書店であった嘘のような本当の話⑦14キロやせました!
私が書店員だった約15年間、いくつかのチェーンで働きましたが、担当を持ったのはほとんどが実用書でした。
デパート内にある、比較的大手の書店チェーンで契約社員として働き始めたのが14年前、2008年の春。それ以前に勤めていた書店で実用書の担当をしていたと入社時に話すと、それならと実用書担当になりました。
実用書って、発売も多いし入荷数も決して少なくない分野です。
特に大きな店舗になればなるほど入荷数が多いため、商品の入れ替えがめまぐるしく、取捨選択もシビアにやらなければなりません。機動力、臨機応変さが求められイケイケで動かないといけない担当です。雑誌やコミックもそれに近いでしょうか。逆に人文書などはゆっくりじっくり売っていくイメージです。
細く長く売れる良書もありますが、新刊で10冊入荷したものをひと月、あるいは3週間ほどで、売れなければ見切りをつけて思い切って外さなくてはなりません。新刊は日曜祝日以外は基本毎日入荷があり、当然売り場は限られています。極端な話、昨日入荷した新刊を外して、今日入って来た絶対売れそうなものを多面展開することもあります。棚は新しいものや売れているものに変えて新陳代謝を良くし、担当者として売り上げをとって行かなくては社内で評価されません。
そして、実用書あるあるなのが「二番煎じ以降が多発する」現象。すみません、言葉が悪いですが失礼を承知で。
特に家庭医学、健康に関する書籍に多い傾向かと思います。ここ何年も、テレビに出たり著書をたくさん出すお医者様が増えましたよね。
私はついユーモア精神で、
「長生きしたけりゃ肉は食べるな」(若杉 友子著)と、
「肉を食べる人は長生きする」(柴田 博著)を左右隣り合わせに平積みしたことがあります……。
パートさんに「お客さん、どっちやねん!ってなりますやん」とつっこまれはしましたが、そこはご自身で選んでいただきたいかなと。あなたはどっち?意思をもって棚をつくり、こんな発信をするのも書店員の醍醐味でした。
余談ですが、どこかの書店で
「震える牛」(相場 英雄著)と
「勝手にふるえてろ」(綿矢 りさ著)
を並べていたという情報を目にしたことが。その棚をつくった担当の人とお話してみたいと思いました。
ダイエットにも流行りがあると感じますが、私がその大手書店にいた頃に出て爆発的に売れたのが「糖質オフ」のシリーズでした。
出版社の営業さんはアポなしで来る方も多く、日によっては「仕事にならん!」というほど次から次へと営業さんにつかまる日があります。
出版社さんは土日祝日はお休み、書店員は基本平日休みが多いのです。しかも、そのデパート内の書店勤務の時は土日祝日がものすごく混むので、休み希望など恐ろしくて出せませんでした。もう、子どもの運動会とか、友達の結婚式ぐらいです。大きな顔して休みたいと言えるのは……。
そんなわけで、営業さんが会いたい書店員に会って商談をするのは至難の業だと思います。タイミングが悪いと「今休憩出ちゃいました」とかね……。
その日は発売されたばかりの糖質オフの本について展開強化のお話をしていたと記憶しています。
売り場の、その本の平積みの前で出版社の担当S田さんが言いました。
「僕これ実際やったんですよ、糖質オフ!上(上司)からお前実践してみろって。
14キロやせました!」
S田さんがそのひとことを放った瞬間、すぐ後ろで立ち読みしていた女性のお客様が、
ばっ‼
と、すごい勢いでこちらを振り向きました。
14キロやせた、はさすがに注目したいところです。誰もが思わず振り向いて確認するでしょう。が……
ふだん100キロ超えのS田さんがやせたようには見えず、
「ごめん、どこがやせたの……?」
と言ってしまいました。
今も糖質オフ関連は、いったいどれが本家だったのかわからないほどいろいろ派生して売れ続けていますが、糖質オフと聞くたびにS田さんを思い出します。リバウンドされてないといいのですが。
人のことを言っている場合ではありません。
私もそのぐらいやせなくちゃ!
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