喜んでもらうための「職人のこだわり」【カルムレザー・堀さんインタビュー】
じぶんジカン初のコラボ商品となる、レザーの文庫カバー。
「この職人さんと一緒にモノづくりしてみたい」という想いからスタートしたことは、こちらのnoteにも書きました。
せっかくなので、コラボを引き受けてくださったカルムレザーの堀さんに、今回の「じぶんジカンブックカバー」でこだわったポイントやそもそもどうして革職人になったのか、お聞きしてみました!
カルムレザー・堀さんって、どんな人?
会社員をしながら、革小物をつくる「カルムレザー」として活動している人。革小物をつくり始めてから、もう5年目だそうです。すごい。レクリエーション介護士として、毎週土曜日に介護施設でレザークラフトも教えてる心優しい青年。
5年間もカルムレザーを続けている理由
――どうして革小物をつくるようになったんですか?
大学生の頃、自分でつくってみたいと思ったのがきっかけです。
当時、レザーの名刺入れを持っている社会人の先輩を見て「かっこいい!」と思ったんですが、本革の名刺入れを買うお金はなくて…。それなら自分でつくろう、と。
――「自分でつくろう」という発想がすごいなぁ。
いやいや。でも、つくってみたらとても楽しくて。その後、つくった革小物を周りの人にプレゼントしたりするうちに、カルムレザーの活動につながっていきました。
――会社員になってからも、終業後や休日を使って革小物の制作を続けられるってのも、すごいことですよね。
誰かの喜んだ顔が見えるのが嬉しいから、続けられているんだと思います。
会社の仕事のフィードバックって、年に何回かのボーナスや営業成績でしかわからないし、それって僕個人の力だけじゃなくて、会社の看板があってこそなんですよね。
――なるほど。
でも、カルムレザーの活動は、ダイレクトにフィードバックが得られる。喜んでもらえたら嬉しいし、試行錯誤して結果につながれば自信になります。カルムレザーの革小物を手に取ってくださる方も年々増えているので、本当に嬉しい限りです!
こだわり1:国産の姫路レザーを使用
――今回の「ブックカバー」でこだわったポイントを教えてください。
大きく分けて3つのこだわりポイントがあります。1つ目が、姫路レザーを使ったこと。
姫路レザーは、高品質なのに比較的リーズナブルなのがポイントです。品質は維持しつつも、なるべく抑えた金額で、マツオカさんが届けたい人に届くといいなと思って。
それと、自分が大阪に住んでいるので、仕入れしに行きやすかったこともあります。自分が実際に見て「いいな」と感じた革を使いたいんです。
ちなみに、ただ単に安くしたいのなら、ノーブランドの革を使えば金額は抑えられるんですが、カルムレザーではノーブランドの革は使いません。格安の革は東南アジアでつくられていて品質が不安だったり、色ムラや傷があったりしますからね。
こだわり2:自分とともに変化していく加工方法
――こだわりのポイント、2つ目は?
2つ目は、革の加工の「なめし」の方法です。「皮」と「革」の違いは知ってますか?
――えー、なんだろ?「皮」と「革」の違い…。
牛の「皮」に「なめし」という加工をすることで、小物に使えるような「革」になるんです。なめす前が「皮」で、なめした後を「革」と呼びます。
その加工の方法に、大きく分けて「クロムなめし」と「タンニンなめし」、それと、その両方の良さををあわせ持つ「コンビなめし」という方法があります。今回のブックカバーでは「コンビなめし」を施した革を採用しています。
――コンビなめしの革を使った理由は?
手に取ってくれた方が末永く使用し、自分の色にそめていってほしいなと思って、それに最適な加工方法を選びました。
くわしく説明すると、まず「クロムなめし」は化学薬品を使う方法で、色ムラが少なく丈夫なのですが、一方で経年変化がしにくいのが欠点です。
「タンニンなめし」は、昔から使われている植物性のタンニンを使う方法で、革を長く使うほど味が出てくるなめし方です。
――ということは、「コンビなめし」は、その両方の良いところを活かした加工方法なんですね!
そうです!今回の「じぶんジカンブックカバー」では、近代製法の「クロムなめし」が持つ丈夫さと、昔ながらの「タンニンなめし」の味わい深さの両方を兼ね備えた革を使用しました。
まさに「自分とともに変化していく一生モノ」のブックカバーにふさわしい革だと思います!
こだわり3:手縫いでひとつひとつ丁寧に
――こだわりポイント、3つ目は?
ミシン縫いではなく、手縫いで仕上げていることです。
ミシン縫いは1カ所が切れると糸が抜けてしまうのですが、手縫いだと縫い方が異なるので、どこかが切れても全体に影響することがありません。
糸自体もミシン縫いとは違って、手縫いの場合はロウ引きの太い糸を使うので丈夫なんです。また、見た目もステッチが太くなって可愛らしいんですよ。
じぶんジカンブックカバー、特に工夫した点は?
――このブックカバーをつくるにあたって、特に工夫したところはありますか?
マツオカさんが考えたデザインを再現するにあたって、ボタンと曲線は、かなり考えました。
――今回は見ても触っても「やさしいデザイン」にしたくて、扉部分をカーブにしてもらったんですよね。
このカーブの部分、「幅はどれぐらいだと一番可愛いかな?」とか「バランスが良い曲がり具合は?」とか、かなり考えました。試行錯誤の結果、最高の曲線が描けたと思います!
扉部分に関しては、他にも、読んでいる時に↓こうやって扉部分を収納できるような工夫もしました。
――それと、ボタンも。「自分のための時間」を始めるスイッチをつくるために、あえてボタンと紐をつけて「開く動作」を加えたいとオーダーさせてもらって。
このボタンは、使いやすさが大事だなと思って。紐を巻きにくいのは困るけど、ボタンが出っ張りすぎてても不細工だし。紐の太さも、耐久性は保ちつつ、太すぎるとなぁ…とか。
――完成品を使ってみた時、試作よりもかなり使いやすいボタンと紐になっていて、本当に嬉しかったです!あと、革の厚みも考えてくださってましたよね。
そうそう、このブックカバーは1.3mmの革を使いました。実はカルムレザーでは、1.3mmの革はこれまで使っていなくて。
――えっ、じゃあ、今回のために新しく仕入れたんですか?(知らなかった)
はい!分厚すぎるとモサモサしちゃって気になるし、薄すぎるとペラペラで心もとないので…。経年変化で革がやわらかくなっていくことを見越して考えても、1.3mmがベストだと思いました。
――細部までこだわってくださって、本当にありがとうございます!
手に取ってくださる方々のことを考えて、かなり力を入れてつくりました。使い勝手も見た目も、間違いなく最高の作品に仕上がってます。
――わたしは皆さんより一足先に愛用してるんですが、使ってるだけでテンションが上がりますよ…!
良かったぁ。ありがとうございます!
――本当にいいものだから、「自分のための時間」を大切にする人に、使ってもらえたらいいなぁ。
そうですね!ご注文いただけたら、僕が丁寧に全力でつくりますので。お届けできるのが楽しみですね!