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視聴データから見たプロ野球ファンの居住地分布

はじめまして。J:COMあしたへつなぐ研究所です。

J:COMデータ部門が、分析業務で培ったノウハウや、当社の誇るビッグデータの中から、興味を持って頂けそうな話題を、この場を通して皆さんにご紹介できればと思っています。

J:COM TVではプロ野球 全試合の生中継をはじめ、関連ニュースや情報番組まで幅広いコンテンツをお届けしており、プロ野球ファンの皆様にご好評をいただいています。

日本のプロ野球リーグが始まったのは1936年で、はじめは7球団でした。現在と同じセ・パ両リーグとも6球団ずつの合計12チームとなったのは1958年のことで、それ以降は入れ替わりなどありつつも12球団が維持されています。

今回はそんな歴史あるプロ野球ファンの地域分布について、J:COMで保有するデータを使って調べてみました。調査に使用するデータは、スマートテレビサービスの「J:COM TV」の中で、番組編成やレコメンドに利用しているお客様の視聴履歴データです。このデータは、お客様の契約情報と紐づけることが可能で、ご自宅の所在地や年齢など、いわゆる属性情報を組み合わせた分析ができることが強みです。

また、この記事の執筆時点で280万世帯ものお客様から視聴履歴収集と利用の許可をいただいおり、ご契約者様を広くカバーした分析ができる事も特徴です。

さて、今回の調査では、『2022年に地上波・BS・CSで放送されたプロ野球シーズン戦143×6試合のテレビ視聴履歴データ』を取得して、「①視聴時間や視聴試合数にもとづいて契約世帯ごとにプロ野球のファンであるか」。「②プロ野球ファンの場合、どこの球団のファンであるか」。の2点を独自のアルゴリズムを用いて判定しました。結果、分析で利用できると判定したプロ野球ファンのお宅は37万世帯で、こちらのデータを用いてプロ野球ファンの居住地分布を見ていきたいと思います。

巨人と阪神の人気健在。本拠地では地元球団が健闘

巨人は東京に本拠地を置く日本で最初のプロ野球球団、阪神は関西で最初のプロ野球球団です。両チームは昭和時代にセ・リーグで優勝争いを何度も繰り返し、巨人vs阪神の試合は「伝統の一戦」とも形容されます。両チームの人気は現在も健在で、全国的に上位を占めます。

地方都市に本拠地を構える日本ハム、楽天、ソフトバンクは、各地域で確固たる人気を確立し、巨人と阪神を押さえて1位となっています。

関東、関西ともに地元球団のファン獲得が順調に進んでいる

プロ野球はその歴史の中で、球団の再編や本拠地の変更を経験しています。そこで、世代に着目してその人気を改めて見てみたいと思います。
今回は49歳以下の比較的若い世帯と、70歳以上のご年配の世帯で球団の人気を比較してみました。

ここで興味深い結果を読み取ることができます。

北海道、宮城県、福岡県では年代によらず、地元球団が他球団を圧倒しています。

他方、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県では年代による差が大きいことがわかります。いずれの球団も地元に拠点を構えておよそ20年経っているのですが、この差はどこから出てくるのでしょうか。

これらの地域では、経済圏内にプロ野球の球団が1つしかないので、地元の球団という意識が強いのではないかと想像できます。東日本大震災後、楽天の嶋選手による「見せましょう、野球の底力を」という感動的なスピーチも思い出されます。いずれの球団も、リーグ優勝や名選手や名物監督の存などもあり、幅広い層で地元の支持を得られている結果と考えられます。

次に関東です。関東地方には5球団(東京都:巨人/ヤクルト、神奈川県:DeNA、千葉県:ロッテ、埼玉県:西武)が存在していますが、いずれの都県でも巨人の人気が大きいです。しかし、年代を分けて見ると、埼玉県、千葉県、神奈川県は70歳以上のシニアに比べ、49歳以下の世帯で地元球団ファンの割合が5~15%ほど大きくなっていることが大きな特色として挙げられます。

北海道、宮城県、福岡県ほど顕著ではないですが、地元球団の伸びについて興味深い分析ができたので次章で解説します。

最後に、大阪府と兵庫県では阪神が年代関係なく圧倒的な人気です。

同地域に本拠地を構えるオリックスは、阪神が圧倒的なためかダブルフランチャイズなどの経緯もあることや、他の球団ほどのシェアはないようです。

関東におけるファン勢力マップの移り変わり(超詳細版)

上記で述べた埼玉県、千葉県、神奈川県の地元球団の勢力拡大について深堀りするため、関東地方のデータをもとに年代も50歳から69歳のデータも加えて、1番人気の球団を2キロ間隔で地図上にプロットしてみました。

