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大人の階段
子供には敷居が高過ぎると思っていた岩波文庫。「嵐が丘」がその扉を開いた。ヒースクリフは背中を蹴っ飛ばしてくれた。夏目漱石を面白いと思うとは自分でも意外だった。
サマセット・モームは「詩の世界の素晴らしさ」を教えてくれた。それでもその入り口は教えてくれなかった。彼は意地悪で皮肉屋な小説家だ。「微熱期」がその入口だった。
村上春樹の翻訳がカポーティーからカーバーへと道を繋いでくれた。カーバーはチェーホフの最期を「主題もしくは執着」とする小説を生前最後の短編として残した。そうなるとチェーホフを読みたくなる。結局のところは岩波文庫に還る。
文学の森には迷うための道しかなくて、最終的には「文学の定義」についての疑問だけか残される。
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