はじまりはデイケアで

耳が聞こえない。字も知らない。そんな彼女がデイケアにやってきて、ひたすら小さな折り紙をきっちり 三角に折る。折ったら、終わり。さわってもダメ。自分のカバンに入れる。入り切らなくなったので、ロッカーに場所を作ったが、そこにも 入りきれない。無限に増えるその三角は家にもあって、「何か作品にならないかしら?とお母さんが言っていてね? 専門の人がいるから聞いてみます。と言ったのよ。」と帰りの車で職員が私に。

私はデザイナーじゃないし、ただの利用者だけれど、たびたびこうして当たり前のように相談されていた。いつものように、ごはん食べてる時も考え、ネットで調べた。重度心身の生活介護施設なので、むずかしいことはほとんどの人はできないけれど、ぱっと見どこが悪いのだろうという若者も、主婦らしい人もいる。もったいないからと、内職仕事をやっていたが、大変な割にお金にならないという当たり前の理由で「生産活動」は中断していた。ならば、きっちり三角を折り鶴にして、袋や箱詰めして、その作業もスモールステップにして作業にしたらどうだろうと思った。そして、ネットで売る。ホテルや海外向けに折り鶴は需要がある。加工なしで売れる。箱作りから作業化したら、すごくいいな、おもしろいなぁと思った。すべてのアイデアをメールしておいた。

私の通所日に 細かく 伝えたら、何を思ったか
「五万円を超えると施設ではダメだから、三人でやろう!」という。3人とは、その時私をお風呂に入れてくれている職員2人と私だ。なんだかなぁと少し思ったけれども、バスタブの中なので、気持ちよくとろけてしまった。結局大好きな利用者のみんなの顔を思い浮かべて考えたアイデアは、職員でもないから採用もされなかった。その悲しみが一週間ぐらいして心の入れ物からあふれ出し、無職決定も手伝って、なら、私がやる!と思ったのだった。てっきり、好きな絵でも描いてのんびり暮らすのかなと思っていたので、予想外の展開だった。人生っておもしろい。私のリサーチが始まった。

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