【トップ10+α】農業業界で売上が高い企業をざっくり紹介
農業を産業として見たときの一番の魅力といえば、業界全体がとても広く、関連する業界もとても多いことだと思います。
今回は、そんな農業業界で2021~2022年にかけて売上が高かった上位10社を紹介し、農業業界ではどんなことをする企業が強いのかまとめます。
※順位は下記サイトを参考にしています。
https://gyokai-search.com/4-agriculture-uriage.html
ちなみに過去に農業センサスについてまとめた記事はこちらです。
先にまとめです。
早速1~10位を発表
ここから1~10位までを発表しますが、2点補足があります。
上場企業のみを対象としています。(この記事の後半で触れます)
農薬業界、農業機械、食品専門商社は含まれていません。(この記事の後半で触れます)
サカタのタネ:730億円
農業業界の売上第1位は種苗会社のサカタのタネです。
去年は初の営業利益100億円を突破し、今年も増収増益を見込んでいます。
種苗業界全体の国内市場規模が2600億円、世界市場規模が90億ドルと言われているので国内では約28%のシェアを獲得しています。
実はこの会社は今年で創業110年(1913年創業)を迎える長寿企業で、ブロッコリー、大玉トマト、ほうれん草、スイートコーン、トルコギキョウ、パンジーなど多くの野菜や花のタネで国内ナンバーワンのシェアを誇っています。
(ちなみに業界3位のタキイ種苗は1835年創業でさらに長寿)
また、海外シェアで見てみてもブロッコリーで65%、トルコギキョウで75%と高いシェアを獲得している品目もあり、海外市場を積極的に開拓していることでも有名です。
(サカタのタネは野菜では40品目400品種、花は100品目1500品種を扱っています)
売上高の約7割は海外で、売上全体のうち日本を除くアジアが約18%、米国が約15%、欧州・中近東が約20%、北中米が約8%となっています。
種苗業界自体もコロナの影響をさほど受けず堅調に安定した業績で推移しているようです。
人口増大による食糧不足が懸念されていますが、業界にとっては追い風として働いているようです。
ホクト:709億円
第2位はキノコのCMでお馴染みのホクトです。
ホクトは元々、包装資材を扱う会社(デラップス商事)として1964年に設立されましたが、その後キノコ栽培用の資材を扱うようになり、1983年には自社でのキノコ栽培を始めます。
1994年に日本証券業協会に株式を店頭登録、1999年に東証一部(現プライム)に指定され、今に至ります。
国内・海外でキノコを製造・販売を行うほか、キノコを使った健康食品などの開発・販売を行う「加工品事業」、キノコ栽培用資材の製造・販売を行う「化成品事業」を行なっています。
品目別の国内でのシェアはエリンギが約50%、ブナシメジが約39%、マイタケが約26%を占めています。
海外拠点はアメリカ、台湾、マレーシアにあり、国内市場が縮小する中で積極的な海外への進出を進めています。
カネコ種苗:606億円
第3位は種苗業界にてサカタのタネに次ぐシェアを持つカネコ種苗です。
カネコ種苗は種苗会社でありながら、それ以外の関連事業も充実しており、2019年5月期の売上構成としては「農材事業」が約46%、「施設材事業」が約25%、「花き事業」が約15%、「種苗事業」が約14%となっています。
花き事業に花の種子も含まれているため種苗事業と足すことで約29%となります。
こちらも海外にも拠点を持っており、フィリピン、トルコ、タイに事業者があるようです。
アクシーズ:217億円
第4位は鹿児島市に本社を置き、ブロイラーの飼育生産、鶏肉及び鶏肉加工食品の製造・販売を行うアクシーズです。
ここまで海外に拠点を持つ会社が続きましたが、アクシーズは輸出こそしていますが、事業所は日本のみに展開をしている会社となります。
またチキンつながりでケンタッキーのフランチャイズ店舗の運営も行なっているようです。
カゴメ:95億円(農事業(国内))
第5位は野菜ジュースやトマトケチャップでお馴染みのカゴメです。
ただ「飲料事業」や「食品事業」は含まず、総売上高の約5%を占める「農事業(国内)」のみの売上で換算しています。
カゴメが農事業として行っているのは、トマトやベビーリーフの栽培、家庭菜園用資材の販売などです。
高リコピントマトも作っており、「凛々子」という品種に関してはカゴメのオリジナル品種のようです。
トマトケチャップの国内シェアが約60%、トマトジュースの国内シェアが約56%なのでトマトを作るだけでも相当な売上になるのかもしれません。
秋川牧園:66億円
第6位は無農薬や有機農法で栽培された農産物の卸売や個人への直販を行う秋川牧園です。
活動としては販売以外にも提携農家への技術指導・飼料供給や研究開発、食品加工も行っています。
1932年に中国で農園を始めた当時から有機農業を行っており、有機農産物の販売という意味では老舗にあたる会社ではないでしょうか。
昨年は国内での創業50周年ということで本も出版しているようです。
ベルグアース:53億円
第7位は野菜苗の生産販売を主に行うベルグアースです。
