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パニックになったとき用意するのは、紙とペンと探偵気分。

ジストニアの人は刺激に弱いと言われています。少なくとも私は弱い。

スポーツ観戦も苦手。心臓がいつもと違う動きになることが、すごく嫌で。だからミステリーとも縁遠いです。(コナンくんとかアガサクリスティーの「ミスマープル」ならば楽しめるけれど)

そんな私が「十角館の殺人」を読みました。辻村深月さんのエッセイ「あなたの言葉を」で紹介されていたので。




●「十角館の殺人」


裏表紙には「世界が認めたJミステリー」というキャッチコピー。買って、読み始めて、さっそく後悔した。一人二人と犠牲者が出ていく展開に耐えられず、途中で読むのをやめようと思いました。

もう、無理。

だけど、だけど怖いもの見たさはどうしても残って……
読み進めてしまった。クライマックスに向かうにつれて、眼を見開き、小鼻を膨らませ、汗をかきながら。

最後まで読み切ると途端に緊張が緩んで、今度は胃が気持ち悪くなって、しばらく横になる始末。そうするうちに少し冷静になってきて、ふと気づきました。

あれ? 表紙に書いてあった「”あの1行”の衝撃」ってどのことだったんだろう?


●大事な1行を大事にできなかったわけ


インターネットで調べてみると、すぐに謎は解けました。私は、興奮のあまり、あろうことか作者の渾身の1行を読み飛ばしてしまったようです。読み飛ばしたというより、記憶には残ったし、展開が変わったことは分かりました。けれど、冷静に捉えられていたわけではありませんでした。

最初にこの1行を読んだとき、あまり意味が分かりませんでした。どういうことだ? どこか読み飛ばしたかな? 首を傾げる。犯人につながる1行であるにもかかわらず、私はすぐに犯人が分からなかったわけです。

ひとまずお風呂に入って夕飯を食べ、また食い入るように読み進める。そして遅ればせながら犯人がわかって息をのんだ、という流れ。だから最後まで読んでも、すべてが渾身の1行に思えて気付けなかったのです。


●平静でないときほど、紙とペンを


前置きが長くなりました。言いたいことは、「この小説、面白いからおすすめです!」ということではないんです。(もちろん、スリルが好きな方には前のめりでおすすめします!)

人は平静を失った時、多くのことを見逃してしまうということが言いたかった。私は完全に冷静さを失いながら読みました。でも、もし探偵のように登場人物の言動を紙に書き出して分析しながら読んでいたら。さすがに渾身の1行が出てきた時点で、犯人が分かったと思います。でも、何もメモを取らず、普通でない頭で読んだから見落としてしまった。

病気になると、そして家族が病気になると、なかなか冷静になれないものです。症状がつらくて、とにかく楽になりたい。そんな気持ちばかりが先に出て、今すぐ楽になれるなら、と目の前に出された治療に飛びついてしまうことがあります。それによって、より体調を崩す悪循環に陥ることも。かつての私が、まさにそうでした。

でも、皆さんにはそこで踏みとどまって欲しい。一度、探偵になった気分で紙とペンを用意して欲しい。

今の症状はいつから始まったのか。最初から今ほど悪かったのか。それとも、途中から悪くなったのか。もし途中からなら、症状が悪化する前に何かしたか。何かあったか。薬を飲んだ? 手術を受けた? 歯医者に行った? 予防接種を受けた? 採血をした? 点滴を受けた? ピアスの穴を開けた? ピアスの穴が化膿した? 頭や首を強打したり打撲した?

何かしていないでしょうか。何かあったでしょうか。


●冷静に紐解けば、きっと解決策は見えてくる


私は、病気の原因追及は推理小説と同じだと思っています。事件は、犯人が何かをしたから起きる。それと同じで、症状も何かをしたから、何かがあったから、起きることが多いです。

時系列で症状と出来事を並べていくと、もしかしたら見えてくることがあるかもしれません。すぐに過去を思い出せなくて、時系列が完成しなくても、大丈夫。無理に思い出す必要もありません。

でも、少しでも意識を過去に向けると、時間をかけながらある日ふと、思い出すことがあるかもしれない。それが今の問題を解決する何かしらのヒントになると思っています。

そうなりますように。

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