愛国心について問う 愛国者学園物語177
西田が今日の話をまとめた。
「美鈴さん、私たちはこの愛国心についての議論で、軍隊や警察と愛国心について語ってきました。それは、軍隊や警察が国家を守る存在であり、また、国家を守る心が愛国心だから、という前提があるからでした。だから、
極端に言えば、軍隊や警察イコール愛国心である
。だから、国民はそれらを支持しなくてはいけないのか?
軍隊や警察を支持しない人間は愛国心のない非国民なのか、という問題が導き出されるわけです。
彼らを支持するとは、彼ら自衛隊や警察の問題点を無視して、ただひたすら彼らを信じ、全く疑わないというロボットのような心なのでしょうか。そして、『良い国民』とは、そういう心の持ち主なのでしょうか。
愛国心とは彼らを無条件で信じ、彼らに疑問を持つことすら許さない、絶対的な心なのでしょうか? それに見方を変えて言います。一体、誰が国民を良い国民だ、悪い国民だと言うのでしょう? 誰がそれを判断するのでしょうか。その『判断者』とでも言える人間は正しいのでしょうか?」
西田はそこで言葉を止めた。美鈴がその言葉を理解しきれず、その頭の中が回転している時に、西田は、美鈴にあの紙を出して欲しいと頼んだ。
それは
「愛国心とは何か」
という話題で使ったあの紙切れだ。愛国心についての疑問を書いたものだ。
西田は美鈴の許可を得て、それをiPhoneで撮影した。
次の回の話題にするためだった。
1、愛国心の定義とは
2、政府が国民に愛国心を教える必要があるのか
あるいは、国民が自ら子供に愛国心を教える必要があるのか。
3、なぜ、今、2022年の日本社会において、日本人に愛国心教育が必要なのか。
その教育を推進しているのは、日本人至上主義者として名高い国会議員や評論家、タレントたちだが、
彼らの目的は?
4、教科としての愛国心教育と、その成績の付け方、どう判定するのか?
5、愛国心証明をしなければいけない時代? 自分が愛国心を持っていることを誰かに認めてもらうこと。
6、国家への忠誠があることを証明する必要がある?
7、愛国心がない人は、非国民であり、罰を受けるのか。
8、愛国心教育に反対する教育者は罰を受けるのか? (君が代、日の丸問題)
西田はその紙を見ながら言った。
「どれも重い問題ですね。簡単には答えられそうにないが、これまでの会合のことを思い出して、自分の意見を言うのがいいかもしれませんね」
美鈴も率直に述べた。
「ええ、難しく考えると、とても答えが出ない気がします。これまでの私たちはかなり重いことを議論したのですから、それを踏まえて、簡単な答えでも良い気がします」
二人は今日の会合を終わらせて店を出た。そしていつものように駅まで雑談をしながら歩いたのだが、心の中では重苦しい問題に直面したことを忘れられずにいた。自分たちの心を重くする愛国心とは何だろうか?
続く
これは小説です。