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終戦の日 靖国神社にて その1

2023年8月15日、つまり終戦の日に靖国神社で私が見たものとは?

 私はこの神社には何のつながりも持たない。だが、小説「愛国者学園物語」を書いて、その中に靖国神社を登場させ、日本人と日本文化を至上のものとする日本人至上主義者たちへの疑問を世に問うている。小説の素人ではあるが。

 そういうわけで、ここ数年の私は、あの神社について考える時間を多く持ってきたわけだ。そして私は、終戦の日に、あの神社に、様々な人たちが集まることを知った。

 それで、2023年の、その日に出かけたわけだ。
以下に簡単であるが、そのレポートを公開しよう。

 同日11時過ぎ、私は靖国神社の境内に入った。市ヶ谷駅から10分ほど歩いたのだが、敷地に近づくと、緊張した面持ちの警官たちが数十メートルおきに立っていた。道路には、機動隊のバスが何台も止まっていて、今日、ここで何が起きうるのかを示していた。そう、機動隊は暴動鎮圧や群衆のコントロールをする部隊だ。そういう部隊が出動しているということは、そういうことがここであり得ることを示している。


機動隊のバス


 境内には、私服の警察官とみられる男性たちが多く、制服警官は少なかった。制服組たちは神社の外を警備し、私服警官が中を担当するような感じに思えた。

 私服たちは白のワイシャツに黒っぽいスーツのスボン姿で、手にはビジネス用のカバンを持ち、境内を行く人々を「見ていた」。彼らは普通の人のように見えたが、体格が良い者も多く、顔はよく日焼けしていた。外回りのビジネスマンのように思えるが、参拝するわけでもなく、人々を見ているような人間たちだ。ここが靖国神社であることを思えば、彼らは明らかに警視庁の警察官、特に右翼を担当する公安三課の類だろう。そういう人々が、特に、大きな木の木陰や、通路の端にたくさんいて、目を光らせていた。彼らは黒いイヤホンを片耳にだけ入れていたし、「警視庁」のラベルを貼った携帯電話を持つ者もいた。私はその人物のそばを通過した時、見えたのである。



 彼らは旧軍兵士のコスプレだと言われていて、終戦の日の来訪者の中では有名な一群らしい。右端の人は「兵憲」の腕章をしているが、それは憲兵隊のこと。軍事警察としての役割だけでなく、一般大衆の言論弾圧も行っていた。手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」にも登場する。





大きな日の丸を掲げる男の後を、一列で行進する黒服集団。腕には、旭日旗を元にしたらしい腕章をしている。

なぜか、横一列になる若者たち。



右翼団体と思われる男たち。写真はないが、別の集団はダークブルーのつなぎのような服に、日の丸と菊の紋章をつけていた。
上の写真の左側にいるワイシャツと地味なズボンの数人が、私服警官らしき人々。実際はもっといた。


神社のそばには、右翼の街宣車が何台も止まっていたが、それらが大きな音を出すことはなかった。私がいた1時間ほどの間では。


境内を歩いていたら、ある老人とすれ違ったのだが、彼のTシャツに歌詞がプリントされていた。それに「海ゆかば」という題名がプリントされていなかったら、気がつかなかっただろう。

「海ゆかば」は、戦前・戦中は第二国歌とも呼ばれた歌。これを鎮魂歌か軍歌なのか議論があるが、私は軍歌だと思っている。

良い資料がないのでwikiを借りる。


 著作権などの問題で良い動画がなかったので、自衛隊の動画を選んだ。女性自衛官が歌うそれが「海ゆかば」なのだが、私は自衛隊が、追悼目的でも、戦前の軍歌を演奏・歌うことには反対の立場(自衛隊のパレードには、陸軍分列行進曲が使われている)。


第二の国歌とされたと書けば聞こえはいいが、おぞましい歴史にも関わる。同曲は玉砕のニュースを伝えるときに、使われていたという。
 1982年の映画「大日本帝国」で再現されたけれども、1944年のサイパンの戦いの場面で民間人がそれを歌っている。その戦いでは、旧軍将兵と日本人民間人は全滅した。



「全国戦没者追悼式」の音声

11時50分過ぎだったが、靖国神社の境内を君が代のメロディーが流れた。私はそれが神社のすぐ向いにある日本武道館で行われていた「全国戦没者追悼式」の音声だとは、当初気付かず、疑問に思っていた。


そのメロディーのあと、岸田総理が式辞を読み上げ、そして、正午が近づいた。総理の声が境内に響いていた。

私がこの時間に靖国神社を訪問した理由、それは、正午に、ここで何が起きるのかを見るためだったのだ。11時55分ごろから、木陰のベンチに座っていた人々が立ち上がり、やがてその数が多くなった。

そして、正午のすぐ前になると、境内を歩いていた人々も立ち止まった。そして、正午、追悼式の音声に従い、誰もが目を閉じて、黙祷(もくとう)した。

だが、目を閉じていた私は誰かの靴の音を聞き、目を開けた。誰もが立ち止まり目を閉じて黙祷しているのに、スーツ姿の若者二人が、我関せずと歩いて本殿の方に向かっていくのが見えた。

黙祷が終わると、境内の人々は動き始め、もとの神社の姿に戻った。


私は境内を出て、東京メトロ九段下駅の方に歩いた。次の目的を果たすためである。

つづく。

写真は私が撮影したものである。

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