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シケモク亭 灰皿。
2021年9月29日 17:38
月明かりに照らされたその眼は深い藍色だった。ちょうど太平洋のような青だった。彼女は青色が好きだった。「青は落ち着くじゃない。」そういってサファイアのような色をした財布を取り出してコーヒーを買った。彼女はよく海を見に出かけていた。「空も海も青。視界が全部青。」そう言って彼女はターコイズのような色をした携帯を取り出して写真を撮っていた。彼女はよく絵を描いていた。「夜空を
2021年9月24日 16:26
「夏も中盤に差し掛かってきたことだし、せっかくの飲み会だ。まぁ、俺が怖い話をしてやろう。」「あれは5年前、まだ高校生だった頃の話だ。中学からの友達3人と夏休みに地元で有名な心霊スポットに行ったんだ。田んぼ道を抜けた先に山を抜けるための小さなトンネルがあってね。事故で死んだ女の霊がでるとか、天上から逆さまのおっさんが急に現れるとか色々噂はあったけど、掘るだけ掘られて使われてない場所だったからみんな
2021年9月6日 19:03
学生時代の同級生に嘘ばかりつくやつがいた。名前は新井輝。輝きと書いて『てる』と読む男だ。自己紹介から嘘をつくような奴だ。 「はじめまして新井輝です。てる君って呼ばれてました。犬を飼っています。セントバーナードです。」犬好きの俺は休み時間に彼に話しかけた。犬なんて飼っていなかった。彼曰く、犬好きで犬種まで言った後話しかけてくるような奴に悪い奴はいないのだそう。俺は映画の悪役が飼ってるピットブ
2021年8月22日 01:11
「ただいまー」 ソファにどっしりと腰掛ける”それ”にかけた言葉はおかえりの代わりに部屋に吸い込まれた。木製の”それ”は今朝そうしたように首を玄関に向けていた。 目のないそれの視線を背中に受けながら手を洗った。風呂場に入り、風呂のお湯を溜め始めた。部屋へ向かう途中の冷蔵庫から瓶のジンジャエールを取り出し栓を抜いて、”それ”の前にあるテーブルに置いた。スーツを脱いでジャケットとパンツをハンガー