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海外動向 7/3〜7/9

当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、主に海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。


◆ 今週の重要トピック

SkydanceとParamountの買収交渉がまとまり、今後、会社をどう変えていくのかに注目が集まっています。さらに競争が激化している配信サービスの行方。Paramountの新CEOからは「究極のバンドル(ultimate bundle)」なる言葉も発せられています。おそらくワーナーCEOが言う新世代の配信サービス「Streaming 2.0」と同じものを指しているのでしょう。

◆ 業界再編(M&A)

SkydanceによるParamountの買収が合意、プラットフォームの再構築やテック企業化を推進

買収にあたりSkydanceはParamountの持ち株会社であるNational Amusements(NAI)に24億ドル、ParamountのNAI以外の株主に45億ドル、負債の返済とバランスシートの補強に15億ドルを支払います。その結果、Paramountの発行済株式のうち議決権を持つA株の100%、議決権のないB株の69%を取得。7月1日時点の株価に対しA株は28%、B株は48%のプレミアが付いています。これらの手続きは規制当局からの承認を得たのち、2025年第3四半期に完了する予定です。なお買収完了までの期間は引き続き、現在の共同CEOによって経営されますが、その後、元NBCUniversalのCEOだったJeff Shellが新CEOに就任します。

SkydanceのCEOで、ParamountのオーナーとなるDavid EllisonとJeff ShellがParamountの今後についてコメントを出しています。従来のParamountはメディア・コングロマリットであったものを、より技術志向の「エンターテイメント分野の技術リーダー」へと変貌させる。具体的には、Paramount+のプラットフォームを再構築し、また、AIを活用しコンテンツの制作能力を飛躍的に向上させる計画です。このほか、会社の業績を立て直すために現在の共同CEOが年間5億ドルとしていたコスト削減を20億ドルまで拡大、資産売却を進め、また、解約防止などを目的に業界でこれから始まる「究極のバンドル」に参加する意向です。すでに国際市場での潜在的パートナー候補と協議を進めていることも明らかにしました。

Paramountのオーナー、Shari Redstoneからスタッフへのレター

Skydanceとの買収協議では、すでに恒例行事(?)になりつつあるオーナーからスタッフへのレターが今回も出されてます。今回は長文でParamountの歴史、事業推移、現状、そしてスタッフへの感謝が綴られています。記事には全文が掲載されていますので興味のある方はご覧ください。

SkydanceとParamountの買収合意が、もし一転、破談になったら?

両社の買収交渉は、これまでも二転三転してきました。今回はオーナーを含め合意に達しているものの、まだ破談になる可能性はゼロではないようです。合意条件には45日間の期限付きでSkydanceよりも良い条件での買収提案があった場合、Paramountはそちらを選択できるというもの。ただ、この条件の背景には、Paramountの主に議決権のないB株を保有する株主からの株主訴訟を回避・最小化する狙いがあるようです。また、もし破談となった場合、ParamountはSkydanceに4億ドルを支払うことになります。

Streaming 2.0、配信サービスの再編へ向けた動き

ワーナーのCEOによる発言をはじめ、配信業界では「グローバルで活動する大手4、5社だけが生き残る」と言われています。また、圧倒的な存在感を持つNetflixと戦う方策が必要。そんな中でParamount+の今後が注目されています。ワーナーのMaxとの統合案では、まだ初期段階にあるようですが両社でのJV(Joint Venture)が考えられているようです。ただ、「所有権はおそらく折半にはならない」。噂されていたComcast NBCUniversalのPeacockとの統合も「交渉は進展しなかった」。一方、さらに大胆にPeacock、Paramount+、Max、Disney+を一つのアプリで視聴できるようにする可能性が浮上しているようです。

LGIがスイスのグループ会社Sunriseの株式売却を検討と報道

今年の初めにLGIが公表した事業戦略では、Sunriseの株式を再上場とありました。

◆ 業界動向

米国における固定ネットの料金体系、1年後の値上げが激しい

全米のISPで固定ネットに加入した直後の価格と、1、2年後の価格がどう変わるかをまとめたものです。米国では今年、FCCが価格体系や実効速度を消費者にわかりやすく表示する「broadband nutrition label」を義務付けたばかりですが、それもうなずける状況です。この記事で「もっともひどい」と名指しされているのがMediacom。例えば1Gbpsのプラン「Xtream Internet 1 Gig」は加入時だと月額65ドルですが、1年後には130ドルに変わります。日本でいうところの加入キャンペーン期間が終了ということだと思いますが、確かに値上げ幅が大きいですね。

米国、スマートTVの普及率が68%に

デンバーで開催されたStreamTV Showのセッションで発表されたものです。このセッションにはGoogleやSamsung、LGなどの幹部が出席しています。スマートTVの世帯普及率は、2019年第1四半期の47%から2024年には68%まで増加。配信サービスの視聴で最もよく使われるデバイスとなっています。興味深いのはGoogleTVを展開するGoogle幹部の「消費者はTVに搭載されているOSが何なのかは気にしていない」という発言。これにはSamsungも同意、LGが微妙な反応を示しています。

