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選んだ道が繋いだ希望と挑戦

「福祉の仕事なら、きっと人の役に立てるはずだ!」

この言葉が、福祉系の大学に進学する前の私の原点でした。しかし、正直に言えば、資格が取れて就職に有利そうだという軽い気持ちが大きかったと思います。入学後、社会福祉や児童福祉について学びましたが、その時点ではそれが自分の将来とどのように繋がるかはまだ見えていませんでした。

一時保護所での転機

私の人生が大きく変わる転機が訪れたのは、大学3年生の時。児童相談所の一時保護所で夜間指導員のアルバイトを始めたことです。一時保護所にいる子どもたちは、家庭の問題や虐待など、さまざまな事情を抱えています。最初に担当した夜、施設にいる子どもたちの表情はどこか暗く、警戒心に満ちていました。

夜中に泣き出す小学生がいました。家庭での虐待のトラウマから、眠ることが怖いと言います。その子が話す不安や思いをただ静かに聞くことしかできませんでした。ある日、彼が「誰かと話せるだけで、少し安心できる」と言ってくれました。その一言に胸が詰まりました。自分にできることの小ささを痛感しつつも、「この子たちにとって、誰かが寄り添うことがどれほど大切か」を強く感じた瞬間でした。この経験が、私を本格的に社会的養護の世界へと導いてくれたのです。

児童養護施設での挑戦

大学卒業後、私は児童養護施設で働く道を選びました。そこには、さまざまな背景を抱えた子どもたちが生活しており、日々の支援は決して簡単なものではありませんでした。

ある中学生の男の子との関わりが印象に残っています。彼は何度も施設を抜け出し、時には暴言を吐いてスタッフとの衝突も絶えませんでした。しかし、話を聞いていく中で、彼が抱えている孤独や「自分は必要とされていない」という思いが徐々に見えてきました。何度も「そんなの、関係ない」と突き放されましたが、それでも日常会話を丁寧に続けることで、少しずつ心を開いてくれました。

半年が過ぎた頃、彼がある夜「俺、ちゃんと学校行こうと思う」とぽつりと話してくれたのです。その時、支援の力は目に見える成果ではなく、時間をかけて育む信頼の中で生まれるのだと実感しました。

自立援助ホームでの学び

その後、自立援助ホームの部門長として、28のホームの運営を任されることになりました。この仕事は運営管理だけでなく、若者たちの生活に直接関わる場面も多くありました。

ある若者とのエピソードがあります。彼は家庭での虐待の影響で自信を持てず、就職先でも「自分はダメだ」と繰り返し退職を続けていました。私は彼と一緒に彼の得意なことを探し、履歴書の書き方を一緒に練習し、面接にも同行しました。その中で「できることから始めてみよう」と何度も声をかけました。

数カ月後、彼は工場の仕事に就き、「自分にもやれることがある」と少しずつ笑顔を見せるようになりました。ある日、「自分が変わろうと思えたのは、あの時、一緒に話を聞いてくれたから」と言われた時は涙が出るほど嬉しかったです。

現在の活動と未来への思い

現在は、【社会的養護実践専門家】として、支援者への研修や現場のスーパーバイザーを行っています。また、自立援助ホームや児童相談所のシステム改善に携わり、若者たちが孤立せず自立できる社会の実現を目指しています。支援の現場を離れても、子どもたちや若者たちが安心して未来を描ける環境を作ることが私の使命です。

過去を振り返ると、選んだ道の先に広がった希望と挑戦は、私が想像もしなかったものでした。支援の中で出会った子どもたちや若者たちは、私に新しい視点と成長を与えてくれました。そして、この道を歩むことで見えてきた可能性が、今の私を支えています。

未来は予測できないものかもしれません。しかし、そこには必ず新たな挑戦と希望が待っている。この先も、目の前の出会いや出来事を大切にしながら、一歩ずつ歩み続けたいと思います。

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