無理なく生きるのに必要なこと
自分に無理なく生きるには、「あきらめる力」が必要だと思う。
あきらめること。やめると決めること。優先順位をつけること。完璧主義を手放すこと。
そもそも自分に無理をさせてしまう人はおそらく、真面目すぎるのだ。背負いすぎ、抱えすぎ、「百点じゃないと」と思いすぎ。
「無理しないでね」とか「もっと人に頼っていいんだよ」と言われたことがある人は、真面目すぎ予備軍か、もう真面目すぎて無理してる域に達していると自覚したほうが良いかも。
わたしは先日、お店づくりにおいて、開業までにやる予定だったいくつかのセルフリノベーションをあきらめることに決めた。
大きいところだと、床の張り替え。実はすでに物件入手時には新しい床が張ってあり、綺麗さは申し分ないのだが、もっと暗い色がいいなと思って、自分たちで張り替える予定だった。
しかし、何度計画を立てようとしても、自分の手で上手く張り替えるイメージが湧かない。イメージができないことは、たいてい上手くいかない。材料費もかなり高額だし時間も手間もかかるので、上手くいかなかったとして「仕方ないね!」と笑える感じではない。
……ということで、いったん、あきらめることに決めた。
あきらめると言っても、「またいつか資金が貯まったらプロにお願いしよう」と後回しにすることを決めただけ。「できない」ではなく「今はできない」という決断。
床の張り替えを含むいくつかのタスクをあきらめると、随分と開業準備の見通しが立つようになった。そもそも詰め込みすぎていたのだ。「ずっとつくり続ける未完成な場所」として開くつもりで始めたのに、いざ店づくりを始めたら欲が出て、オープンまでに百点を目指したくなっていたのだと思う。
「頑張らないと間に合わない」「休みを削ってでもやらなきゃ」と追い込まれていたことに気づく。知らぬ間に、自分に無理をさせようとしていた。
「あきらめる」というとネガティブなイメージがあるかもしれないけれど、語源はどうやら「明らむ」で、明らかにすることだそう。
大切なことを明らかにすること、そのためにやらないことを決めること。それが「あきらめる」なのかなと、わたしは思っている。
未来を明るくするために、やめることを決める。手放す。あきらめる。無理しがちな人(=わたし)に、とても大事なこと。
そもそもわたしにとって一番大切なのは「人生を味わい深くすること」で、お店づくりだってその手段なのだから、それによって自分に無理をさせていたら本末転倒なのだと、わかっていたはずなのにね。
一番大切なことって、大切なのに忘れがちで。だからたまに立ち止まって、思い出して。もっと肩の力を抜いて。楽しんでいこ。
おわり
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