野間美由紀さんの『ジュエリーコネクションシリーズ』
少女漫画を読まなくなってずいぶん経つが、ふと思い立って好きなジャンル検索をしてみると、びっくりするような名作に出会える。
連載などリアルタイムでは知らなかった作品もあって、こんなによくできたストーリーなのに映画化もドラマ化もされていないなんて⁉︎…と思うことも。
そんな名作のひとつが、野間美由紀さんのジュエリーコネクションシリーズだ。ちなみに、少女漫画ではなくミステリー漫画と呼ぶべき作品だ。
連載が1989年〜とのことで、最初の頃の絵柄やちょっとしたエピソードには時代を感じる(ポケベルが新しいアイテムとして出てきたりする、ネットショップがまだ一般的じゃない、など)けれど、これは文句なしに面白い!
宝石の魅力とサスペンスを結びつけ、専門知識もさりげなく盛り込まれていて、リアリティがある。
稀少な宝石も登場するし、一話完結ものだけれどワンパターンでなく、まさかと思う人物が犯人だったりもする。
個人的にリアルだなと思ったところは、ジュエリー店の販売員である若いヒロインがリフォームコーナーに配属されて、憧れのデザイナーへの夢に一歩近づいたと喜ぶ第一話冒頭。
リフォーム(今の言い方だと「リモデル」、デザインの作り替え)の受け付け業務は制作部に近い仕事だし、持ち込み品でさまざまな年代の他社製品に触れることもできる。自分でただ好きなものを作るだけでは絶対にできない経験ばかりで、難しい案件に悩まされることもあるけれど、心底楽しくて勉強になる。
工房併設で職人さんがいる店舗…という設定も、自分の若い頃の職場と重なり、懐かしい日々の記憶がよみがえったのだった。
さらに、実際に現場で働いていた私でさえも思いつかない、そのアイデア!職人の技術や宝石商としての知識を駆使して誰も傷つけず事件を解決してしまう、その小気味良さ!
まだ読んだことのない方におすすめしたいけれど、30年ほど前の作品になるため、書籍で全巻揃えるのは難しそうだ。私は漫画本の感触を味わいたくてamazonとブックオフで買い集めたが、すぐに読める電子版もある。
時代を感じる描写があっても、物語自体が古臭くならないのは、宝石が持つ普遍的でミステリアスな魅力が中心に据えられているからだと思う。
安易な映画化もドラマ化もされなくていい。漫画という形ですでに完成されているのだから、繰り返し何度も読んでミステリーの世界に浸りたい。
そしてこのnoteの公開前に少し検索してみたら、なんと、野間美由紀さんは2020年5月2日に急逝されていた。まだ59歳という若さで、その前日にはSNSで更新もあったというから、本当に突然のことだったのだろう…。
ご本人も宝石好きとのことで、もしかするとまだまだ構想があったかもしれないが、もう続編を読むことは叶わない。ジュエリーコネクションシリーズは伝説の作品となってしまった。
心躍る作品群をありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。
ところで、2018年に亡くなった さくらももこさんも宝石のエッセイを書かれていたし、セーラームーン原作者の武内直子さんは宝飾製造が盛んな山梨県の宝石屋の娘さんだとか。漫画家には宝石好きが多いに違いない。
※この記事は過去にShortNoteにて公開したものに加筆修正したものです。
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