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第5話 たまたま出会った健康グッズが、私を動かした

手術によって、全身性ジストニアになった。
なのに、私はそれ以降も同じことを繰り返した。
なぜそれほど手術にこだわったのか。
理由は、あまりにも不安だったから……。

これが前回までのお話です。




第5話 たまたま出会った健康グッズが、私を動かした


手術を繰り返す5年間に変化が訪れたのは、2011年。
叔父が、はめているブレスレットについて、話題にしたことがきっかけでした。
それはゴム製でできた、健康グッズ。
右か左、どちらかの手首にはめると、体のバランスがとれて疲れにくくなるというもの。
アスリートも愛用する人がいるのだとか。

「ひさこちゃんも、これをはめたら歩けるようになったりして!」

叔父は冗談を言いました。

私は、笑う表情を作るのも辛い状態だったけれど、何とか笑みを浮かべて、反応を示しました。

「つけてみるか?」

面倒だと思ったけれど、断るのも面倒で、試しにそれをはめさせてもらったのです。
すると、あれ、何だか少し楽になる。
もちろん、歩けたりはしないけれど、何だか楽。
これはいったい、どういうことなのだろう。
この健康グッズ、すごいかもしれない。

さっそく自分用に購入して、ここから半年ほどは、その効果に魅せられていました。
しかし、ふと、あるとき疑問に思ったのです。

本当にこのブレスレットが良いのだろうか、と。

そこで、腕時計やアクセサリーを手首にはめてみました。
すると、もっと楽になる。

当時は自力で歩くことが難しい、声が出ない、呼吸が苦しいといった状態。なのに、それらをつけると呼吸が楽になり、声だって少し出せるようになるのです。

もしや、あの健康グッズが良かったわけではないのかもしれない。

手首にかかる小物の重みが、良い働きをしてくれているのかもしれない。

さらに実験をしていて、気づいたことがあります。
それは、小物をしばらく付けつづけてから外すと、脳がバランスを失って迷っているような感覚があるということ。

もしかして私の身体の問題は、バランスを失っていることなのだろうか。

小物が、足りないバランスを補ってくれているのだろうか。

小物でバランスを取り戻すと、症状を出す必要がなくなるのだろうか。

全身のバランスを整えれば、私は回復していけるのだろうか……。

新たな希望が生まれてきた。

こうして少しずつ少しずつ、瞼で身体のバランスを整える意識から、全身で身体のバランスを整える意識へと変わっていったのでした。

(つづく)

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