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11/28 ニュースなスペイン語 Ley de Seguridad Ciudadana:治安維持法

「治安維持法」ー。直訳すれば、「市民の安全のための法律」。別名、「Ley Mordaza」とも言う。mordazaとは「猿ぐつわ」のこと。つまり、権力機関にとって不都合なことを広めようとする者の口を封じる、というのが趣旨だ。

本法律は、2015年、マリアノ・ラホイ(Mariano Rajoy)政権で可決された。現政権の長、ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)は首相(primer ministro)に就任して以来、この「治安維持法」を廃案する(derogar)ことをひとつの公約にしていた。2年前から、この法案の、改正(reforma)に乗り出していたが、この度、いよいよ、前政権の忘れ形見の「治安維持法」にメスが入った。

この法律の可決を(強引に)推し進めたラホイは国民党(PP)だ。その時の野党(oposición)だったのがスペイン社会労働党(PSOE)。本法についての各党の立場を一言でまとめると、

治安維持法【反対】:スペイン社会労働党・ポデモス党(Podemos)
治安維持法【賛成】:国民党・ボックス党(Vox)・市民党(Ciudadanos)

となる。いつも足並みがなかなか揃わないスペイン社会労働党とポデモス党の連立与党は今回ばかりは共闘している感がある。きれいな与野党の対立図が浮かび上がる。

今回の改革で一番、影響をうけるのが「警察機関(Fuerzas y Cuerpos de Seguridad)」である。治安維持法は「デモ(menifestación)」を実施する際、事前申請(comunicación previa)などを要求していたが、これが緩和される。また、デモへの参加者たちが、警察官などを撮影すること(grabación)も制限されていたが、これも緩和される。その一方で、デモが暴徒化した時、ゴム弾(pelota de goma)を使用することについては、いろいろな制限が付く。

27日、警察官らが治安維持法の改革に反対するデモを行った。主催者発表で15万人が参加したという(もっとも、政府発表では2万人。デモが開催されるたびに、参加者の数が発表機関によって食い違うのは毎度のこと)。

「市民の混乱にNOを(No a la inseguridad ciudadana)」ー。参加した警察官らはスローガン(lema)を口にした。そして、「犯罪者(delincuente)」たちを活気づかせ、「スペインの治安を守る警察官たちに石を投げるようなものだ(deje tirados a los que "defienden la seguridad de España, los policías)」と参加者たちは言う。

デモには、警察官たちの他、維持法改革反対派の政党の党首たちも駆けつけた。中でも、国民党党首パブロ・カサド(Pablo Casado)、ボックス党党首サンティアゴ・アバスカル(Santiago Abas cal)、そして、市民党党首イネス・アリマダス(Inés Arrimadas)が一同会したところは迫力がある。

なお、現在、国民党は、マドリード州知事(Presidenta de Madrid)イサベル・ディアス・アジュソ(Isabel Díaz Ayuso)が党選挙を巡って「内ゲバ・内戦(guerra interna)」をふっかけている最中だが、今回のデモでは休戦だった。

写真はデモの様子。横断幕には「この改革にNOを!市民の混乱にNOを!」とある。