第6話 少年との出会いから、過去の記憶がよみがえる
手首に小物をつけると、なぜか症状が軽減する。
私の身体は、少量の重りによって、バランスが取れるようになるのだろうか。
それによって、症状が軽減するのだろうか……。
これが前回までのお話です。
第6話 少年との出会いから、過去の記憶がよみがえる
顎の治療を試すと、確かに改善がありました。
自力で立つことも難しい状態だったのに、立てるようになったのですから。声も出しやすくなる。
けれど、一定のところまで行くと、それ以上の改善は望めませんでした。
そこで次は、首のカイロプラクティックを試すことにしました。
顎の治療をきっかけに、私はカイロプラクティックに興味を持つようになりました。
カイロプラクティックでは、自然治癒力を大切にしています。
全身の骨格が整って神経伝達が良くなれば、心身は自然と治癒に向かっていくというのが基本理念。
試してみると、これも一定の成果がありました。
けれど、辛いことに変わりない。
私の身体の問題は骨格ではないのだろうか。
骨格を歪ませる原因が、他に何かあるのだろうか。
じわじわと、そんな疑問がよぎるようになりました。
*
それでも、家の周りを少し歩けるくらいにはなれていました。
徐々に、脳と身体との神経伝達がよくなっていたのかもしれません。
ただ、精神は不安定。
散歩は辺りが暗くなってから行くようにしていました。
2014年12月。
その日も夕方以降から、散歩へ。
そこへ突然、キックボードに乗った少年が飛び出してきたのです。
すごいスピードで私の前を横切るように。
驚いて、全身が硬直しました。
しかし問題はそれだけではありませんでした。
少年が乗っていたキックボードには、きらびやかな電飾がついていました。私は、暗がりの中でその光をまともに見てしまったのです。
その瞬間、頭が真っ白になって、思考が一瞬停止しました。
懐かしい感覚。
*
当時からさかのぼること8年前の2006年、12月。
私は、眼科で検査を受けました。
左目の視界に違和感を覚えたからです。
その時、眼底検査を受けました。
眼底を撮影して、眼球の奥を診るためのものです。
検査が始まりました。
するとピカっと強い光がたかれて、思考が一瞬停止しました。
そうして始まったのが、眼瞼けいれんでした。
私はこの8年間、何も変わっていなかったことを突きつけられました。
むしろ、悪化していた。
最初は瞼だけのジストニア症状だったのに、全身に広がってしまった。
顎や首の治療で、一定の改善はありました。
けれど、本質は変わっていなかった。
8年前も今もこれだけ光に反応するということは、私の問題は脳にあるんだ。
認めざるを得ませんでした。
*
何か脳に関することで、見落としていることはないだろうか。
うまく働かない頭で記憶をさかのぼりました。
視点を変えなければ。
過去までたどって根本に目を向けなければ。
そうでないと、どの治療を受けても結局また同じになってしまう。
思い当たることがあった。
後頭部を強打して、脳震盪を起こした記憶がよみがえってきました。
それは小学校に入るか入らないかくらいの頃だったと思います。
父親とプールに遊びに行って、プールサイドで走ってしまって、脚を滑らせ、思いっきり後頭部から倒れてしまったのです。
首の治療をしている場合ではない。
病院を変えないと。
でも、どこに行けば良いのだろう?
ふと、1件の治療院が頭に浮かびました。
(つづく)