日本で一番野菜苗を販売している会社で売上の約96%が野菜苗の生産販売で年間約3000万本を生産しているようで減農薬の苗や低コストで大量輸送が可能なヌードメイク苗など独自の商品を次々と生み出しているようです。
苗生産という農業の中では川上にあたる事業をメインで行っている会社がトップ10にランクインするのはすごいことだなと思います。
農業総合研究所:47億円
第8位は全国のスーパーマーケットにインショップを設置し農産物の販売事業をおこなっている農業総合研究所です。
お堅い名前ですが設立は2007年で今回ランクインした中だと一番若い会社となります。
2021年には富山中央青果を関連子会社化しました。
上場企業と公設卸売市場の卸売会社との資本提携は初めてで、業績が芳しくない市場の卸売業者との業務提携でどのように卸売市場が変わっていくのかが注目されています。
大田花き:39億円
第9位は東京の大田市場で花卉を扱う大田花きです。
公設卸売市場の卸売会社で上場をしているところは少ないのですが大田花きは上場企業です。
花卉業界というのはセリをWEB上でおこなうなど青果業界と比べてデジタル化が進んでいますが、花の購入率自体はここ15年ほどで30%ほど低下しています。
ホーブ:26億円
第10位はイチゴの苗を生産・販売そしてイチゴ自体の販売もしているホーブです。
イチゴといえば冬〜春にかけて消費されることが多い果物(野菜)ですが、四季成りイチゴと呼ばれる夏や秋にも収穫が可能なオリジナル品種を扱い外国産が多かった夏の業務用イチゴの国産化を進めています。
イチゴの苗生産に使われる組織培養技術を活かし、ジャガイモの生産やアスパラガス、食用ユリの苗生産も行なっています。
ランク外の農業関連企業
ここまで10位までの企業を見てきました。
自分で書いておいてあれですが、一言に農業と言ってもこれだけ分野が幅広い中で単純比較はあまり意味ないような気がします。
それでは様々な事情で上記の順位に入らなかった農業関連の有名企業をサクサク見ていきます。
農業機械
クボタ:1兆8,648億円(機械事業)
ヤンマーHD:5,125億円(産業用機械部門)
農業機械は農業業界とは区別されているため今回はランク外です。
両社とも売上高の半分以上を海外が占めています。
農薬業界
住友化学:4,737億円
クミアイ化学工業:891億円
日本農薬:768億円
こちらも業界として農業業界とは区別されていたためランク外です。
住友化学は化学業界でも第二位の総合化学メーカーです。
クミアイ化学工業、日本農薬は農薬専業メーカーです。
中央市場青果卸会社
東京青果:2,286億円
大果大阪:1,178億円
セントライ青果:888億円
中央市場の卸売会社で上場している企業は少ないのでランク外となりました。
その他有名企業
生協:3兆922億円
オイシックス:1135億円
丸紅:4兆900億円(アグリ事業部)
村上農園:93億円
デリカフーズHD:397億円
植物工場:国内市場規模が281億円
代替肉:国内市場規模が346億円
村上農園は豆苗やスプラウトを生産・販売する企業です。
デリカフーズは青果卸流通の上場企業ですが専門商社扱いとなるためランク外です。
植物工場や代替肉は市場規模自体がまだ大きくないので個別の企業の名前は出しませんでした。
ビビッドガーデン(食べチョク)の売上高は公表されていなかったので載せていません。
世界ランキング
ついでに世界ランキングも少しだけ見てみます。
農機業界
ディア・アンド・カンパニー(アメリカ):3兆9,200億円
シーエヌエイチ・インダストリアル(イギリス):2兆8,700億円
クボタ(日本):1兆8,648億円
ヤンマーHDは5位に入っています。
種苗業界
バイエル(ドイツ):1兆2,337億円
コルテバ(アメリカ):9,709億円
シンジェンタ(スイス):4,088億円
こちらの売上額は推定になります。バイエルは米国のモンサントを買収しています。他の2社も買収を経験しています。サカタのタネは8位に入っています。
農薬業界
シンジェンタ(スイス):1兆7,117億円
バイエル(ドイツ):1兆5,610億円
コルテバ(アメリカ):9,258億円
こちらの売上額も推定になります。先ほどと顔ぶれが変わっていません。
住友化学は7位に入っています。
最後に
今回は農業業界の企業の売上高を見てきました。
国内企業のランキングを見ると、海外進出をしている企業が強く、海外売上比率の方が高い企業も少なくありません。
反対に、縮小していく国内市場がメインターゲットの企業はこれから海外進出を積極的にしていかないと厳しいと言えそうです。そういった意味では足の短い青果を扱う企業は岐路に立たされているのかもしれません。
また、種苗、農薬、農業機械はこれからも需要が伸びていく業界であり、特に種苗や農薬業界の海外企業は合併を経て再編成が進んでいますが、日本の企業も検討しています。
こうした企業はこれから更に海外売上比率を伸ばしていくことが予想されます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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