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【政策⑬】消費税を上げると景気が良くなる?

 前回までの過程で、消費税の特徴についてお話してきました。

 私たちの一新循環では、一定の賃上げ後に消費税率引き上げを主張しています。これはなぜでしょう。

 消費税は1%の引き上げでおよそ2.5〜3兆円の税収を得られると言われています。私たちは、消費税率引き上げにより、①プライマリーバランスの黒字化と、②医療・介護・障害者福祉費の無償化を目指します。

①プライマリーバランスの黒字化とは何か?

 プライマリーバランスの黒字化とは、政府が必要な経費を税収だけで賄える状態です。

財務省ホームページより

 現在、政府は必要な経費を税金だけで賄えず、新規の国債発行で補っている状態です。2022年度のプライマリーバランスは13兆円の赤字です。

財務省ホームページより

 上図のように、プライマリーバランスが均衡化すると、必要な経費を税金のみで賄える=財政の持続可能性がある程度付く状態となります。(国債の利払い費があるので債務残高は増えます。)

 財務省の試算では、今のくらいの経済成長が続いた場合、2025年のプライマリーバランスの赤字幅は7.9兆円とされています。ただ、日本でも最近は円安により2%を超えるインフレが起きており、税収の上振れが予想され、実際はもう少し減るのではないかと考えています。

 やや楽観的かもしれませんが、消費税2%程度の引き上げで、プライマリーバランスの黒字化は達成できるのではないか。と私たちは考えています。

「不安」がもたらす数字だけではわからない影響

 みなさんも一度は、下のような日本の財政、借金のニュースを聞いたことがあると思います。

「日本の借金の総額が1200兆円を超えました。」「日本の借金の一人あたりの額は約1005万円です。」

 それに対し、そんなの自分たちには関係ない!それは政府の借金だろう!国はいくらでも国債を発行できるんだから問題ない!政府の借金は国民の資産だ!

 という意見もあります。

 しかし、そうは言ってもやはり、そのような内容を繰り返し聞かされていると、人間の消費行動や未来への認識は悲観的なものになってくると思います。

 国の財政が安定すれば、このような悲観的なニュースは減ります。

 逆説的なようですが、私たちは、国の安定的な財政運営こそが、国民に安心をもたらし、結果として一人ひとりの消費行動を活発にするのではないかと考えています。

 それでは、消費税率引き上げにより、他に何ができるでしょう?

 それは、医療・介護・障害者福祉の無料化です。

②社会保障関連費用の無償化

 2019年度で介護費総額は10兆7千億円、そのうち自己負担は1兆500億円程度です。医療費総額は44兆円、そのうち自己負担は約5兆円となっています。それに障害者福祉の無料化を合わせて、消費税の3%程度の引き上げで、これらの自己負担分を賄えるのではないかと考えています。

 つまり、プライマリーバランス黒字化と合わせて、約6%程度の消費税率引き上げにより、今よりはるかに持続可能な財政と社会保障が得られる可能性があるのです。

 私たちは、この「持続可能性」こそが最も大切だと考えています。戦後核家族が進み、今最も日本で多い世帯構成は一人世帯です。そして、このトレンドは今後も変わらないと言われています。

総務省人口統計調査より

 家族や、その周りの地域社会が私たちの構成主体だった時代は終わりました。

 上図のように、これからは個人一人ひとりが主体の時代になっていきます。

 そしてその社会は、一人ひとりが元気な間はそれでいいかもしれない。しかし、人間はいつか老い、病気になり、必ず周囲の支えが必要になります。

 そのとき、必要な医療や介護を受けられる保証、安心感を、私たちはどれ程実感として感じているでしょうか。

 日々増え続ける借金、老後に必要と言われる「二千万円問題」。周囲の支え手が減っていく中で、将来を不安に感じた人が、極力消費を減らし貯金をして、未来に備えるのは当たり前な行動だと思います。

 しかし、一人ひとりのその当たり前な、合理的な行動が、結果として日本全体の消費を減退させ、本来成長しているはずだった日本経済を今の水準に抑えてしまっているのではないか?と私たちは考えます。(合成の誤謬と言う問題ですね。)

 安心こそが消費に繋がる!明日のことを心配しなくても良い社会。

 一人ひとり、生活スタイルや考え方が異なり、多様な生き方が尊重される世の中では、国が、今までの家族や地域社会の役割を果たし、安心を提供する主体となる。そんな社会の実現を主張していきたいと思っています。

 いや、それは綺麗事だろう。これ以上負担が増えたらとてもじゃないが生活できない。というご意見もあるでしょう。次回、日本の税と社会保障の負担と受益について考えていきたいと思います。


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