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「国籍」に関して提言を行いました!



2024年10月17日、ジュネーブの国連事務所にて、女性差別撤廃委員会(CEDAW)による女性差別撤廃条約の実施状況に関する第9回日本政府報告書審査が開催されます。

前回の第7回・8回審査は2016年2月に行われ、今回の審査は実に8年ぶりのことです。

それに基づき、移民連がNGOレポートを提出しました。
そして、JFCネットワークは「国籍」についてのレポートを担当しました!

提出されたNGOレポートはこちらからご覧になれます⇩

国籍とは?

そもそも国籍とは何なのでしょうか?
国籍とは、人が特定の国の構成員であるための資格のことです。(法務省:国籍Q&A (moj.go.jp))つまり、「ある国の国民である」ということを示すものになります。
日本では、国籍法において日本国籍の取得及び喪失の原因が定めてられています。

多くの人が当たり前のように享受しているものも、国籍をもたない人(無国籍者)と呼ばれる人々にとっては、手に入れることさえ困難であるという現状があります。例えば、パスポートの取得や、年金などの社会保障制度の利用は、国籍がない場合には行うことができません。

以前、JFCネットワークでも「国籍とはなんだろう」の記事で国籍に関わる事例を紹介しました⇩

求める勧告案(国籍)

それでは、今回提出した勧告案を紹介します!
以下の4点です。

1. 民法786条が規定する出訴期間制限により、事実に反することを理由とする認知 無効の訴えを提起することができなくなった子については、すでに与えられた日本国籍を剥奪しないものとするべきである。

2. 日本国内で出生した無国籍の子について、生来的に日本国籍を取得する範囲を拡大するべきである。

3. 無国籍を認定する制度及び日本国内で出生した無国籍の子の国籍取得の手続を整備するべきである。

4. 無国籍の防止削減及び無国籍者保護のため、並びに上記1〜3の施策の実現のため、1961年無国籍削減条約及び1954年無国籍者地位条約に加入すべきである。


1. 民法786条が規定する出訴期間制限により、事実に反することを理由とする認知 無効の訴えを提起することができなくなった子については、すでに与えられた日本国籍を剥奪しないものとするべきである。


子の認知について規定されている民法786条では、「婚姻関係のない男女間で生まれた子ども(非嫡出子)を保護するために、認知から一定期間が経過した後には、父子間に血のつながりがないことを理由に認知が無効であるとする訴えを提起することはできない」と規定されています。

認知:法律上婚姻関係のない男女の間に生まれた子どもを、親が戸籍法の手続きによって自分の子どもとすること。認知されると非嫡出子となる。
非嫡出子:婚姻関係のない男女の間に生まれた子ども。

その一方、2024年4月に施行された国籍法3条3項は、「認知が事実に反する時は、子は日本国籍を取得しない」と規定しています。これは、認知後何十年経った後であっても、認知が事実に反することを理由に日本国籍を取得時に遡って喪失させ、子どもが日本国内に在住する場合は非正規在留外国人として扱うものです。

しかし、この扱いは子どもを著しく不安定な状況に陥れる上に、子どもの最善の利益に反しています。子どもは「事実に反する認知」がなされたことについてなにも責任もなく、このような重大な不利益を課す合理的根拠はありません。

そのため、国籍法3条3項を廃止し、認知無効を主張し得なくなった子どもについては、すでに取得した日本国籍も喪失しないものとするべきです。

以前、JFCネットワークは国籍法3条3項に反対する意見書を提出しました⇩


2. 日本国内で出生した無国籍の子について、生来的に日本国籍を取得する範囲を拡 大するべきである。


国籍法2条3号は、「日本で生まれた子どもの父母がともに知れないとき又は国籍を有しないときは、子は日本国籍を取得する」を規定しています。しかしながら、「父母がともに知れないとき」の解釈 は曖昧であり、かつ「国籍を有しない」の定義も国内法に存在していません。また、父系血統主義などにより、父母は判明しているものの、その本国法によると子どもが父母の国籍を取得しえない場合には出生時 に日本国籍を取得できないなど、適用範囲も狭くなってしまっています。

