お嬢さん乾杯 (1949) 松竹
木下恵介監督
佐野周二さんと 原節子さんのお顔合わせ。
佐田啓二さんも共演されてます。
佐野周二さんは 人気絶頂だった1941年から
三度も召集されたそうで
20代後半から 30代前半まで
スター男優としてもっとも重要な時期を
「戦争」に奪われたことになるのですね。
本当にお気の毒でした。
原節子さんは このとき29歳。
溌溂としていて、可愛く、
そして ほんとに ほんとに美しい。
でも、この映画のラストの台詞
「わたくし、惚れております!」が
どうしても言えませんと 監督を困らせたとか・・・
自動車修理業で 羽振りのいい圭三(佐野周二)に
お見合い話が 飛び込んで来た。
お相手は 華族の令嬢・池田康子(原節子)。
こりゃあ、提灯に釣り鐘だ、と
会う前に断るつもりの 圭三だったが
間に入った人の手前 しぶしぶ会って見ると
泰子は想像以上に美しく
しかも思っていたような 高慢ちきなお嬢さんではなく
圭三は すっかり気に入ってしまう。
デートで 初めてバレエを見た圭三は
感激して涙をこぼし
圭三の誘いで 拳闘をはじめて見た泰子は大興奮。
ここいらへんは 愉しいシーンがいっぱいです。
原節子さんも ドテッと転んだりして可愛い。
また圭三には
五郎という弟分(佐田啓二)がいるのですが
この人も 恋人の頬の涙を
インク吸い取り器で 吸い取ったりして
トッポイけど 可愛いい。
さて、実は泰子の父は
詐欺の巻き添えで 刑務所におり
屋敷も百万円の抵当に入っていることを 圭三は知る。
どうりで お屋敷を訪ねたときの
ノブの取れたドア、すり切れた背もたれのソファ、
ボロいシャンデリア・・・
やっぱり、結婚はお金の為だったのかと
がっかりする圭三だったが 泰子への愛は深まるばかり。
そんなとき 圭三の馴染みのバーで
ふたりの披露宴を 開いてくれることになったが
しかし、泰子の言葉や態度に
どうしても真の愛情を 感じられない圭三は
泰子の正直な心の内を 聞かせて欲しいと頼むが
「はい、いい方だと思っております。
結婚すれば きっともっと愛情が沸くでしょう」
嗚呼、やっぱり自分たちは 違う世界に住む人間なのだ。
披露宴の当日
圭三は置手紙を残して ひとり田舎に帰ることにする。
すると・・・ここからがいいんです。
別れの手紙を目にした泰子は
はじめて圭三を 本当に愛していた自分に気づく。
バーのマダム(村瀬幸子)が
酔っ払った勢いで 泰子を叱る。
「いまいましいお嬢さんだ!
愛してますなんて そんなお上品な言葉じゃ通じないのさ!」
ラストシーンは
五郎の車で 圭三を追って行くのですが
その間際に 泰子がマダムに言います。
「わたくし、惚れております!」
ジャーン!
ここで「愛染かつら」が 流れます。
♪~花も嵐も 踏み越えて~
おしまい