。
そのご老人はしっかりと味わい、
『ありがとう。』
そう言ってほほ笑むとそのまま静かに息を引き取った。
次の日も僕は同じように、その日横になっているご老人たちの希望を聞き山菜を取りに行っては食べさせる。
どうやらこれが僕の仕事のようだった。
何日かそのことが繰り返されたある日。
僕はいつも通り横になっているご老人の希望を聞いていた。
『タラの芽がいいねぇ』
ご老人の希望を聞き終えると僕はいつも通り家を出た。
その日は出発前から天候が優れず、雲行きがだいぶ怪しかったが、僕はご老人の希望を叶えるために山へと向かった。
いつも通り無事にいくつかのタラの芽を摘み、下山しようとしたとき、突然の大雨に見舞われた。
どうにも下山するには危険だったので、しばらく大きな木の下で雨が弱まることを願い雨宿りをすることにした。
もちろんご老人のことは気がかりで仕方なかったけど。
やがて雨も弱まりだしたので、僕はなるべく早く取ってきた山菜を渡す為に急いで家へと戻った。
でも。どうやら遅かったようだ。遠巻きに見て取れる家の入口には、しゃがみ込み、顏を手で覆うようにしている女将さんが見える。
その隣には真っ白な大きな棺が運ばれていく様子があった。
《間に合わなかった》
僕はご老人の最後の希望を叶えてあげることができなかった。
空はさっきまでの大雨が嘘だったかのように晴れ間が広がっていたのに、
僕の心は切なさでいっぱいになってしまったところで今日は目が覚めた。
なんともやるせない気持ちになったけど…
明日も夢日記を書いていこう。
【2021 2月夢日記 ~ji-jyo~】
【2021 1月夢日記 ~ji-jyo~】
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