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デザインとアートのはざまで表現する|Hiroaki Higuchiさんインタビュー #10
昨年12月に開催した「じだいのはざま展vol.5」。
その会期中に行ったアーティストインタビューを掲載します。
今回はHiroaki Higuchiさんのインタビューです。
主催と対談形式で、“デザインとアートのはざま”について語りました。
前回のインタビューはこちら👇
Hiroaki Higuchi
芸術家、グラフィックデザイナー(手捺染会社)
2000年生まれ、大分県出身。
京都を拠点に芸術活動とデザイン業をしてます。
自然物や環境を観察することが好きです。
https://www.instagram.com/f.direction01/
枠にとらわれない展示
───Higuchiさんは大分県出身。博多の日本デザイナー学院でソーシャルデザインを学んだ後に、グラフィックデザインを勉強したいということで京都芸術大学に編入されました。
Hiroaki Higuchiさん(以下敬称略):はい。今は休学中で、ALIVEという京都の手捺染工場でデザイナーとして働かせてもらってます。今日はシルクスクリーンのワークショップ体験ができます。よろしくお願いします。
───以前、大分県で「colors Ⅱ」という個展を開催されたんですね。
Higuchi:地元・大分の市民会館の30mぐらいある白い漆喰の壁が貸し出されていたので、そこで展示を行いました。市としてはたぶん“壁一面どこを使ってもいいよ”ということだったと思うんですけど、せっかく30m使えるんだったらほぼ埋めてみようと思いました。
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Higuchi:壁紙用の原画を描いて拡大して、25mのテント生地にプリントしました。その上にまた自分の小さい絵を等間隔に展示しました。
───写真で見ても迫力がありますね。壁を埋めてみようという枠にとらわれない発想が面白いです。
Ephemeral/儚い物
───今回のじだいのはざま展vol.5は「ぼくらの揺(ゆらぎ)」がテーマだったんですが、どのように作品に落とし込まれましたか?
Higuchi:自分の興味分野はグラフィックデザインなので、ちょうど今やっているシルクスクリーンを手段にして、タイトルを「Ephemeral/儚い物」にしました。紙の広告物は一過性でそのときのためだけにあるものだと思うんですけど、最近、逆に時代を象徴するものとして価値があるから収集した方がいいんじゃないかみたいな風潮が高まっています。
───DMやフライヤーなど、一時的な広告物を総称して「エフェメラ」って言うんですよね。
Higuchi:そうです。いろんな時代でいろんな出来事があって、イベントがあると絶対に広告物=エフェメラが出るわけで。その時代の揺らぎを捉えているものの一つだと思い、タイトルにしました。
モチーフにしたこの葉っぱは、去年もらった花束の生き残りの葉っぱなんです。花束も一過性ですぐ枯れてしまうものなので、生き残っているこの子をモデルにしてみました。
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───技法としてはどのように制作されたんでしょうか。
Higuchi:これはシルクスクリーンで刷りました。版には網点(あみてん)という技法を使っています。CMYKに4色分解したうちの黒100%で刷ったのがこの作品です。他に一応シアン、マゼンタ、イエローがあるんですが、今回は黒1色で刷ってみました。4色重ねるとリアルな写真と同じように見えてきます。不思議ですよね。
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───アナログな技法でリアルなものがつくれるっていうのはすごいですね。
Higuchi:最近はリアルなものばっかり増えてきてるじゃないですか。今スマホの性能もめっちゃ良くなって、プロのカメラマンじゃないと違いがわからなかったりします。ピクセルを荒くすることで気づく良さがあると思っています。
───今回はシルクスクリーンのワークショップを用意してくださっています。改めてシルクスクリーンの魅力を教えてください。
Higuchi:製品だと絶対にズレや色の違いが許されないんですけど、自分でやる場合はそれが“味”だと言える。同じ版でも色の組み合わせ方や刷る人によって個性が出るのがシルクスクリーンの魅力だと思います。
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デザインとアートの間を考察する
───Higuchiさんはグラフィックデザイナーでもあり、今回の「Ephemeral」はアートとして制作されたと思うんですが、“アートとデザイン”この2軸に対してどういうスタンスで制作をされていますか?
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Higuchi:デザインの仕事だとお客さんの課題がデザインのゴールになるので、それはやらないといけないんですが、グラデーションで見たときにアート寄りで制作をやってもいい場合があるなと思っています。
わかりやすいのは自分の展示です。アートの展示だったら自由に自分の表現をグラフィックで活かせます。そういう意味でアートとデザインにはグラデーションがあるなと思っています。どっちかではなくて、今はここだなみたいな感じで。
───何かつくるときにこれはデザインだけどちょっとアート要素を足してみようとか、今回はがっつりアートにしてみようとか、そういうグラデーションがあるわけですか。
Higuchi:そうですね。例えば誰かの仕事を受けている場合だったら、考えて売れるものをつくらないといけないんですけど。自分の展示はお客さんもクライアントも自分なので、自由にやってしまったりします。デザインとしてはどうなのかなとは思いながら、でも面白いからやっちゃいます。
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───じだいのはざま展はデザインよりもアート寄りの展示だと思うんですが、今回参加を決めてくれたのはなぜですか?
Higuchi:同世代のいろんな作家さんたちがいろんなジャンルで活動されていて、でもみんな同じ時代に生きている。なので、話してみたり作品を見たりすればどこかしら共通点があったりしてインスピレーション受けるかなと思い、面白そうだと感じました。
───ありがとうございます。アートとデザインって2軸で分けられるものじゃなくて、 やっぱりどこか影響し合っている部分があってグラデーションなんですかね。
Higuchi:そうだと思います。元々あんまり分かれてはなかったと思うんですけど、モノを売るために職業が分かれていった結果、今いろんな名前の職業があるだけだと思っています。自分のことに関するものは自由にやっていきたいです。
インタビュアー:川口 由真
Hiroaki HiguchiさんのInstagramはこちら👇
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