トランプ就任式から"ある経営者"を観察してみると..
今週初めに、ドナルド・トランプ新大統領の就任式が開かれた。
大統領が宣誓するひな壇上には、選挙期間中ずっとトランプを支援してきたテスラのイーロン・マスク、そしてグーグルのCEOなどハイテク大手トップの姿も見られた。
一瞬、えっ?と思ったのは、トランプ大統領がスピーチした時。
彼は就任演説でこう宣言したのだ。
<本日から米政府の公式方針として、性別は男性と女性の2つのみとする>
As of today, it will henceforth be the official policy of the United States government that there are only two genders, male and female.
トランプは就任後すぐに、バイデン政権が掲げたLGBTQ(性的マイノリティ)の平等推進施策などを撤回した。なので、この発言自体は不思議ではない。
ただ、えっ?と思ったのは、檀上の経営者の中に、アップルのCEOティム・クック(Tim Cook)がいたからだ。
クックは自身がゲイであることを公言している。
彼はそのスピーチを聞いて、何を思っただろう。
と言っても、彼自身はここ何年間かトランプとディナーやミーティングを通じて親交を温めていたらしい。
就任式にも個人で100万ドル(約1億5,000万円)を寄付したとされている。ビジネス上の思惑があるにせよ、偏見の塊ともいえるトランプ氏を嫌ってはいないのではないか。
米メディアによると、クックは元々、民主党支持者だったが、トランプ政権1期目から大統領に連絡していたらしい。アメリカの工場で生産された新型Mac Proをプレゼントするなど、なかなかの策士だ。
トランプもクックのことを「素晴らしい経営者だ、他の人は連絡してこないのに、彼は連絡してくる」と称賛したそうだ。
ティム・クックに関しては、私は以前から関心を持っていた、笑。
彼は2011年に闘病中だった創業者スティーブ・ジョブズの後任としてCEOに就任したのだが、素人的発想でみても、あのカリスマ経営者の後任は大変だろうな、と思ったものだ。
蓋を開けてみれば、アップルの時価総額は上昇し続け、3兆ドル(約460兆円)を超えていた。オペレーション業務を効率化し、その経営者としての手腕は高く評価されている。
Wikipediaによると、ワーカホリックで、毎朝4時半に部下にメールを送り、次週に向けて日曜の夜にスタッフミーティングをしたこともあるそうだ。
一方で、ジョブズが闘病中、肝臓移植が必要になった際には、血液型が適合したクックは肝臓の提供を申し出るなど、情が深い。ジョブズは、絶対に君にそんなことはさせないー"I'll never let you do that. I'll never do that.” と固辞したそうだが。
スティーブ・ジョブズやトランプ大統領などアクが強いとされる人たちと関係を構築できるというのは、菩薩なのか、もしくはかなり変わり者なのか。いや、優れた経営者であり、人としての魅力もあるのだろう。
クックは人権の平等とLGBTQの権利を推進しているだけでなく、サステナビリティを意識した企業の環境への取り組みも推進している。
それらの概念と逆行しているかのようなトランプ政権の下、どのような立ち振る舞いをみせてくれるのか、今後もアップルのCEOに注目したい。
(サムネ写真はWikipediaより転用、トランプ大統領と談笑するクック氏、時期は不明)