◆ メディア

オリンピックが割安に見えてくる米国でのスポーツ放映権の現状

米国の映画関連を扱う業界誌Hollywood Reporterがまとめた記事です。米国で締結された人気スポーツの契約状況がまとめられています。日本とは桁違いの巨額の契約ばかりです。米国で最も人気のあるNFL(アメフト)は、2033年までの11年間の契約額が1000億ドル。これをAmazon、CBS、ESPN、Fox、NBC、NFL Networkが分担して支払い放映権を得ています。これだけではなく一部の試合の放映権にNetflixが3年で4億ドル、YouTubeは1年で20億ドルを支払います。これが最大のようですが、人気でNFLに続くNBA(バスケットボール)は2025年までの9年契約で240億ドル。ただ、これは契約を締結したのが価格高騰以前のためで、来年の契約更改では3倍になると予想されています。以下、主要な契約の金額となりますが、日本で取り上げられることが多いMLB(野球)は2028年までの7年間120億ドル。NASCAR(自動車レース)は年間11億ドルです。ちなみにオリンピックは2022年から2032年までの冬季・夏季、合計6大会で77億ドルです。

Starzの配信サービス、2024年の前半だけで84万契約を失う

2024年に入ってから配信サービスも契約者の減少が顕著ですが、その中でも最悪クラスの減少です。

米国、Amazon Fire TVでスクリーンセーバー起動前に広告が表示されるように

まだ米国の一部のユーザーだけのようです。AmazonはPrime Videoの広告付きプランを推進しており、番組の途中に広告が入るだけでなく、例えばユーザーが一時停止操作をした時にも広告を表示する計画です。

◆ インフラ

ヨーロッパにおけるFTTHの普及状況

固定・モバイルネットの比較分析などを行うMedUXによる調査レポートです。前半では英国における固定ネットの比較をBT、Sky、Vodafoneの3社について行っています。速度だけでなく遅延時間やストリーミングの安定性などを加えた総合的な評価となっており、BTが最高評価を獲得。このほか英国におけるFTTHの普及状況が示されています。2023年の時点でカバー率(ホームパス、FTTHを利用可能な世帯)は57%、普及率(実際に契約している世帯)は17.1%です。

速度に目を向けると、中心は100Mbps未満。いわゆるギガビットFTTHの普及率は2022年の11%から2023年には17%に増加しているものの、まだ少数です。

ヨーロッパ全域のFTTHの普及率とカバー率も掲載されており、トップはスペインの普及率78.9%(カバー率92%)、これにアイスランド75.2%(91%)、ポルトガル73.9%(90%)が続きます。ちなみに最も低いのはギリシャの6.3%(31%)、ベルギー7.1%(28%)、ドイツの10%(40%)となっています。国ごとに事情が異なりますが、早い段階でDSLなどの技術によりブロードバンドを整備した国はFTTHへの転換が遅れているケースがありそうです。

補足:この記事で使われている「FTTH」は、例えば集合住宅であれば建物までファイバーで結び、構内はDSLなどを併用した接続形態を含んでいます。

英国、固定ネットのギガビット対応が83.39%に

2024年6月末時点での普及率(ホームパス)です。30Mbps以上だと98.01%、フルファイバー(全区間がファイバー)は67.68%となっています。英国では50億ボンドの予算で「Project Gigabit」が進行中で、ギガビットの普及率を2025年までに85%、2030年までに99%以上にする計画です。

ITUがアフリカでのデジタルデバイドの解消を目指すプロジェクトを立ち上げ

サハラ以南のアフリカ11カ国でブロードバンドマッピングシステムを構築し、ブロードバンドの普及率、品質などを測定、可視化します。

◆ その他

RokuがHEVCの特許侵害で訴えられる

HEVCの特許を管理しているHEVC Advanceから訴えられたもの。Roku側が話し合いに応じないため訴訟となったようです。HEVC AdvanceはHEVC関連の特許75〜80%、2万3000件を管理しています。

Google、AIにより二酸化炭素の排出量が前年比13%増加

Googleによる2024年環境報告書で明らかにされたものです。二酸化炭素の総排出量は1431万4800トンとなり、これは2019年から48%の増加。最も大きいのがデータセンター関連で、消費した電力量が24テラワット時超。これは世界のデータセンターが消費する総量の7〜10%を占め、2022年から17%増加。これはAIによる影響が大きいようです。

Fierceが選ぶ注目のネット関連スタートアップ 5社

ブロードバンド関連ニュースなどを扱うメディアFierce Networkによるもの。ブロックチェーン技術を使い、主に企業間の決済システムを提供するAlthea、衛星ネットでStarlinkのような低軌道衛星ではなく静止軌道衛星を使うAstranis、アフリカでオープンアクセスのファイバーネットワークを構築するCSquared、レーザーを使って高速なネットワークを実現するTranscelestial、量子ドット技術のQTIです。

監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所 編集メンバー

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