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ミイラを追っかけて『特別展ミイラ「永遠の命」を求めて MUMMIES OF THE WORLD』に4回行った件 ※閲覧注意

※この投稿は、過去別媒体に投稿した記事を改変したものです

2019年~2020年に開催された『特別展ミイラ「永遠の命を求めて」MUMMIES OF THE WORLD』に通いつめた思い出です。

この『特別展ミイラ』の内容がクリティカルヒットした、ミイラ大好き系女子の私は

東京展3回(国立科学博物館)
東京展が終わった後、福岡展1回(福岡博物館)

合計4回行くという、追っかけ状態で堪能してきました。

注意:※この記事の画像にはミイラが出演しています。

「世界から、43体が集結!」

ヒーロー物かマーベルの映画みたいなコピーが看板に書かれててフフッてなったけれど、『特別展ミイラ』には、まさにミイラ界のアベンジャーズが大集結していました。

ミイラ<国立科学博物館で、僕と握手!

みたいな(古いか)。

開催前から楽しみにしていたので、1回目は「どっか面白い所連れてけ」と頼まれていたガーナ人を、「ミイラ展一緒に行くなら連れてってやる」と無理矢理拉致。

1回目のインパクトが凄かったのと、混んでいてゆっくり観れなかったので、2回目はじっくり見るために平日午後に一人で行きました。やっぱり博物館美術館はぼっちで堪能するに限りますね。

ミイラ…「見たい」と「怖い」のせめぎあい

私はホラー映画もグロ画像も苦手だし、なんなら遊園地のおばけ屋敷も入れません。怖いから。

でもミイラはなぜか観てしまう♡

日本で暮らしていると「死」が(「遺体」が)人の目に触れるのをタブー視するので、特定の職業に就いているケース以外、直接的に「死んだ肉体」を眼前にするシーンというのは稀です。

が、誰もがもれなく行き着く「死」という大きな扉の、その向こう側に、世界中の先達、いわゆる人類のパイセン達が何を見出そうとしていたのか、ミイラアベンジャーズに考えさせられた2019年秋。

遺体を目にする見るという怖さより好奇心が勝つというか、文化的、宗教的、歴史的背景への探究心が勝るというか、ミイラには「なぜ?どうして?」の部分がものすごくたくさん詰まっていて、ああんぶっちゃけミイラLOVE

そんなわけでここからミイラ展のレポと感想です。

ここからはミイラのパイセン達がご出演されるので、一応閲覧注意ですよ。

第1章 南北アメリカのミイラパイセン達

展示場に入り一番最初のエリアは「南北アメリカのミイラ」。ペルーやチリ出身のアベンジャーズが出迎えてくれます。

「チンチョーロ文化のミイラ」
オープニングを飾るのは、紀元前3200年頃の最古のミイラ。5000年も前のパイセンが時を超え、同じ空間に存在しているってすごくないですか?ロマンです。しょっぱなからロマンチックがマックスで震えがきます。
展示場に入ってすぐのところに横たわっていますが、パイセンにはなにやらかっこいい3D映像処理がされているのと、開幕一発目のインパクトで、ここに人が詰まりがちでした。

「人工変形頭蓋と腐敗防止処置の痕跡がある子どものミイラ」
ちっさい子がちょこんとガラスケースの中に座っています。頭のかたちが明らかに普通じゃありません。人為的に頭蓋骨を変形させる風習は世界のいたるところで記録されていますが、この子もごく幼い時期に頭を平たく加工された模様。痛くなかったのかな。

「チャチャポヤのミイラ包み」
かわいい顔が描かれたナップサック
に見える癒し系デザインのミイラ包たち。アパレルの店頭に普通に陳列されていそうなビジュアルですが、もちろん中にパイセン達が入っていて、その内部のスキャン写真も横に展示されています。
ミイラ展では、CTスキャンによって解明した新しい発見も一緒に説明されているので、周囲の説明や映像も見逃せないものでした。
チャチャポヤ、というかわいい名前はインカ文化のこと。刺繍された顔も包み方や模様もかわいいし、人が入っていると思えないくらい小さくてかわいい・・・と思ってホンワカと包み達を見て順路をたどると、オオトリに中からパイセンがひょっこりはんしている個体が控えているので油断は禁物。

出典:国立科学博物館プレスリリース
一番右がひょっこりはんパイセン

第2章 古代エジプトのミイラパイセン達

来ました、エジプト。

エジプトと言えばミイラ、ミイラと言えばエジプト。
数千年の時を経てもなおミイラ界に君臨するファラオ達は、あらゆる人の人生における「ミイラ導入編」に存在しているでしょう。

