GUNJO
月明かりに照らされたその眼は深い藍色だった。ちょうど太平洋のような青だった。
彼女は青色が好きだった。
「青は落ち着くじゃない。」
そういってサファイアのような色をした財布を取り出してコーヒーを買った。
彼女はよく海を見に出かけていた。
「空も海も青。視界が全部青。」
そう言って彼女はターコイズのような色をした携帯を取り出して写真を撮っていた。
彼女はよく絵を描いていた。
「夜空を書くのは楽しいよ。大好きな青で一面を染められるから。」
そう言って彼女はタンザナイトのような色をした絵具をキャンバスに塗り広げた。
初めて買った車も、お気に入りの時計の文字盤もなんでも青を選んでいた。
子供の名前も蒼だった。
ぶつけた膝も青だった。
冷たくなっていったその唇も青だった。
彼女は青が好きだった。
群青日和、青いパンツ、青いソファ、青い屋根、青い目、
最後に彼女が見たがった今鏡に映る僕の目はアクアマリンのような青だ。
彼女の月明かりに照らされたその眼は深い藍色だった。
ちょうど太平洋のような青だった。