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Gloomy Saturday afternoon in NY

最近NYは天気があまり良くない。
そして、今日も、朝方は晴れていたけれども、午後になってだんだんと曇り出した。

こういう憂鬱な天気の時は、何もしたくなくなる。
しかも今日は週末だ。

そして、そんな気分に追い打ちをかけるようなショッキングなニュースがインスタで発信されていた。

NYパンクのレジェントであったTelevisionと言うバンドのヴォーカリストであり、ギタリストであるTom Verlaine が亡くなったのだ。

https://www.theguardian.com/music/2023/jan/28/tom-verlaine-frontman-and-guitarist-of-us-band-television-dies-at-73

思春期に、毒親育ちの家庭環境とコンサバで退屈な学校生活の間に挟まれ、まともに呼吸ができずに見事な中二病になってしまった私にとっては、地球の裏側に存在していたであろうNYパンクはある意味心のオアシスとも言える避難場所になった。

そして、そんな中でも、私が特に心惹かれていたバンドの一つが、Televisionだった。Televisionは、Tom Verlaineが、Richard Hellと言うミュージシャンと二人の仲間で結成したNY パンクのバンドの一つだった。

このバンドは、当時はたった2枚の名作「Marquee Moon」(アルバムカバーは、Patti Smithの大親友だったロバート・メープルソープの撮影)と「Adventure」しか出していないにも関わらず、アナーキーで暴力的な部分も少なからずあったNY Punk シーンにありながら、独自のインテリジェンスと詩的なセンスを放つ彼らの存在は、明らかに異質だった。

その理由は、やはりこのTom Verlaineの独特な声とギターの音、そして、いわゆるパンクロッカーのように髪を逆立てて派手なチェーンを付けたりしているわけではない、Televisionのこのコンサバなルックスだった。

Televisionの音は、いわゆる典型的なパンクとは方向性が少し違っていた。
どちらかというと、ギグ中心というよりも、ギターのメロデイがあるサウンドだった。

彼の時々裏返るような不思議な歌い方は、ある意味、少しハイトーンの心の叫びと言うか、犬とか狼とかそういった動物が遠吠えする時のようなバイブを感じるところもあった。

そんな彼のDown to the earthとも言える歌声を聴いていると、どん底に暗い気持ちの学校生活や家庭環境の中においても、なんとなく自分の本当の居場所というのがこの世界のどこか別の場所に存在しているかもしれない、という見えない安心感のようなものを感じた。

とはいえ、普通の人が聞いたら、NYパンクなんて全然安心するようなサウンドの音楽ではないし、ある意味暗いし、過激だったり、メロデイもあってないようなギグで終わるようなのも多いから、この感覚は音楽好き、パンク好きじゃないと共感できないのは想像にむづかしくない。

でも、とりあえず、中二病の感性の人間にとっては、世の中に対するどうでもいい感じ、やってられない感じ、というのをものすごく忠実に表現してくれている部分に共感するにはもってこいの音楽ムーブメントではあったと思う。

そんな過去の傷だらけだった私の時間を癒してくれたTom Verlaine.

そして、彼の最後を看取ったのは、彼の元カノで、同じくパンクロッカーだったPatti Smithの娘のJasses Paris Smithだったようだ。

でも、元カノと言っても本当に何十年も前の元カノだから、よほど二人の間にあった絆は深かったんだと思う。

そして、Patti SmithもTom Verlaineも、どちらもが詩人だった。
(76年に二人で「The Night」という詩集を出している)

2021年の夏、コロナが一時的に開けてきた時に、Patti Smithはセントラルパークで大きなライブをやった。その盛り上がり方は、なんだか半端ではなかった。
その時に、私は改めて、NYパンクのレジェントと呼ばれる人たちが、どれほどこの街の音楽の歴史の中で愛されてきていたのかを強く感じ、心が熱くなった。

当時の日本では、恐らく洋楽ファン以外の間では、よくわからない音楽、海の向こうのなんだか不健全な匂いのする音楽、みたいな感じにしか思われていなかったであろうNYパンクは、この街ではまさにその時代は生きた音楽そのものだった。

つまり、ある意味で社会への不満を代弁するような音楽だったってことだ。

そして、その事を忘れていないのは、その時代に実際に若者だった親たちだけでなく、NYパンクに耳慣れた親たちの世代に影響を受けた若者たちもだった。

そんな歴史の一ページを垣間見せてくれたPatti Smithの最愛の友人であり、元パートナーであり、その時代を共に作り、共に生きてきたであろうTom Verlaineの訃報は、きっとPattiの心だけでなく、この街でパンクムーブメントを経験してきた世代の多くの人たちの心に、計り知れない空洞を作ってしまったに違いない。

そんな憂鬱な気分を象徴するかのように続く、雲りの空は、いつになったら晴れるのだろう。

でも、こんなGloomyな天気こそ、むしろNYパンクの吟遊詩人だったTom Verlaineを送り出してあげるには、本当はもってこいなのかもしれない。

Rest in Peace. 
今はただ彼の魂の冥福を祈りたい。

私が一番好きなTelevisionの曲「Venus」です。









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