豪華絢爛な装飾と高度な文明の逸話は、遠い時間を隔てた私たちを魅了し続けています。ゲームでもエジプトっぽいエリアに行くと、十中八九ミイラの敵が出てくるし。

ガーナ人の友人も同じアフリカとしての仲間意識があるのか「ミイラといえばやっぱりエジプトでしょ。ほら、エジプトだけで1コーナーあるし♪(他の国は南北アメリカ、オセアニア、などの大枠エリアで1コーナーの編成をされていた)」と、妙に誇らしげにペラつきはじめました。

「ツタンカーメン」
言わずもがな、ミイラ界のスーパーエースです。
ツタンカーメン王と言えば、ドラクエで言えば勇者、スラムダンクで言えば流川。そんなポジションではないでしょうか。「ル・カ・ワ!ル・カ・ワ!
」とテンションもぶち上がります。本体はエジプトの王家の谷に安置され、対面できるのは精巧なレプリカ。

ツタンカーメン
出典:wikipedia

中王国時代の子供のミイラ」
(^u^)というかわいいお顔をした子供のミイラ。今回のCT検査で、腕に明らかに大人の骨が使用されていることがわかったとか。公式サイトに写真が載っています。

「腕を交差している男性のミイラ」
古代エジプトにおけるミイラの製作工程である「脇腹をパカーンとあけて内臓を取り出し鼻の穴から脳を掻き出す」という処置がよくわかるナイスボディをしています。
股間にはリネンで作られた立派な男性器も装着&展示されており、カップルがイヤーンと恥じらう横で、わたくしガン見していました。なかなか立派。

「ネコのミイラ」
スクッと立って小首を傾げているようなネコのミイラ。愛らしい。今までインパク値高めなビジュアルのパイセン達に対面し、少々疲れた目を癒やしてくれます。他にも鳥のミイラも展示されています。ミイラになっても動物は癒やし。

猫のミイラ 出典『特別展ミイラ』公式サイト
https://www.tbs.co.jp/miira2019/

閑話休題。〜ミイラデビューへの道〜

ひとことで「ミイラ」と言っても、一人前のミイラとして華々しく科博に展示されるまでには、それぞれに積んできたストーリーとキャリアがあります。

そのキャリアとは、大きく分けてこの3パターン。

1,選ばれし者パターン
死後、誰かの手によって加工され、ミイラとして第2形態へ進化。
2,原宿でスカウトパターン
死後、偶然の自然条件が重なり、思いがけずラッキーミイラ。
3,巨人の星パターン
生前からパねえ情熱・気合・ド根性で自らをミイラと化し、爆誕。

第1章と第2章のパイセン達は、ケース「1」でした。死後、丁寧にミイラにされ、埋葬された選ばれし者たち。

第3章からは「2」のパイセン達が登場します。

第3章 ヨーロッパのミイラパイセン達

ある日原宿を歩いていたらスカウトされ、あれよあれよとトップモデルへ。

そんな、個人の予定とは想定外に、思いがけずミイラデビューしたパイセンたちは、主に湿地遺体です。展示個体数は少ないものの、際立つ個性がすごい。

「ウェーリンゲメン」
ミイラ展のポスターに使われている、ペアで小躍りしているような楽しげな2人のシルエットが彼ら。
湿地帯で皮だけになったミイラで、顔の骨もないので、パっと見、全身タイツというか、脱ぎ捨てられたウェットスーツというか、「え、人?」という不思議な感覚。

これね

「イデガール」
絞殺された紐が首に残る生々しい頭部のレプリカと、生前の顔を復元した複顔像。死亡当時16歳前後だったらしい湿地遺体。

イデガール
出典:wikipedia

「アンナの頭骨」
シャレオツな花柄と”アンナ”という彼女の名前がペイントされた頭蓋骨。絵を施しているシーンを想像すると、常軌を逸してるだろと思いますが、繊細なで華やかな絵柄に見入ってしまいます。

アンナの頭骨
出典『特別展ミイラ』公式サイト https://www.tbs.co.jp/miira2019/

第4章 オセアニアと東アジアのミイラパイセン達

展示コーナーのトリを飾るのは、日本を含むオセアニア&東アジア地域です。

最初はパプアニューギニア勢。

「肖像頭蓋骨」
1800〜1900年頃のもので、首チョンパした頭蓋骨に粘土をペチペチして、お化粧を施し、生前の顔に似せて作られた顔たちがズラリと並んでいます。
入れ墨も多種多様で、同じ顔は1つもありません。映像で流れている、ナショナル・ジオグラフィックが特集した「アンガ族によるつい最近のミイラ作りのムービー」も必見。