父系(母系)血統主義:その国の国籍を有する父(母)の子として生まれた子にその国の国籍を与える。
出生地主義:親の国籍を問わず出生した場所が自国内であれば国籍を付与する。

さらに、国籍法8条4号の簡易帰化(一定の条件を満たせば、通常の帰化よりも居住要件等が緩和される帰化)に関しても適法在留であることが要求され、かつ法務大臣の裁量に委ねられています。

無国籍であるという状況は保護の必要性を十分有するため、親の国籍を承継しない子どもの日本国籍取得の範囲を拡大するべきです。


3. 無国籍を認定する制度及び日本国内で出生した無国籍の子の国籍取得の手続を整備するべきである。


日本には無国籍者を認定する制度が存在せず、その判断は場当たり的であることが少なくなく、いずれかの国籍を有するのに在留カードに無国籍と記載される、またはその逆の場面も見られます。

ちなみに、無国籍認定手続を設けている国は少なくとも27ヵ国あります。(2021年10月時点)

また、国籍法2条3号に該当する子どもの日本国籍を確認する制度も存在せず、各自 「就籍申立」という裁判手続を行う必要があり、精神的にも経済的にも負担が大きく、そ の結果無国籍のままで保護を与えられずに放置される子が発生しています。

したがって、無国籍を認定する制度及び無国籍児の日本国籍を確認する制度を設けるべきです。

国籍法2条3号
日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないときには、その子どもは日本国民とする。

就籍申立:日本国籍はあるが、戸籍がない者について戸籍を作る手続きを行うこと。

ここで、戸籍と国籍の違いについて触れておきます!

国籍とは、冒頭にも述べたように「ある国の国民である」ことを示すものです。一方で、戸籍とは、出生・結婚・死亡といった事実を身分関係として登録し、公に証明する制度です。つまり、戸籍というのは「日本国籍であるということの証明書」のようなものになります。

⁅参考文献⁆
無戸籍の方に関する手続 | 裁判所 (courts.go.jp)

「国籍」と「戸籍」の違いとは?分かりやすく解釈 | 意味解説辞典 (meaning-dictionary.com)


4. 無国籍の防止削減及び無国籍者保護のため、並びに上記1〜3の施策の実現のため、1961年無国籍削減条約及び1954年無国籍者地位条約に加入すべきである。


日本で無国籍の防止削減及び無国籍者の保護に関する施策の整備が進まないのは、無国籍者の取扱いは国内管轄問題であるとの誤った認識から生じているものです。

したがって、無国籍の防止削減及び無国籍者の保護が日本において実効性を持って実施されるように、無国籍削減条約及び無国籍者地位条約に加入すべきです。

無国籍に関する条約とは?

第一次世界大戦・第二次世界大戦を経て、国連は「無国籍者の地位に関する1954年条約」「無国籍の削減に関する1961年条約」を採択しました。

1954年の「無国籍者の地位に関する条約」では、無国籍者には最低限の法的地位が与えられるものと規定され 、1961年の「無国籍の削減に関する条約」では、国内法の整備によって無国籍の発生を防止するための原則や法的枠組みについて規定されています。

2022年10月時点で、1954年条約には 96カ国、1961年条約には78カ国が締約国になっています。

1954年無国籍者の地位に関する条約(日本語)
https://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/2021/08/1954-Conv-rel-Status-of-Stateless-Persons-rev-JP-prov-Tr-201811.pdf
1961年無国籍の削減に関する条約(日本語)
https://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/2021/08/1961-Convention-on-the-Reduction-of-Statelessness-rev-JP-provisional-translation-201811.pdf

⁅参考文献⁆
「無国籍の削減に関する1961年条約」:国籍への権利を守り、推進し続けて60年 – UNHCR Japan

https://iminseisaku.org/top/conference/120519_fu.pdf

無国籍者保護ハンドブック 第4第5ガイドライン 無国籍条約 邦訳.pdf (unhcr.org)


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