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マーサ・スチュワートという生き方(彼女から学ぶこと)
ネットフリックスで、『マーサ(Martha)』を観た。
アメリカ人なら誰もが知るカリスマ主婦であり、実業家のマーサ・スチュワート(Martha Stewart)の人生を、本人や関係者のインタビューを通して描いたドキュメンタリー映画だ。
これが実に面白かった。
私がアメリカに住んでいた1990年代後半から2000年代前半にかけて、マーサ・スチュワートはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。雑誌、TV、ショッピングモールの日用品売り場まで、彼女の顔や名前が溢れていた(確か日本でも西友とライセンス契約を結んでいた記憶がある。)
一方で、タブロイド紙には従業員へのパワハラや気難しさが取り沙汰され、"氷の女帝"というイメージもあった。
実際映画をみても、その印象は大きく変わらなかった。マーサ自身も自らを完璧主義者(perfectionist)と認め、従業員にきつい指示を出し、撮影クルーやインタビュアーに対してもズケズケと指図していた。
そして、気難しくて傲慢だ。自分の批判記事を書いていた記者について触れ、「あの人死んでくれて良かったわ」とあけすけと言ってしまう。
でも、彼女の生い立ちや経歴をみると、やっぱりこうなるよね、と納得する。
いわゆる成り上がり者だ。マーサは中流階級の家庭に生まれ、6人兄弟の中で育った。家計を支えるため、若い頃からその美貌を活かし、モデルのバイトをしていたそうだ。頭がよく、奨学金で名門大学に進学、その時に将来の夫と出会い、そのつてで株のブローカーとなり、その後富裕層向けのケータリングビジネスを立ち上げた。
そこから料理本の出版やライフスタイル全般を提案する”マーサ帝国”を築き上げた。自力でビリオネアになった初の女性とも言われている。
もちろん、順風満帆の人生なんて存在しない。
離婚や恋人からの裏切りなど、映画では、恨み言を吐くなど女性としての一面もみせている。
でも、一番の挫折はなんといっても、インサイダー取引に絡む偽証罪で起訴され、2004年に有罪判決を受けたことだろう。5ヵ月間の刑務所生活を送ったが、その期間も、持ち前のリーダーシップを発揮し、受刑者たちからも慕われる存在になったという。
タダで転ぶ人ではない。
日本にいるからか、最近マーサをみていないな、と思っていたら、ケーブルTVには定期的にでていたようだ。アメリカの有名ラッパー、スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)とバラエティー番組で司会を務めたり、数年前にはポッドキャストを始めたりと常に何かに挑戦している。
そして2023年、81歳という年齢で『スポーツ・イラストレーテッド(Sports Illustrated)』の表紙を飾った水着姿は大きな話題となった。
マーサは、とにかく気持ちが若い。バイタリティの塊だ。
最初は、冷徹で孤独な人だな、と思ったけど、それ以上に挫折を乗り越えていくたくましい人、新しい発想でチャンスをつかむ人、と映画を見終わってイメージが若干ポジティブに変わった(私もかなり単純ですよね)。
彼女のモットーは次の2つだという。
“Learn something new every day.” (毎日何か新しいことを学べ)
“If you’re through changing, you’re through.” (変化をやめるなら、それは終わりを意味する)
彼女のこうしたスピリットは、私も見習っていきたい。
*写真はWikipediaから転載