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ランドセルから学ぶ商魂とコミュニケーション

少子化が言われ始めたのは1990年前半。
ランドセル業界にとって少子化は脅威となりますが、
小1人口減少しても市場規模を伸ばしてきました。

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画像:SankeiBizより

例えば、お客様が半分になったとしても、
今まで1万円で売っていたものを2万円で売れば売上げは同じ、
2万円以上で売れば、売上げは伸びる。
つまり、ランドセルを高額化したわけです。
(双子の我が家は大変でした)

少子化だけど、その分ひとりの子どもに使える予算が増えるし、
両親・両祖父母の計6人の財布(シックスポケット)があるから高額化できたともいえますが、やっぱり企業努力があってのこと。

小学生の子どもを持つ自分自身の顧客経験も振り返りながら、
商売として学べる点を考えていきたいと思います。

①新しい付加価値の創出

私が小さい頃(←昭和)はランドセルの色は基本赤と黒だけ。
ランドセルメーカーはそんな当たり前を打破しました。

登下校の小学生を見ていると、
昔ながらのスタンダードなランドセルの方が珍しく、
同じランドセルの子を探すのも難しいです。

ランドセルの多色展開が始まったのが2001年。
そこからデザイン性が高まり、
普通のランドセルから、かわいいカッコいいおしゃれなランドセルへ変換。
今では素敵なランドセルがいっぱい。

セイバンさんのような大手ランドセルメーカーと
土屋鞄さんのような工房系とのすみわけもできていて、
私だけの、僕だけのオリジナリティを出せたり、
20万円を超える超高級ランドセルまで、
多様なニーズに対応できるようなりました。

ランドセルは個々の好みで選んで買うという
新しいスタイルを定着させ、
少子化でもランドセル市場は見事活性しました。

②人を動かすWEBマーケティング

ランドセルの購入はラン活と言われ、昨今はイベント化しています。
ラン活という言葉が定着したのはおそらく2016年頃から。
どんどん購入時期は早まっていきます。

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画像:総務省の最新の家計調査(資料1)による通学カバンの購入時期の変遷、ヒューマンチャイルドケア総研HPより

安定した無駄のない生産をするために、早めにオーダーを受けたいというメーカーの思惑もありますが、気に入ったものを確実に手に入れたいという購入者の気持ちもあり、冬から夏へ、夏から春へと早まってきました。

「ランドセル」「ラン活」と検索するだけで、
ランドセルの買い方、選び方、商品レビュー…etc.
わんさかでてきます。
ランドセルメーカーや販売店からの発信だけでなく、
様々なメディアでラン活情報を発信、
購入予定者へ働きかけをしています。

検索して出てきた情報を見て、
早く買わなきゃと思った方も多いのではないでしょうか。
争奪戦にすることで、安売りする必要もなくなります。

③わかりやすいネーミングと訴求力

天使のはね、ふわりぃ、フィットちゃん、スゴ軽、スゴ光(スゴピカ)、スゴ強(スゴタフ)、マジかるベルト、安ピカ(あんピカ)、くるくるフィット、かるすぽ…

小林製薬の「熱さまシート」「のどぬーる」みたいに、
特に大手ランドセルメーカーに言えることですが、
ネーミングがわかりやすい。商品説明も非常にわかりやすい。

我が子とって一生に一度のお買い物。
購入前にいろいろ下調べをしてから店舗へ行くので
WEBサイトもパンフレットも各社様々な工夫を凝らして、
わかりやすさを追求しています。

逆に言うと、Search(検索)の時点で
見づらい、わかりづらい、必要な情報にたどり着けないなど
お客様にストレスを与えるようなWEBサイトは致命的です。

店舗で接客できる時間は限られています。
その時間をスペックの説明で終わらせてしまうことがないよう、
接客以前の顧客接点を丁寧に作り、顧客教育に努めています。

人を介さなくてもできることをしっかりしておけば、
応対者がお客様と接する時間を、
人でなければできないことに充てることができます。

④販売機会を最大限に活かす

お客様が商品を決めた後の、
アップセル、クロスセルがすごいです。
顧客の細かいニーズを見つけて、
プラスαの商品サービスをたくさん創っています。

ランドセルの蓋裏を柄にするオプション。
ランドセルと同じ素材で作ったリコーダー入れ(サイドポケット)。
教科書がずれないようにする底板。
ランドセルカバーなど、
ランドセルに付属するものが多々あります。

入学時に要するもの、
例えば、レインコート、防犯ブザー、文具、レッスンバックなど
同時に購入できるようにしたりしています。

ラーメン屋でいうと、
全部盛りにして、餃子と小どんぶをセットにして食べて、
ビールなんかも飲んじゃって、
店オリジナルの冷凍餃子と即席ラーメンを買って帰る感じ。

いいねと思って足していくと、結構な金額になります。

⑤売らない接客の徹底

我が家が購入した店舗でもアップセル、クロスセルはありました。
でも売られている感じではないし、嫌な感じもしない。
それはサービスポリシーの徹底とスタッフの技術だと思います。

スタッフの方はセールスパーソンとしてお客様と接しているわけでなく、
お客様のランドセル選び・購入のサポートをするコンシェルジュとして接しています。なので、営業・押し売りのようなことは一切しません。
ランドセルのプロとしてお客様のベストのために尽くしてくれます

お客様が大事にしていることを把握したり、
それに合わせて商品サービスの魅せ方を変えたり、
お客様が迷っているなら、判断材料になる情報を伝えたり、
親と子どもの意見の違いを上手くまとめてくれたり、
6年間安心して使えるよう、子どもが楽しく学校に通えるよう、
そのお客様だからこその細やかな配慮と判断がなされています。

売らない接客をされた顧客の一人として感想を申し上げると、
非常に納得度の高い買い物ができました。
あのオプションつけるべきだったかなぁとか、
このランドセルで本当に良かったかなぁみたいな
後悔みたいなことがありません。清々しく店を後にした記憶です。

親も子もそうゆう気持ちになれるのですから、さすがの接客技術。
良い買い物ができれば、お友達にもおすすめしたいと思うものです。

最後に

我が家が伺ったお店は100年以上の歴史がある老舗ランドセルメーカーの直営店です。問屋に卸して小売してもらう昔ながらのやり方を見直し、2014年に直営店を出店し始めました(現在11店舗)。直販/D2C(Direct to Consumer)の成功事例と言われており、直販だからこそできる顧客経験価値を提供されています。経営の考えが現場にきちんと浸透している素晴らしい企業と思いました。4代目社長の経営ストーリーも一読必須です。



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