「フランスでお葬式に参加する」
日本人がよく知らないのは北アフリカである。
フランスの直ぐ真下が北アフリカだ。
モロッコ、チェニジア、アルジェリア、リビア、エジプトと並んでいる。
彼らの多くは、アラビア人であり、フランス人に、「 l'arabique」と呼ばれている人たちだ。
彼らは、白人であったり、アフリカ系であったり人種はさまざまである。
みな、フランスへ出稼ぎに移民労働者として出かけていく。
フランス人は、モロッコは植民地ではなく保護領であり、彼らの性質がおとなしく控えめであり、論理的なので歓迎する。
フランス人が、それらの国で住み、フランスへ帰る場合もあるので、何人であるのか当てるのは慣れてこないと難しいと思う。
モロッコ人にせよ、チェニジア人にせよ、宗教はキリスト教でなくても外観が白人の方が働くときは有利である。
彼らの仕事は、大抵、夜勤の仕事である。
ホテルマンでありながら、夜勤でホテルマンとホテルのガードマンができる人は歓迎される。せいぜい頑張って、日本で言うと銀座であるが、シャンゼリゼの夜勤のホテルマンが最高の出世であると思う。
彼らの秀でているところは、もちろん、フランス語を入れて4か国語くらいしゃべることができ、さらに事務仕事ができることである。
わたしは、大学の宿舎が決まるまで安宿にいた。
昼間は、ホテルマンは白人のフランス人。
夜になると、北アフリカ出身のモロッコ人であった。
狭い部屋へ帰っても苦痛なので、よくモロッコ人たちと世間話をしていた。そのうち友達になり、彼の友人のお葬式があるから来ないかと言われた。
好奇心が旺盛なわたしは、すぐに返事をしいくことになった。
イスラム教のことはしらない。しかし、死者がイスラム教であり、その宗教に沿った葬儀であった。
初日は、日本の通夜と同じで、死者との別れを惜しんだ。
死者を取り囲み多くの人が、床にしゃがみ込んでいた。
その際、死者の隣のテーブルに、ハイネッケンの缶ビールが並んでいた。
日本の通夜と同じく、アルコールを飲み故人を語り別れるのだと思った。
わたしは、アルコールは大好きである。
それで、誰も飲んでいなかったが遠慮しているのだと思い、テーブルへ行き缶ビールを取り、元の場所に戻って飲んだ。
そうしたらざわめきが起きた。
そのビールへ故人に捧げられたもので、飲んではいけなかったのだ。
簡単に言うと、故人のものなのであった。