最後に控える我らが日本のミイラは4体。
多湿なため、気候的にミイラには適していないものの、「ケース2 スカウトパターン」がこれまでに何体か発見されているとのことです。

余談ですが、国立科学博物館の常設展「日本館」に、江戸時代の女性のミイラが展示されていて、発見された時の映像も観れます。ちなみに南極物語のジロ、忠犬ハチ公も剥製になり、生前の姿で展示されています。

そしてとうとう「ケース3 巨人の星パターン」の偉大なる姿が登場します。

「江戸時代の兄弟ミイラ」
埋葬された後、兄弟で仲良くミイラ化した兄と弟のミイラ。兄は柔和、弟は眉毛が濃いキリリ顔。
今までのパイセン達はきちんと埋葬されていたり、横たわっていたり、1〜2回りくらい体が小さい(ミイラ化によるものか、当時の身長が低いのか、どちらかは謎だけど)から、「ああ、ミイラだな」「昔の人って体が小さかったんだな」という当たり前の先入観が土台にある上で見ていた、という事に、ここで初めて気付きました。

兄弟並んで正座で鎮座する姿は、死という境界線の向こうにいる他のミイラ達の姿よりも、もっとこちら側にズズッと近い、妙なリアリティと迫力があります。

「本草学者のミイラ」
文化や宗教的背景を動機にせず、自らをミイラ化するという壮大な人体実験 ”ミイラチャレンジ” にトライした江戸時代の学者のミイラ。

「しばらく経ったら掘り起こしてみてね」と頼み、死後、見事にミイラ化。その手法は伝えられていなかったものの、今回CT検査で大量の柿の種(せんべいとピーナツのアレじゃなくて、果物のほう)を食べて、自らに防腐加工を施したことが判明したとのこと。
柿の種の成分で肌が赤く、うつむいた正座で数珠を握る等身大の「人」の姿には、ビートたけしをもってして「震えが来る」と言わしめたすさまじい「圧」があります。

本人は命をかけた実験が願ったり叶ったりで、今頃「やりー!大☆成☆功!テレレッテッテッテー(SE)!」とガッツポーズ連打してそう。

「即身仏 弘智法印 宥貞(こうちほういん ゆいてい)」
即身仏とは、壮絶な修行を続け、生きながら土中に入り、死後ミイラになったお坊様です。

だいぶ昔から即身仏の存在は知っていて、写真などで見ると「ちょっと怖いな…」と思っていました。
実際に目の前で見るのは初めてだったのだけれど、法衣を着て祈りの姿のまま鎮座する姿と、達観した優しい眼差しを感じ、思わず手を合わせました。怖いなんて思っててすみませんでした。

宥貞様は真言宗の高僧で、92歳で入定(永遠の瞑想に入る=入滅する)されたそうですが、CTスキャンの結果、背中に大きな痛みを抱えながら大変な修行を行い、即身仏になったことがわかっています。その姿を目の前にしたら「ゆいていさま…」と呟いて自然と手が合わさること間違いなし。

ミイラを見るたびオーウとかアーオとか言っていた友人も、宥貞様の前では沈黙し、手を合わせていてかわいかった。外に出た後、「日本の学者さんとハイプリーストのミイラすごいやばいすごい」としきりに言っていたので、「日本人なめんじゃねえよ、何やらせてもハンパねんだよ」と私も自分の手柄のように誇っておきました。

限定グッズ売り場も漏れなくやばい

宥貞様が「特別展ミイラ」の最後の展示ですが、グッズ売り場に続く第2会場に、伝インカ帝国のミイラ、メキシコのミイラ、そして南米の干し首が展示されています。

世界各国のパイセン達の姿を見て、埋葬した人たちがミイラに託した想い、死した故人の想い、生とは死とは、様々な考えがめぐらせる貴重な機会だった…という感慨にふけった直後、眼前に広がるのは、グッズ売り場でコミカルなアイテムに変身したパイセン達の姿。

特にチャチャポヤのミイラ包なんて、ただでさえオリジナルもかわいいものだからモフモフのでかい枕にされたり、意味不明な指サックにされたり。アンナの頭骨はガチャガチャのフィギュアになり、この展示最大のかわいさを誇るネコのミイラのフィギュアと肩を並べています。どさくさに紛れてミイラと関係ないエジプトの小物とか売ってたりする。

ギャップがすごいので、ぜひグッズ売り場も一通り目を通すことをおすすめします。

ミイラ展、本当によかった。4回通っても、まだ「また見たい」と思えます。
考古学ってやっぱりロマンだなあ・・・。


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