埼玉(西武)、千葉(ロッテ)、神奈川(DeNA)にある本拠地の球場を中心に、年齢が若くなるにつれファンのエリアが広がっていくのが分かります。

ここで興味深いのは、埼玉県では西武狭山線・池袋線沿線の沿線でファンが増えているようです。同じ埼玉県内でも、球場へのアクセスが西武線沿線ほど良くはないさいたま市では、西武ファンがあまり確認できません。
 
同じように、千葉県では京葉線・総武線沿線の路線沿いに、神奈川県では京浜東北線、ブルーラインなどの路線沿いにファンが広がっていくことが確認できます。

西武ライオンズは西武鉄道を親会社に持ちますが、それ以外の2球団も含めて鉄道沿線にファンのエリアが広がっていく様子から、球場への鉄道によるアクセスとファンの獲得には大きな関係があることが想定されます。

これより先は、PRの方法やファンの声を確認しないと分析は難しいですが、実際に球場に足を運んで、生の試合を観戦・応援する行動・体験が、ファンになる契機にもつながっているのかもしれません。

一方、東京のヤクルトは、年齢が若くなるにつれて点の数は増えますが、特段の傾向は見られません。上記の仮説が当てはまるとすれば、ヤクルトのホームの神宮球場は都内のどこからでもアクセスが良くファンが分散化してしまい、伝統的にファンの多い巨人の存在が大きく第1位にならないとも考えられます。

ヤクルトのファンはここにいた!

そこで、ジャイアンツ以外の11球団に絞って、同様に2キロ間隔で地図上にプロットしたものがこちらです。70歳以上では阪神の点が多いですが、若くなるにつれてヤクルトの点の割合が増え存在感を増します。巨人を除いた形でマッピングしてみましたが、どの地域でもヤクルト一色にはなっておらず東京中心に広く分散していることが読み取れます。

また、下図からは新しい特徴も見えてきました。西武は西武線沿線にファンが拡大しているという分析をしましたが、下図からはあたかも中央線が壁のように機能し、西武ファンの南下を防いでいるようにも見えます。。やはり、ファンの居住地は、居住地と球場との直線距離の近さではなく、球場への鉄道でのアクセスの良さとの関連性が強いと言えそうです。

2軍も地元に影響があるのか?

さて、ここまでは1軍のホームグランドに着目したお話でした。北海道日本ハムファイターズ二軍のファーム球場であるファイターズ鎌ヶ谷スタジアムは千葉県の鎌ヶ谷市にあります。

同じように一軍の球場から離れた場所に球場がある球団としてはロッテ(浦和)やヤクルト(戸田)などもあります。こちらのデータも加えて、ファンの状況を見てみたいと思います。

まず、日本ハムファームの鎌ヶ谷周辺です。点としては2つだけですが、球場の周辺に日本ハムファンの居住するエリアがある事が確認できます。

一方、ロッテの浦和球場の近辺にはロッテ色の点がありません。ヤクルトの戸田球場では、周辺にはヤクルト色の点が幾つも見られ、地域で支持されていると考えて良さそうです。

ファームの本拠地の影響度は、分布からだけではこれ以上の深堀りはできませんが、ファーム球場周辺のイベント開催数、サッカーなど他競技のファン密度などが影響している可能性が考えられ、そのような他のデータを紐づけることで、新たな発見が得られるかもしれません。

今回は、J:COM TVのデータを使って、野球をご覧になっているお客様が、球団別にどのような地域に分布しているのか詳しく調査を行いました。

調査を通して、弊社サービス提供エリアにおける各球団の人気状況を確認できました。そして球場へアクセスする鉄道沿線でファンが多く分布していること、また、その傾向は若い年齢ほど拡大していることがわかりました。実際に球場に足を運んで試合を観戦する“体験”が、球団のファンになる契機として有効ではないかという示唆を得られました。

他のデータとの紐づけが出来れば、プロ野球をもっと好きになる、プロ野球をもっと楽しむきっかけを作る、そんなアイデアも見つかるかもしれません。

最後までこの記事を読んでいただき、ありがとうございました。

これからも当社が持つデータをもとに、さまざまな分析をして発表していきたいと思いますので、興味を持たれた方はアカウントをフォローいただけると幸いです。

また、J:COMでは企業の皆様からのご相談もお待ちしております。当社が管理しているデータを用いた市場調査や、新規ビジネスの共同開発等に関心のある方は、下記までお問い合わせください。

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J:COM あしたへつなぐ研究所 
研究員・データアナリスト :川上 明久、中田 貴大

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